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異世界魔術物語  作者: 青空 御春
第3章:『罪と友情の1章』
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ページ3―11『天才数学者』

 4人の向かった先の部屋で、少年はハプたち3人を見てきた。不思議そうに思う目ではなく、ただただ3人を探る目だった。



「この人達は、チームソルビ市の人達。今ちょっとなんかに追われてるらしくて、私達に守って欲しいということらしい。その交渉を、しに来たの。詳しくは御三方から聞きな、ちなみに私とラビはOKだから、あとは貴方だけ! 」


「ふむふむ…そうなんだ」



 少年は持っていた本を閉じ、隣の机の本棚に戻す。



「事情はわかったよ、君達。僕はケッパス・ローエル。貴族の内50%を占めていて全ての人類の21.5%を占める星三貴族という、そこいらを探せばどこにでもいるごく普通の魔術師だよ」


「いちいち毎回相手によって、別の言い方で自己紹介するのいい加減飽きないのかい? ローエル。私は聞き飽きたんだけど…」


「初めは同じことばかりを言ってたはずだよ、君が聞き飽きたと言うから毎回自分に関して別の表し方をしてるんだ、それでも飽きたのならどうすればいいの? 」



 やっぱり少し違うが、ケッパス・ローエルの口調は聞き覚えがある。偶に言い方が変わるし、少し子供っぽいところもあり、ケッパスの方が声が高いけど。

 ケッパスの話し方は、ハプもよく耳にする。それから、髪質も似ている。



「…ケッパス君、よろしくね。ひとつ、聞いていいかな? 」


「僕が答えられることなら」


「ケッパス君…ペリィ・スリータって知ってる? チームソルビ市副リーダーなんだけど…」



 それを聞いたケッパスは一瞬目を見開き、嬉しそうな顔になった。



「君、ペリィを知ってるんだね。うん、僕はペリィのこと、知ってるよ! ペリィ・スリータは僕の父親の兄の父親の息子の息子だよ」


「えっとえっと、一回聞いて分からない穂羽はごめんなさいなんだけど、ほんとにほんとに申し訳ないんだけど、もう1回言ってくれる? ペリィは、ケッパス君の、何? 」


「僕の父親の兄の父親の息子の息子だよ」


「わかんないよぉ! 」



 ハプが頭を抱えてしゃがみこむと、ルーが訂正する。



「ケッパスのお父さんがいるでしょ? そしたらそのお兄さんがいる…いや、これは言わなくていいね。ケッパスにはお父さんがいるでしょ。そのお父さん、つまりケッパスのおじいちゃんがいるの。で、そのおじいちゃんに息子がいるでしょ。ケッパスのお父さん、そのお兄さんでは無い息子が。で、その人の息子がペリィ…ってことでいいのかなぁ、ローエル君よ! わざわざ分かりにくくするのが好きだね、なんの謎かけだよ! 」


「ただのなぞかけだよ、この子の発想力を確かめて見たかったんだ。まぁ、これでも簡単にしたつもりだったんだけどね。

 でも、この人たちがペリィを知っているとは驚いた。まあまあいいひとだよ、ペリィも。写真、見る? 」



 そう言って、ケッパスは机に置いてあったノートパソコンを開いて、素早くフォルダを開いて、1枚の写真を見せる。

 そこには、ドリルの付録についている100点のテストを持ったケッパスと、その隣で無表情で写真に写るペリィがいた。



「これがね、僕が国語の文法とかのテストで100点を取った時の写真なんだ。僕、国語はあんまり得意じゃないから。ペリィに教えてもらったの。でも100点が取れたからね、ご褒美に数学のドリルを貰ったんだよ」


「そのご褒美、嬉しくないのです」


「そうかな? 僕は数学が好きだからね、その時は跳ねて喜んだんだけど」


「数学じゃなくて、算数なのですよ! お間違えしてるのです! 」


「僕の学習している範囲は算数ではなく数学だから数学と言ってるんだよ。ペリィからの引用によると類似した意味を持つ熟語でも言葉を変えるだけで相手の捉える意味は大きく異なるらしいから、気をつけた方がいいよ」



