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異世界魔術物語  作者: 青空 御春
第3章:『罪と友情の1章』
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ページ3―13『逃げたくない』

 チームソルビ市とキャリフラワーズ工作学会の間に平和協定を結ぶことによって、交渉は成立した。シアル、ハプ、ケプナスの3人はしばらくの間、キャリフラワーズ工作学会のチームメイトに匿ってもらうことになった。

 平和協定の内容により、戦闘の際も、協力してくれるということになった為、ケミキルとの戦闘も有利な方向に傾くだろう。



 ◇◆◇◆◇



「ここには誰も居ないよ。ここに住んでいるのは僕とあと一人…そうだね、妹が住んでいるだけだからね。何度も何度も訪問されると、僕も少し怒りの意をあらわにすることになるよ、いい加減に帰ってくれないかな」


「そうか…なら、調べさせて貰おうか。家の中に入ってもいいな? 」


「物を散らかすことは控えて欲しいけどね。構わないよ、5分の間に済ませてくれ」


「大丈夫だ、すぐに済ませる」



 ぺリィの家の玄関で、ぺリィは使徒と1体1で話をしている。使徒は、ケミキルと直接話をしていた使徒。星四貴族だ。他の使徒たちの指揮の役目を奪われ、ソルビ市内の詮索を任されている。



「…全く、参ったよ。まさか使徒に星四以上の貴族が居るなんて、可能性を想定していなかったよ。迂闊うかつに手を出せない」



 使徒は部屋を詮索し、鍵のかかっている部屋の前で立ち止まる。



「この部屋は?」


「そこは御手洗だよ。今は妹が入っている。あんまり除きみない方がいいよ、妹が憤慨するだろうから」


「そ、そうか。ならば、その妹とやらが出てくるまで待っていよう。そして、君の妹の部屋に案内してくれるかな? 」



 ぺリィには妹なんて居ない。勿論、部屋だってない。しかしぺリィは一切の動揺を見せずに、ずっと変わらない態度で話を続けた。



「残念だけど、妹はまだ子供だからね。自分の部屋は持たせないと、僕が判断している。代わりに、まれに僕の部屋の勉強机を貸して勉強を指導しているよ。先程君も拝見しただろう? 」


「…あぁ、そうか。貴様を信じよう」



 数分後、ぺリィは様子を見図り、扉をノックする。



「そろそろ出てきてくれないかな? 今、お客様が来ているからね。君の様子を見てから、帰るらしいよ。星四貴族の人だよ、態度は弁えてね」



 ぺリィは、自分が相手を教団だと知らないような言い方で、『妹』に相手の危険を伝える。

 すると、扉が開く。黒いローブを着込んでいる、深緑色の長いストレートの髪、茶色い瞳の少女が、扉に片手を当てて出てくる。



「も、もう! 無理矢理呼び出すとか、お、おに、お兄ちゃん酷い! 後で、またはいるんだから! 」


「大丈夫だよ。紹介するよ。この子は僕の妹、『ユナリーカ・スリータ』だよ。ほら、自己紹介して」


「ふん! じゃなくて、えっと、えっ、えっと。私はゆー…じゃなくて、ユナリーカ・スリータ! よろしく頼むわ…頼むよ! ほら、これで満足した!? 」



 ぺリィは『妹』の方を見つめて、使徒の方に向き直る。



「すまないね。この子は人見知りなところがあって、君のような身分が上の人の前で喋るとかなり緊張して頭の回りが遅くなるんだ。元々お世辞にも頭がいいとは言えない子でね。すまないよ」


