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異世界魔術物語  作者: 青空 御春
第3章:『罪と友情の1章』
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ページ3―16『再来』

「シアル、ハプ、ケプナスちゃん。大丈夫かな? 」


「穂羽とシアルは大丈夫。でもケプナスが…。この病気、感情とかの高まりで症状が変化するみたいで…。戦闘中とかは、熱を出してしんどそうにするの。今も、しんどそうで…」


「状況報告感謝するよ、ハプ。ケプナスちゃんは安静にしないといけないね。僕はここで君たちを守る、ルーは煙突の方に様子を見に行ってる。ラビヌは確認でそこにいるから。隠れていて欲しいな」


「了解だよー。ありがとう、ケッパス。僕達が戦うのもいいんだけど、ここはできるだけ僕達がいないことを隠し通す方が懸命だよねー? 」


「その通りだと思うよ。あの二人が上手いこと隠し通してくれたらいいけど、2人ともドジをしそうだからね。ちょっと不安な所もあるけど、祈っておくしかないね」



 ケッパスは部屋の隅っこに3人を押し込み、周りを確認しながら言う。



「ありがとうケッパスちゃん、迷惑かけちゃって…」


「平和条約を好んで結んだのは僕達だよ。協力しないということは選択肢に有り得ない。元々君たちを匿うということが条件にあるわけだし、そんなに遠慮しないで」


「うん、わかった。有難うケッパスちゃん」




 ◇◆◇◆◇




「おーい、誰かいるの!? 私達に、何か用!? いるんならさっさと出てきてよ、探す手間省けるからー! あんまりちまちま作業するのは、好きじゃないのー! 」



 ルーが迷路のような空間を迷いなく進みながら、通りやすい声で呼びかける。篭った空間で声が反響し、より響いていた。



「なかなか出てきてくれないなー、迷ってちゃってるー!? 」



 ルーは口元に手を当てながら話した。すると奥から、まるでその声に答えるように物音がした。



「んぁ、誰かいるー! いるね、いるんだね、そこにいるだろー! 出てこーい! 」



 子供のように手足を振り回しながら、更に入口に近づいていくルー。だがしかし返事はやはり物音だけで、声の返事は帰ってこない。



「やっぱり迷ってる! 迷っててくれた方が助かるんだけど…。まあ、むやみに攻撃はしない方がいいよな、何事も話し合いからだ。ほらほら出てこい! 貴方は何をしにここに来た! ……返事が来ないなー」



 同じようなことを繰り返すが、返事は一向に帰ってこない。ガタガタ、と偶に音はするものの、声はない。ルーは耳をすまして、その音のする方へと向かう。



「これは、私に見つけて欲しいというかまってちゃんの合図と見た! 」



 そう言いながらズカズカと進み、明らかに音が近くなって行くのをルーは感じる。そして音がくっきりと聞こえるような場所に来た。だが、そこに人はいなかった。

 カタッ、と足元から音がして、その音は段々ルーから離れて行く。



「あ、待ちなさい! 私の話を聞けぇ! 」



 全力で走ったルーは音に追いつき、床に散らばる物を避ける。だが、そこに居たのは。



「…何これ、人形…? 動いてる…? 魔法を込められている感じの人形かな? たまーに売ってるけど、珍しい…。貰っとこ。でも、つまりこれって…」



 罠。ルーをおびき寄せて、目を引く為の囮。



「それってマズイ系…!? 」



 ルーがそう叫んだ瞬間に、人形から紐を絡めて作られた狩りに使う罠のような袋が飛び出してきた。



「図星じゃん! 」



 そう叫んで人形をできるだけ遠くに投げようとするルーに、それは絡みつき、捉えた。袋に押し込まれて身動きが取れなくなったルーは、振りほどこうと必死に転がった。



「窮屈! なんでこんなことに! 出てきな、仕掛けた男! 20歳で美人な若々しい私を捕らえて拘束して、やましいことをしようと考えている下劣の塊! 私を襲いたくなる気持ちはよく理解できるが、残念ながら私は20歳だ! 残念だったな! ハッハッハ! 」



