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異世界魔術物語  作者: 青空 御春
第3章:『罪と友情の1章』
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ページ3―14『みんなで』

「部屋を決める。ちっさい黄色い女、お前は俺の部屋の隅っこに丸まってろ」


「丸まってたくないのです! 」


「リーダー、お前はルーの部屋で静かにしてろ」


「ずっとは黙っていられないよー? 」


「大きい方の黄色い女、お前はローエルの部屋で勉強でもしてろ」


「穂羽男の子なんだけど!? 」



ラビヌは3人を匿うための部屋の割り振りをする。その割り振りが適当すぎる為、全員が全員あまり過ごしやすいとは言えない部屋で過ごすこととなってしまった。



「お前男なのか。おいおいまじか。性別代わりやがれ」


「無理だよ、穂羽は男の子だから女の子にはなれないの! もう! 」


「はいはーい、この中に性転換魔法とか使えるやつ居ねぇ? 」


「いーなーいーよ! 」



ハプは両手をじたばたして暴れる。ラビヌが真顔でそんなことを言うものだから、怒ったりはできないのだが。

そんな光景を見て、シアルはクスッと笑う。暫くここの人達とやっていくことになるが、これなら大丈夫そうだ。

こんなふうに暖かな日常があるからこそ、守って行かなければならない。



「あァ…うるせぇよ、お前」


「…あのね、ごめんね? 」


「許す」



そんなこんなで暫く騒いでいたが、ラビヌが解散の掛け声をかけたので、みんなはそれぞれの部屋に入っていった。



「ハプ・スルーリー。僕の部屋にようこそ。そんなに大きな部屋ではないよ。こっちが生活部屋。初めに君達とあったところだね」


「ケッパス君が、冷蔵庫から天然水持ってきて、ケプナスにかけようとしてたよね! 」


「何故…そのことをしっかり覚えているのかな。まぁいいよ、そして奥が勉強部屋だ。交渉をしたところだね」



大きなひとつの机のある部屋。1度入ったことがあるため、覚えていた。



「ご飯食べる時は、全員で食べる時と個別の時があるんだけど、個別の時はこの部屋で食べようか。2人座れるのはここだからね。カップ麺が沢山あるから食べてね」


「あのね、あのね、健康に悪いよ、穂羽作ろうか? 」


「作りたいなら作ってもいいよ。もし僕の分も作ってくれると言うのなら、ありがとうって言っておこうか」



ケッパスは冷蔵庫の中身を見せながら言う。



「少ないなぁ…」


「それで、睡眠なんだけど、ベッドがひとつしかないんだ。1人用だからね、僕の分しかない」


「なら穂羽、床で寝ようか? 」



ハプは冷蔵庫とキッチンの間の狭い床を指さす。



「なんでそこを指さしたのかどうか本当に本当に理解できないな」


「ここが、寝やすそうだもの」


「きっと埃が溜まっているよ。それに狭い」


「お掃除するね! 」



ハプはそう言って雑巾を取り出し、その床を短時間で眩しいくらいに磨き上げた。その間、ケッパスはマス目の入った用紙に何かを書いている。



「ちょっと待ってね、ラビヌに提出してくるよ」



◇◆◇◆◇



「この作業部屋が俺の部屋だから。あそこ熱いから入るなよ。説明以上だ」


「あつあつなのですね! もし入ったら、唐揚げになってしまうのです? ケプ揚げになってしまうのです? フライドケプナスなのです? 」


「なんで揚げられるに限るんだてめぇ。どちらかといえば、焼かれる。焦げる。こんな感じだ。てか俺今ローエルに頼まれててめぇらの寝る場所作ってんだわ、邪魔すんな」




ラビヌは釘と釘打ちを取り出して、綺麗な形に整えられた木に打ち付ける目安を立てる。

ケプナスはそれを隣からクルクル回って覗き込み、興味深そうな目をする。



「何作ってるのです? おもちゃ? 」


「てめぇらの寝るところって言ってんだろうが、ベッドだよベッド。3個もだ。他にもやんなきゃなんねぇ事もあるってのに、無茶振りしやがって」


「おもちゃ出来たら、遊ぶのです! 」


「…てめぇは本当に耳がねぇのか」



ラビヌは若干引きながら木を削る。ケプナスが置いてあったノコギリを振り回し始めたので、ラビヌは面倒くさそうに奪う。



◇◆◇◆◇



「案内感謝するよー。ここの部屋の構造はだいたい分かった」


「待ちなぁ、さい! 私はまだ終わりなどとは言っていない! あとひとつ、私専用のすごく大切な部屋があるのだ! さぁ、ついてきな! 」


「うーん、了解だよー」



シアルはルーに言われるがまま、その背中についていく。ルーは半透明で両開きの大きな扉に手を掛けて、力強く押し開ける。

そこには、深々とした緑色、カラフルで点々とした黄色、テカテカと光る紫色、ポツポツと目立つ赤色などなどが、部屋いっぱいに広がっていた。

ルーは顔でそれらを指しながら、シアルに向かってドヤ顔で言う。



「アルクトテ・ルーの家庭菜園へようこそ! 」


「へぇ…すごいんだねー? やっと君が植物学者だという感覚に実感が湧いたよー」


「やっとってどういう意味だ! 私は列記とした植物学者だ! 」


「君にその言い方されると信用無くなるんだよねー」



ルーは腕を組んで片足を地面に叩きつける。