「…そうか。私の早とちりだったようだな。失礼しよう」


「うん、そうしてくれると大変有難いね。ところで、君は何故ここに来たのかな? 」



 使徒はぺリィの方に向き直り、帽子を被り直しながら、浅い笑顔で言った。



「尋ね人、だね」



 使徒は、ぺリィの家から出ていく。するとそこには、他の使徒が居た。



「やぁ、君達。ケミキルさんの言っていたゆーぴぃー家の少女は、見つかったかな? 」



 ぺリィの家からでてきた使徒は帽子を地面に置き、服の上から教団のローブを羽織る。



「いいえ。森付近の家は全て見ましたが、それらしい人は1人も」


「私の方もいませんでしたー! あっちの方を見てきましたけど、星無しの貧乏人さん達しかいませんでしたー」


「一応スルーリー家の方も見てきたけど、中には人はいなかったよ、151番君」



 そう言って、外で待っていた使徒の1人が立ち上がり、中からでてきた使徒…151番と呼ばれた使徒の肩に手を乗せる。

 


「そうか、報告ありがとう使徒番号563、562、141。他に報告は。スルーリー家を見つけて、どうした」


「燃やした。まぁ、そう簡単には帰れないようにしといたよ。それでOK? 」


「OK。まだ見つかってないなら詮索を続けよう。ほとんどはホテルの方に行ってるから、4人だけだ。解散、見た所は地図に印をつけて」



 ◇◆◇◆◇



「さぁ…帰ったね。もう、元に戻っていいよ」



 ぺリィの合図を聞いた少女は深緑色のウィッグを床に投げ捨てて、ローブを脱ぎ散らかした。



「終わった? あー、めんどい! なーんーであたしがこんなことしなきゃなんないのよ! くそっ、ばーかばーか! 」



 ゆぴは脱いだローブでぺリィをしばきながら、地団駄を踏む。



「仕方のない事だよ。僕はなるだけ丁寧に解説を施したつもりだったんだけどね。招待がバレたら殺されるんだよ。シアル様の言っている事だよ、信じてくれ、ゆーか・ゆーぴぃー」


「何よ何よ、ユナリーカ・スリータって! どこからの引用でそんな適当な名前つけたのよ! 」


「その場での思いつきだよ。一瞬だから、君の名前に少しばかり近い物になってしまったことについては許容して欲しいところだね」


「知らないわ! ふん! 」


「これも君を守る為なんだよ。あまり騒々《そうそう》しくして欲しくはなかったんだけどな」



 ゆぴはその場に勢いよく座る。ぺリィはため息を吐いてゆぴをリビングへと案内した。



「それにしても、即興そっきょうでちょっとした演技を要求したにしては、僕の予想を凌駕りょうがした名演を見せつけてくれたね。少しばかり驚愕きょうがくしているよ」


「ふん! わざわざ面倒な言葉を使わないでちょうだい、めんどくさいんだから! それに、舐めて貰っちゃ困るわよ。あたしだって1人の中立衛兵として、色々やってたんだからね! 」



 ゆぴはリビングの椅子に尻もちをつくように座る。



「でさ、今更だけどハプ達どこにいんのよ。なんかさ、あたし達だけ逃げてるみたいでえーと、なんて言うか、胸糞悪いんだけど」



 顔を顰めて、ぺリィに吐き捨てる。ぺリィは分厚い本を取り出して机の上に広げ、読みながら答える。



「訂正しようか。逃げているのは彼らだよ。彼らが本当の意味で、教団から逃げている。僕達は、隠れているんだよ。正確には君だけなんだけどね」


「あっそ。逃げるも隠れんも同じ、胸糞悪いのよ! 」


「僕に言われても困るな。全く。僕は少し、シアル様やハプの家の周りの様子を見てくるよ。ついでに君の新しい銃も買うから、大人しく家で待っててくれると有難いな」



 ぺリィは立ち上がり、服を整える。

 それをゆぴは好ましくなさそうな目で見ながら、脚を組んでしぶしぶ返事をした。



「…ふん、分かったわ。仕方なーく、そうしてあげる」



 ぺリィが家から出ていくと、ゆぴはすっと立ち上がる。覚悟を決めたような表情をして、玄関に立つ。



「…なーんて言ってたら、あたしが素直に待ってるとでも思ってたの。頭はいいけど、その辺の可能性も考えずに飛び出すとか、馬鹿もいい所ね! 」



 ゆぴは靴も履かずに、外に飛び出る。



「見つけ出してやんわよ。ハプ、ケプナス、シアル。――教団! 」

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