表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界魔術物語  作者: 青空 御春
第3章:『罪と友情の1章』
87/100

ページ3―18『優勢』

 タッタッタッと響く足音を立てながら、ルーは迷路を全力疾走していた。それからひょこっと扉から顔を出して様子を覗き見て、ラビが使徒と交戦中、ケッパスはケミキルを引き留めていると理解する。



「ケッパスの部屋への裏口…こっちだな」



 ルーはそう呟いて、迷路の方へと後戻り。そこから、先程とは別の方向へと進み、突き当たりの小さな格子扉を開く。



「はぁー、ヤダヤダ。ここって狭いし埃っぽい」



 ルーはそこに潜り込み、首だけを突っ込んだ。



「はろー」



 そう言ってケッパスの勉強部屋の奥から顔を出すルーを見て、ハプ、シアル、ケプナスは声を抑える。



「…ルー? 居たんだね、良かったぁ。どうやってここに来たの? 」


「隠し通路だよん、通路って言うほどのものでもないけど! 私、貴方達を助けに来たの。そのために裏道通って、時間かけてたのさっ」



 キメ顔でルーはそう言って、片手を3人の方へと差し伸べる。



「ケッパスが引き留めてくれてる間にさ、外出ようぜ! 貴方達が狙いでしょ? 私達は貴方達を逃がすのを手伝ってやるよ、ほらほらー、安心してお姉さんについてきなさい? 」


「いやー、感謝するよー。僕達も丁度危機感を感じて、逃げようと言う話はしてたんだよねー。まぁ、プランは組もうにも危険すぎて実行できなかったけど」



 そこには数本の鉛筆と、文字や図が書かれた大量のコピー用紙が散らばっていた。



「ここの通路を知ってるのはリーダーと副リーダーだけ。ローエルも知らないよ? 私かラビヌが裏切りを起こさない限り、貴方達は大丈夫だよ。無論、私は裏切らないし」



 隣からラビヌの難癖が聞こえてくるかのようだった。ルーはその通路から顔を引っ込めて、片手で3人に合図をする。

 ハプはありがとうと呟いて窮屈なそこを通っていき、シアルがケプナスの入るのを手伝う。2人とも完全に通路を通ったのを確認すると、シアルもその通路を通った。



「全員通ったね!? んじゃ、閉じまーす」



 ルーが静かに鉄格子を閉じ、3人を迷路の先へと進める。



「外に使徒が居るかもだけど、そん時は私が戦うから。とりあえず迷路の間は私についてきな! 」



 ルーが囁くように言って、足音を消しながら迷路を走って行った。

 シアルはケプナスを抱えた状態でルーについて行き、その後ろにハプもついて行く。

 暗い迷路から視界が開けると、そこには案の定、到着したローブの集団…魔術神秘教団が待っていた。

 その様子を見て、ルーが更に奥の工場を指さす。



「あっちの方に走って行きな! 絶対工場は通り越さないで、中に入りながら進んで行くの! 私も走りながらついてくからさ! 」



 そう叫ぶルーの声を合図に、シアルは全力で指示された通りに走り、ハプも返事をしてからついて行く。

 だが当然、使徒はその行く手を阻もうとした。



「そう簡単に、行かせると思います? 」


「穂羽達、急いでるのに! のいてよ! 」



 ハプが炎を出現させようとすると、ルーがその使徒を吹き飛ばす。

 1本の茨のツルを両手で持ったルーが、ハプ達を逃がそうと茨を鞭のように振り回した。



「これが20歳の…愛のムチだぁっ! 」



 その隙を見て、3人は奥へと走って行った。



「…31歳のひと、ありがとーなのです…」


「31歳じゃなぁーい! 私はは、た、ち、だ! 間違えんなよ、んじゃ! 」



 ケプナスが小さな声で呟くと、ルーが大きな声で叫んだ。

 新体操をするように鞭を振り回し、羽衣を纏って舞う天女のように使徒を跳ね除けて行くルー。次々に使徒を足留めしながら、ルーは呟いた。



「さーてと、ローエル君の戦果はどんな感じですかな…? 」




 ◇◆◇◆◇



 場面は切り替わり、再び本拠地の中に。

 ケミキルとケッパスは向き合って、お互いを探りあっている。



「話し合うという気はないのかな? 」


「あらかじめプラン立ててから行動して、行動したら考えるより先に殺す派だから? 」

 