「いちいちリアクション大きいねー。ケプナスレベルだよー」


「リアクションが大きくてもいいだろうが! で、この家庭菜園だけど…」



ルーが説明しようとすると、シアルのスマートフォンから電話の着信音がなる。

シアルは警戒しながら画面を見る。



「…良かった」



ケミキルでは無い。その画面には、ペリィ・スリータと表記されてあった。

シアルはボタンを押して、ペリィからの電話を取る。



「もしもしー? ペリィじゃないかー。どうかしたのかなー? 久しぶりだねー」


『はい、シアル様。お久しぶりですね』


「うんうん、久しぶりー」


『突然ですがシアル様、シアル様が居られる場所は何処なのでしょうか。安否と居場所確認したいという僕のちょっとした好奇心です、返答をすることに少し躊躇の意が現れるのであれば返答はなくても構いません』


「別に大丈夫だけどー? 僕がいるのは、キャリフラワーズ工作学会…魔術師チームだよ、この市のねー」



シアルはその場をくるくると回りながら電話をする。



『そうですか、もし何かありましたら、僕を呼んでください』


「了解だよー。で、要件はそれだけ? 」



そう言いながら、シアルは耳から少し電話を離し、切る準備をする。



『いいえ。要件は別に』


「…何かなー? 」


『――ゆーか・ゆーぴぃーが、行方を眩ませました』




◇◆◇◆◇


【ケッパスの大人数勉強部屋】



「集まってくれてありがとー、チームソルビ市のみんなー。ラビ以外のキャリフラワーズさん達もいるようだけどさー」


「ここは僕の部屋だからね。いて当然だよ」


「大事な要件だと聞いた! 私達だって協力する身、貴方達の話を聞く権利はある! 」



シアルが前に座り、その横を囲うようにケプナス、ハプ、ルー、ケッパスは座る。



「何か、あったの? 穂羽ね、心配です」


「まさか、ケプナス様の隠された力が目覚める刻に関する研究の成果が出たのです!? 」



ハプは上目遣いで、ケプナスは上から目線でシアルに問いかけた。シアルはケプナスの方を向いて人差し指を口に当てる。



「ペリィから連絡が来た。ペリィの家で匿っていたはずのゆぴが、行方不明だ」


「馬鹿ゆぴが!? 確か確か、きょーだんでは、あいつもぶっころしの的になってたはずなのです! こわこわなのです、大変なのです! 」


「そうなんだよねー。ケプナスの言ってる通りだよ。ゆぴはゆーぴぃー家、放っておいたらいつか殺される可能性もある」



シアルは机の上に両手を置く。



「私達はそのゆぴとかいう奴は知らないけど、さっきの話だけで大抵の状況は察したよ! 」


「僕もだね。彼女は何故隠れることから逃げたのかな? 」


「ペリィが言ってたよー。『恐らくだけど、逃げ隠れることは彼女にとっては不名誉なことだったんだろうね。そう考えると彼女の心情を読み取ることも難関ではない』ってねー」



シアルはハプの目を見ながら言った。ハプはそれを聞いて、ゆぴの性格を頭の中で考えた。



「…確かに、ゆぴには逃げるのは似合わないよね。ゆぴは戦うのが好きだもの。味方になってからはあまり分からなかったけど、戦争の時はそうだったし。それにゆぴは本当はいいひとだから! きっと、穂羽達を助けたいと思うのも、あるのかも…」


「リーダーリーダー、連絡はできないのです? ケプナス様の持ってないすまほ! すまほ使って連絡! 」


「残念だけど、ゆぴは家のゴミ箱に放り捨てて行ったらしいよー。これには驚愕したってペリィが言ってた」


「すまほを…ぽい…? 」


「なら、連絡手段はなしだということだね。ペリィは、なんて言ってた? 」



ケッパスは額に人差し指を当てる。



「恐らくゆぴはこれから、何も持たずにツム国中を僕らを探しながら走り回るということらしい。ペリィの推測だと、使徒が来た場合はゆぴが殺す。ケミキルと遭遇したら…分からないらしい」


「そんな…ゆぴ、死んじゃったらどうしよう。穂羽が、探してこなくちゃ、ゆぴを…」


「駄目だ。それで君までが死んでしまったら、被害が跳ね上がるだけだ。今はここで、()()()待っている。ゆぴが死なないと信じながら、ね」


「…全員で、なんだね。シアル」



ハプは俯き、シアルの言葉に肩を震わせる。



「…そうだよ、ハプ。全員で、待つんだ。ハプと、ケプナスと、僕と、ルーと、ケッパスと、ラミカスで」



シアルが何気なく言い放った『僕と』という言葉が、ハプの感情を高まらせた。

ハプはシアルの方を振り向き、シアルの肩に手を置く。



「『君たちは待ってて』じゃなくて『みんなで待つ』なんだね…! 」



ハプは目を細めて、少し背伸びをしながらシアルを見上げる。

シアルはそれに気がついて、ハプよりも背が低くなるように屈んだ。

ハプは笑顔でシアルの方を見る。シアルもそれに、笑顔を返した。



「確かにこうやって屈んでみると、いつもの身長では見えないところが見えているよ」



シアルはハプを見上げる。



「それが、背の低い人のちからですっ! 」


「僕は今回は頼ってみるんだよ。背の低い、力の少ない、ゆぴを」



ハプの顔はやはり、ケプナスのようなドヤ顔だ。

シアルの顔もやはり、本物の笑顔だった。

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