 それを聞いて、ケプナスは必死に考えようとした。その言葉の意味を。頭を抱えて考えまくったが、考えることが出来ずに熱を出してふらついた。



「ケプナス、風邪なんだから無理しないの! もう、馬鹿なんだから」


「その子、風邪だったの? そ、それは…ごめん…」



 ケッパスは先程の落ち着いた態度とは一転し、健気で素直な子供のように、謝った。



「ケッパス君、いい子だね。ちゃんと謝るのって、とってもいいこと」


「…うん、風邪、大丈夫? えっと、ケプナス」


「ケプナスが…燃えているのです…」


「も、燃えてるの! 大変! 水をかけないと! 」



 ケッパスはそれからもしばらく、年相応の態度だった。本当に冷蔵庫からペットボトルを持ってきたので、ハプは急いで引き止めた。



「冷蔵庫があるんだ。ケッパス君、ここで暮らしてるの? 」


「うん、そうだね。そこの自称20歳植物学者、無駄に露出度の高い赤髪職人はそれぞれ、この建物の中に部屋があって、そこで暮らしてるんだよ」


「そう、なんだ。そういえばケッパス君、何歳…なの? 」


「僕? 僕は8歳だけど…」


「ケプナス様とおーなーじーなーのーでーすー! やった、やった、同い年で一緒に遊べるのですっ」



 横たわっていたケプナスは、ケッパスが同年齢ということを聞いた瞬間ガバッと起き上がる。小さな子供は、同年齢を見つけると遊びたくてそわそわする。



「ケプナスとケッパス君同じ年齢なの!? 嘘、なんで同じ年齢でもこんなに知能指数が変わるの!? 」


「言うねぇ、貴方。いるんだよこの世には天才ってのがさ! 例えばこのアルクトテ・ルーみたいに、20歳で植物学者になってたり…」


「そなのですよ、おにちゃーま。この世には天才ってのがいるのですよっ! 例えばこのケプナス様のように、天才だったり…」


「天才の価値観と言うのは人によって変わると思うよ? 誰かに天才とうたわれるものはどこかでは非難されている。その非難している者達が天才と仰いでいるものも、どこかでは罵詈雑言を飛ばされているからね」



 急に会話に入ってきたルーが自信満々に話し、それに対抗するようにケプナスが胸を張る。そしてその2人を掻き分けるように、ケッパスが話して聞かせた。



「本当の天才ってやつは、自分から天才とか言わないんだよねー、ケッパス・ローエル」


「あくまで確率の話だよ。でもさっきも言ったように人によって天才の基準や価値観は変化するからね。でも確かに確率的には、自分から天才天才と言っている人は天才と呼ばれていいほどの偉業を成し遂げていないけどね」



 それを聞いて、ハプ、シアル、ルーは笑う。ケプナスは暴れだして、また熱を出して倒れた。

 その様子を見て、ケッパスはノートパソコンを閉じる。



「本題に入ろうか。ケプナスちゃんは今は話が出来そうにないね。リーダーの君とハプ、来て欲しい。必要に応じてルーも呼ぶよ。それまではケプナスちゃんの面倒見てて」


「はーい、穂羽行っきます! 」


「了解だよー」


「20歳のお姉さん力を舐めなさんな! 」



 ハプとシアルは言われたように、ケッパスについていく。ケッパスの部屋の更に奥にある、複数人での勉強部屋だった。



「ここの机は大きいから、設計する時とかにも使ってるんだ。ここ、座って」



 ケッパスの座った向かい側の椅子に、ハプとシアルは腰掛けた。



「と言っても、僕はまだ君たちの要望をよく知らない。さっきしばらく一緒に居て、悪い人ではないとわかった。あとは内容だね。詳しく、聞かせてもらおうか」

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