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異世界魔術物語  作者: 青空 御春
第3章:『罪と友情の1章』
97/100

ページ3―27『予告状』

 

 「うっ…りゃぁぁぁぁ! 喰らいなさい! 最先端の科学技術で作られた最新型銃を、今世紀最大級、いいえ、歴史上ナンバーワンのスナイパー、ゆーか・ゆーぴぃーが装備した華麗で人間を超越した攻撃をね! 」



 自身の周りに大量の銃器を浮かし、それをケミキルに向けて発射するゆぴ。素早く、細かく、威力も強い銃弾が、次々と飛んでゆく。



 「ねぇお前さぁ、ほんとにその程度で僕に勝てると思ってるの? は、笑わせないでよね? 」



 しかし、ケミキルは余裕な様子を見せている。空中を舞いながら避けているようにも見えるが、実際はそうではない。弾に何発か当たりながらも、支障のないように振舞っている。というよりも、実際に支障が出ていない。

 ゆぴは1度銃の引き金から指を離し、苦虫を噛み潰したような表情でケミキルを見た。



 「さっさと朽ち果てなさいよ、化け物…」



 それを聞いてケミキルは、へらへらとわざとらしい笑いを浮かべて、酷いなぁと言わんばかりに悲しそうな仕草をした。

 その仕草に怒ったのか、ゆぴは手に持っていた銃までを周りに浮かし、更にマシンガンを取り出し、それを両手で持った。



 「これも最新型よ! 朽ちなさい! アンタ、超絶ウザイんだから! 」



 ゆぴは銃を飛ばして銃口をケミキルに向ける。それから自分の周りにも追加の小型ピストルを大量に浮かし、マシンガンの引き金を引いて、一斉に発射。



 「ごめんね? ついつい僕もね? …君には、恨みがあるからさ? 」


 「そんなの…あたしの方があんたを恨んでるんだから! あんたの恨みとは比べ物にならないくらい! 天秤にかけたら、片方が地面を貫いちゃうくらいに! 」


 「その片方ってのは、僕の方? 」


 「あたしの方よっ! 」



 小型ピストルの背後にレーザーガン、その更に後ろに戦闘用のエアガンを配備し、叫ぶと同時に連続発砲。負けじとケミキルは相変わらずの逃げ足を披露しながら、腰につけた皮の袋からメスを取りだし、1本ずつ相手に投げつけていく。

 ゆぴは一定の距離を保ちながら、弾切れを起こした銃を捨て、新しい銃を追加し、弾を止めることなくケミキルを痛めつける。



 「…何? そんなに僕が怖い感じ? 」


 「あんたなんかに怯えない。あの時のちびゆぴとおんなじだと思ってるなら、今一度人間の寿命を思い出す事ね」



 互いに互いをさぐり合いながら、どちらも攻撃をして、どちらもその攻撃を食らうことのない攻防。その様子はまるで千日手だ。進むことのない戦いとは裏腹、その隣では今にも終わりを迎えそうな戦いが行われていた。



 「…殺したいなら殺せばいい。私は例えこの身この心砕かれようとも、あの子たちを守り抜く!」



 151番と、その隣で151番を援護する263番。そして、前で地面に手を付き、もう一度自分の武器を握り直そうとしているのは、紛れもなく今この時までハプとケプナスの命を繋いできたこの町のチームの副リーダー。アルクトテ・ルーだ。自信の奮い立った顔でそう叫んだ後、その表情は反転して、暗く、哀しみを悟った表情に変化する。



 「…なーんて、主人公みたいなセリフで正義の勇者みたく、カッコつけれたら良かったのにな、ってさ」



 なにかに呆れたように両手を広げるルーを、2人の使徒は黙って見下ろしていた。



 「はは、いざこーんな場面に直面してみると、案外人って死ぬ覚悟ができないものだな、かっこ悪いかっこ悪い。情けないったらありゃしないって感じだよ」


 「…戦わないのか? 無駄口を叩ける余裕があるのなら、立って1発でも攻撃を送った方が、貴様にとっては理にかなうものなのではないか? 」


 「おんや、攻撃してくるんじゃなくてアドバイスくれるんだ。お優しいこと、でもお生憎御免。私はあなたたち2人を見くびってたよ。そっちのちびっこは知らないけどさ、少なくとも銀髪の方。あなたは、私の予想だと。あの導き手さんより強いでしょ」



 苦笑いを浮かべて、自分の武器である鞭を遠くに飛ばし、上を見上げて呟くルー。151番は何も言わなかったが、変わりにその隣で、喜んだ様子の263番が返答をした。



 「すごい、すごいんですよ、とーってもすごいんですよ、151番様は! 263番は、151番様の強さを、よく知っています。えぇ、知っていますとも。ケミキル様と戦ったところは見たことはありませんが、263番は、151番様が、ケミキル様より、すごく強いんだと思っています! 」



