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異世界魔術物語  作者: 青空 御春
第1章︰『動き出す1章』
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ページ8「訓練」

 ページ8「訓練」


「ハプ、今日もケプナスは来ないのかなー?」




 いつものように朝、大広間で2人が来るのを待つシアルが言った。




「そう、みたいだね。ケプナス、あれからずっと部屋で一人きりなの。ご飯だけ部屋の前に置いてたら食べて食器だけ返ってくるし、呼んでもお返事しないの。悪いこと言っちゃったかなぁ」




「そっか、特訓には来そうにないってことでいいかな? あと1日で戦場だから、連盟にはケプナスは不参加と伝えておくよ」




 変わらずの笑顔でシアルは言った。




「…...うん、ごめんねシアル。ケプナスが戦場不参加になったのもほわのせいだし、ケプナスの分までほわが特訓して戦うね。」




「そうだね、そうしてくれると助かるな。敵の魔術師の姿を見た人は未だに仲間ではいないらしいよ」




 スマートフォンをもって連盟に連絡をしながら薄笑いを浮かべて言った。




 ハプはずっと特訓して、回復術も即時回復を覚えたし、攻撃もある程度は覚えた。少なくとも炎は自在に操れる程度になった。この事から考えると、元々のハプスルーリーはかなり強かったのだろう。




 シールドに関しては使えるには使えるのだがこの前ケプナスにシールドを破られた。それを見たシアルが一般市民の銃弾も防ぐことが出来ないと言ったので、シールドではなくフライパンで防ぐことにした。




「やぁぁぁっ!!」




 ドッカーン!!!!




 ハプが思いっきり炎を発して、周囲一帯を爆発させた。




「なるほど、一気に魔力を炎に変えて放出すると爆発が起こるのか。使えるかも...…どう思う? シーアルッ!」




「いや、うん、いいと思うよ。でも大胆に大広間だけではなく街まで破壊されるのは困るなぁ。そういうのは戦場でやって欲しいものだよ」




 いつもの笑顔で魔力を上空に集中させ、爆発させるようにして街を直しながらシアルが言った。




「あ、ごめんなさい。でもすごいよね? すごーいと思わない?」




「うん、まあ確かにすごい。その発想はいいと思う。でも、街を爆発するのはやめようか」




「はい、ごめんなさいです!」



 ハプは素直に謝った。



「うん、良しだね。それじゃあ特訓を続けて。僕は君に敵軍の魔術師の情報をできる限り教えるよ。現在入ってきている情報を全てね」




 ハプはその「情報」というものに耳を傾けながらひたすらに攻撃を続けた。




「まず今までの情報からおさらい。敵軍、トムガノ魔術国側の魔術師は1人だけだが、そのひとりがとても戦争に適していて大きな戦力となっている。その人はチームには属さない1人の魔術師。ここまではいいね?」




「…...はい!」




 的を次々に破壊しながら、ハプは返事をする。




「そして仲間から聞いた情報によると、仲間ではその人と遭遇した人はいなくて、スピードがとても早いらしい」




「なるほど、他には?」




「魔術師は実は1人ではなかった」




「......え?」




 その言葉を聞いて、ハプは動きが止まった。




「魔術師が1人じゃない? どういうこと? もっと沢山いるってこと?!」




「うん、そうだね。言葉の通りの意味だ。でも、正確に言うと初めからではなく加わったのは最近らしいね」




 ハプは再び特訓を続けながらシアルの言葉を聞いた。




「その人数は2人。今まであるチームに属していたがそのチームを抜けたため今は未所属。そのため良い待遇をしてくれると言ったトムガノ魔術国の軍に加入したらしいよ」




「なるほど...…。その子たち、いや大人かもだよね。どんな人達なの?」




 次は回復術特訓用に作られた人形を治癒しながら聞いた。




「そうだね、その情報に関してもないね。初めから居た魔術師と同じで。逃げ足がみんな早いらしいから、姿を捉えることが出来ないとのことだよ。残念な事だ。ただ魔力は感知できているし、攻撃方法は何となくわかる。との事。やっぱり、知りたいよねー」




「そう、だね。」




 その返答を聞いてシアルはニコッと笑った。




「熱心でよろしい! まず1人目。1人目は地上よりも上空からの攻撃が得意。その事から、浮遊術系が得意と見る。それで考察したのが、恐らく風属性。まあこの辺の判断をしたのは僕じゃないんだけどね。」




 指を出してその情景を説明するように手を動かしながら、シアルは説明した。




「そして次。次の人はとにかく罠に長けてる。罠とかを仕掛けられやすいらしいね。しかも上手いとのこと。それですばしっこいらしいね。最後の一人は分からない。魔術系攻撃をくらった人はいないからねー。ほんとによく分からないらしいよ。そんな感じかなー?」




「ならほわも浮遊術マスターしなきゃ!」




 シアルからの説明を聞き、そう判断したハプは即座に空中に浮かび、浮かんだ状態で的に攻撃を当てる練習をした。




「それで魔力とか感知しなきゃならないんだったら、感覚も鋭くしないとね。シアルかくれんぼして!」




「ん? なんか違う気もするけど良いよ。」




 そう言ってそれからしばらく、シアルがどこかに隠れてハプが目を瞑ったままで場所を当てるというゲームをして魔力感知力を上げた。




「すばしっこいんだよね、普通に走るスピードもあげていかないと。基本の運動神経が良くて悪いことはないよね、よし、シアル! 鬼ごっこだ!」




「いや、うん、いいんだけど、またそういうのやるの? 僕をかなりメジャーな集団遊びに付き合わせるの好きなのかな? 君」




 そしてシアルは渋々ハプに付き合ってくれた。シアルが肉体強化術を使って逃げて、ハプが何度も捕まえる。シアルは障害物を利用したり、攻撃をしながら逃げる。


 それに対してハプはシアルに攻撃を仕掛けながら追いかける。シアルはシールドを張ったり逃げたりして、反撃もしてくる。


 できるだけ実践に近い形で、2人は特訓を続けた。


 力尽きるまで、延々と。






 ◇◆◇◆◇




「シアル、準備できたよ。」




「OKハプ。覚悟はいい?」




「…...勿論」




 今日はいよいよ、戦場へ行く。

 ケプナスは今日も部屋から出てこなかった……

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