「さも当然の如く人を殺す発言をできるのは君の強みなのかもしれないね。人を殺すというのはとても勇気のいる行動で、殺さないというのも勇気のいる行動だから」


「だから、僕は殺すよ? あ、奥にいるあいつらを売れば、解剖するだけで終わらせてあげる」


「それで死なない人間がいるはずがないよね。食屍鬼ししょくきとか吸血鬼のような特定の種族じゃない限りね」



 ケッパスは相手と戦うことは避けられないと理解して、懐から授業で先生が使うような大きな三角定規とチョークを取りだした。

 ケミキルはその行動なんか無視して、目を光らせながらメスを取り出す。



「その辺の種族はもうこの世には居ないはずだけど? 生き残りなんてひとーりも居ない、殺されたじゃん? 人間に」



 途端、大量のメスがケッパス目掛けて飛んで行き、その全てが彼に命中した…ように見えた。



「そうだね、危険に思われ、その村は人間達に焼き払われたよ。詳しいね、何百年も前の事件だと言うのに」


「なっ…! 」



 ケミキルは流石に動揺し、メスを集中させた所よりも少し右に立つケッパスを見る。

 水の入った板を鏡のように持ったケッパスは、平然とした顔で言った。



「単純な光の性質を利用したマジックだよ」


「…種が割れたら、マジックなんて意味無いけど? 」



 ケミキルはもう一度ケッパスに向かってメスを飛ばす。できるだけ定規で防いで避けようとするが、数本のメスはケッパスの体を傷つける。



「痛い…」



 目を潤ませながら耐えようとするケッパス。だが、やられてばかりではあるまい。チョークを取り出し、空中に数式や図形を描いていく。

 その間、ケッパスはメスでの攻撃を少なからず受けなければならないが、問題を作って書くそのスピードは、有り得ない程のスピードだ。



「これが、僕のすうがくパワーだよ! 」



 ケッパスが問題を作りながらそう言って片手をケミキルの方へ押し上げると、その問題はケミキルの方へと飛んで行った。

 ゆっくりと飛んでいくその問題だが、ケミキルはよくわからずに見過ごした。

 だがそれがケミキルの近くに到達した時……



「痛っ…! なんだよこれ…」


「残念、失敗! せっかくゆっくりモードだったけど、解けなかったので早く難しく、ダメージアップ! 」



 その言葉で察したのか、ケミキルはケッパスの持っていたもう一本のチョークを奪い取る。

 ケッパスが出した問題が自分に向かって飛んでくると、その問題を時間内に解かなければならない。初めのうちはゆっくりで簡単な問題だが、間違いが増えれば増えるほど早く難しくなって行く。そして問題が解けなければ、自分にダメージが入る。



「診察…! 」



 他にも眠っている可能性のある「すうがくパワー」の能力を調べる為に、ケミキルは問題を解きながらケッパスの能力を調べる。



「固有魔法『数学式問題考案連打打倒攻撃』…自分の作った問題を相手にぶつける、相手が間違うか時間内に解けなかったら相手にダメージ、相手が正解すれば相手のHPが回復…? 」


「そう、完全な賭け事だよっ! 」



 ケッパスの手は止まらず、問題を次々に書き続ける。その反面、ケミキルも止まらず問題を解き続ける。



「できないならマイナスできるならプラスだよね? なら、プラスにする以外の選択肢とかないよ? 」


「…思ったよりもスラスラ行かれた。まぁ、確かに簡単な問題だけど…。難易度、上げようか」



 4桁×4桁の暗算問題を秒速30センチの速度で出題しながら、ケッパスはそう言った。



「足留め、できるといいな…僕の魔力が尽きるまで」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