 ルーはそれを聞き、151番に疑り深い目を向けた。何か言いたげなルーを前に、151番はローブを深く被り直し、ルーに背を向ける。



 「…帰ろうか」


 「は? 」



 そう指示をした151番を前に、ルーは呆気に取られた顔をする。



 「了解しました! ほんとに、ほんとにごめんね、ですが、151番様は先にご帰還してくださるとありがたいです。263番は、勝手ながら、少しだけここで、済ませたい用事があるのです」



 それを聞き、静かに頷いてその場を飛び立つ151番。ルーには、一切わけがわからなかった。



 「は…? 殺していいとは確かに言ってないけど、私を見逃していいの、あなたたち。私は邪魔したのに、それを見逃して、あなた達ふたりはボスに怒られないの? やめときなって、無謀な賭けは。大人の世界では良くないよ」



 少し焦り、想定外の事態に動揺しながら語りかけるようにルーは言う。まだその場にとどまっていた263番は、しばらくルーを見て、その後で小さな声で言った。



 「ご心配ありがと、です。でも大丈夫ですよ。263番はともかく、151番様は、何にも。ケミキル様だって、文句を言えるような立場じゃありませんから」



 そう言って飛び立った263番を見て、ルーは叫んだ。聞こえていないことは理解しながらも、困惑が叫ぶことをやめさせなかった。



 「あの人は…あいつは、普通の使徒のはずだろ! それが、なんで、そのボスである導き手が…普通の使徒に対して…」



 ルーはその続きを言おうとした。だが、力尽きてしまい、1度地べたに大の字に寝そべった後、しばらくは起き上がらなかった。

 そして、今にも目を閉じて眠ってしまいそうなところに。



 「…ルー! 大丈夫!? えっとね、ごめん! 穂羽もいまさっきまで倒れてて…ケプナスがいなきゃ、1ヶ月くらいずっと倒れてたみたいなの! 今、回復するから! 」



 安定しない視界の中、2人、必死に走る子供がいることを理解した。その子供が、ルーを助けようとしていることも。



 「あー…あなたもやれば出来るじゃん、20歳が褒めてやるよ…」


 「う、う、うえからめせん! そういうの嫌い! 大嫌いなのです! 上から目線をしていいのは、この世でケプナス様ただひとりなのです! 絶対、上から目線は良くないのです! 上から目線、ダメ、ゼッタイなのです! 」


 「はー…褒めたかっただけなんだけどねぇ…」



 疲れきった様子でそういうルーを見て、ケプナスは1本後ずさりした。



 「うぅ…ごめんなさいなのです…なんて言うと思ったかなのです! ひ弱そうな態度でも、ケプナス様はひるまないのです! 褒めるのは当然のこと! ケプナス様が素晴らしいのは当然のこと! なのです! 」



 誇り高く回転するケプナスの隣で、ハプはルーの治療をする。

 そして、訪ねかけた。



 「…疲れてるのはわかってる。でも、教えてもらわなきゃいけないの」


 「何を、かな? この素晴らしい20歳学者に聞きたいことがあんなら、なーんでもどうぞ。ほら…できるだけ早めにね」


 「あのね…今の戦況を教えてくれたら、それでいいよ」


 「ああ、わかったよ。お易い御用。まず、ボスさんは助けてくれたやつ。銃をいっぱい持ってる女の子と一騎打ちって感じ」



 回復により少し疲れが取れてきたルーが、大の字になったままでそういった。



 「…ゆぴ…」


 「そそ、その子だよ。で、その子とここにいる人以外は全員どうなってるか分からない。あー、それで私は2人の使徒と戦ってたんだけど…」



 ルーは深く溜息をつき、次の言葉を話した。



 「1人は逃げたよ。よく分からないこと言いながらね。結局のところ、私の20歳パワーに怖気付いたんでしょ。それで、もう1人も逃げる予定なんだけど、今は…」



 そう言って、壊れた建物の隙間から、ルーは263番のいる方向を指さした。



 「あの有様さ」



 そこには、263番と、その263番によって失神状態にさせられたシアルがいた。

 それを見て、ハプとケプナスは同時に反応する。



 「待って、まさか…」


 「すみませんが…観望者様は263番が誘拐してしまいます。ふふ、当然です。だって、その権利は263番たちにあるんです。あなたたちにとっても大切なリーダーだと思いますが、263番たちにとっても、必要な指導者なんです。それに…使い勝手がいい。

 いいですか?もしあなたたちが観望者様を返して欲しいのなら、後日、マクタニア帝国の首都神殿へ来てください。もしかして…返すかもしれませんから」



 そう言って、シアルを空に浮かばせて、263番は颯爽と去っていた。

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