 訳の分からない思い込みを連発しながら転がり続けるその光景は、実に滑稽と言えるだろう。でもルーは諦めない。誰もいないところに向かって、ヤケクソで話し続けた。



「20歳の耐久力を舐めるでない! どれだけ縛られ続けようと、決して屈してなんかやらないぞ! はっはー、仲間を思いやる優しい20歳の乙女心…、青春、だね」



 周りに誰か一人でも人がいたのだとすれば、恐らく怖がられていたことだろう。それ程までにルーは、ずっと訳の分からないことをはなしていた。




 ◇◆◇◆◇




「ったく、ルーのやつ遅ぇな。なんかあったかぁ? 何も無いならその場で意味不な茶番なんかしねぇいで、帰ってこいや」



 迷路を抜けたすぐ先で、ラビヌは巨大ノコギリを振り回しながら立っている。



「早く作業に戻りてぇのに…めんどくせ。無駄に時間取るなよ、あの馬鹿が」



 そう言って地面に倒れ込むように座り、不機嫌そうにくつろいだ。



「自称20歳自意識過剰の脳内お花畑の癖に無駄に頭良くて植物学者やってる自分のいいようなことに関しては有り得ない想像力を働かせる意味わからない思考回路のテンションと考え方読めねぇうるさい31歳め。あんま待たせんなよ」



 暇になったのか、ルーの悪口を言い続けるラビヌ。



「よくあんなに無限にしゃべくり続けれるモンだよなぁ、俺だと飽きるわ。しかも内容は殆ど捏造で盛モリ。上っ面だとしても想像力が気持わりぃわ。20歳理論は意味わかんねぇし。はぁーあ」


「…無事そうだね」



 影からケッパスが様子見に覗いていたことも気が付かずに、ずっと愚痴を言いまくるラビヌ。

 音は本当に人形だけだったのかと思えるほど、何も無かった。



「…無駄に騒がせやがっ…!? 」



 …と、思っていたところに、騒動は起こるものだ。ラビヌの隣を、小型のメスが横切る。



「…誰だてめぇ」



 ラビヌはノコギリを華麗に持ち直しながら立ち上がり、そのメスを避けた。



「アレ? 大分戦闘慣れしちゃってる? 残念だな、1発で殺すつもりだったのにさ? 」



 黒髪に瞳孔の長い真っ赤な瞳。両側の耳の上には金色の十字架が浮いていて、外側が黒色、内側が真紅の大きいマントを全体に着込んでいる男性が、そこには立っていた。



「魔術神秘教団第6の導き手『神体の管理者』ケミキル・バント」



 そう名乗って、腰につけている袋の中から更に多くのメスを取り出すケミキル。ラビヌもノコギリの柄の部分を肩に乗せて、戦闘態勢に入る。



「…どいつもこいつも馬鹿ばっかりだ。邪魔なんだよ、どっか行け。さっさとケリつけてやる」


「それは助かるね? 意見が合致したら、その後の関わり合いもスラスラ進むものだしね? 僕も丁度、早く終わらせたいなーて思ってたんだよね? 」


「なら、さっさとやられてくんね? 時間の無駄」


「やられるなら、殺してからだよ? 居るんだよね? シアル達? 」



 ケミキルはラビヌではなく、どこにいるかも分からない3人に対して呼びかけた。様子を見に来ていたケッパスは瞬時にケミキルの視点から見えない場所を判断し、そのルートを通って3人の方へ戻る。



「3人とも、聞こえるかな? ケミキル・バントというのは、君達の言っていた教団で間違いないね」


「…あいつ、もうここが分かったのかなー? 」


「その反応だと、合ってるってことでいいんだね。状況を見る限り、そうらしい。隠れていて、何時でも対応できるようにしておいた方がいいよ」



 ケッパスは警戒しながら壁にくっついて話す。ハプは防御用にフライパンを取り出し、シアルは守るようにケプナスを自分に近づける。



「思ったより早かった…どうして? どうしてここが分かったんだろ…。どこかで情報が漏れちゃった…? 」


「ペリィには話してたけどねー、電話で」


「ペリィは情報を守れと言われたら確実に守るよ。騙すのが得意だからね」



 ケッパスははっきりとそう言った。するとケプナスが、隣から口を挟む。



「…ゆぴは、盗み聞きがめちゃんこお上手な、悪い子なのです」


「…ゆぴ、お家からいなくなっちゃったんだよね…」


「ゆぴは、おバカさんなのですから、うっかりさんすることあるのですぅ」



 ケプナスも一応状況はわかるようで、小さな声で意見を話す。それを聞いたハプとシアルは「成程」と頷き、より奥の部屋に隠れる。


 ケッパス、ケプナス、ハプ、シアルの4人は、奥の部屋で身を潜める。


 ラビヌはケミキルと一騎打ち。


 ペリィは家の付近でゆぴを捜索している。


 ゆぴはソルイヨ市に今ようやく到着した。


 そんな状況で、ケミキルの指定した本拠地に、着々と使徒が集まっていた。

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