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異世界魔術物語  作者: 青空 御春
第3章:『罪と友情の1章』
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ページ3―10『ものづくり』

 キャリフラワーズ市の工場のひとつの煙突の中に、ハプ、ケプナス、シアル、そしてルーは入っていった。

 煙突から落ちると、そこは灰まみれの場所。全員、盛大に尻もちをついた。



「途中で…異空間に飛ぶとか…ないんですかぁ」



 こういう系統のことだから、煙突を滑り降りて行く途中、なんだかだんだん煙突の長さが長くなり、ぐんぐんぐんぐん落ちていくと、途中で異空間に飛ばされて。それから綺麗に着地できるものだと期待していたが、そこは本当に普通の工場。なんとも期待を裏切るのが上手いことだろうか。



「ごほ、ごほなのです! 」



 ケプナスはわざとらしいがわざとでは無い咳をする。



「そっか、ケプナス風邪! 大丈夫? 」


「風邪じゃないのですよ、ういるすなのですよ…」


「そんなくだらない訂正を入れれるくらいには、余裕があることがわかりました! 」



 ハプはケプナスを背負い、先に進もうとしているルーと、そこについて行くシアルについて行こうとする。



「ちょいと、面倒な構造になってるから! ちゃんと私についてきなさい! 迷っても知らないからね! 」


「あ、ごめんなさい、今行きます! 」



 工場の内部はルーの言った通り、なかなかに分かりずらい構造になっていた。

 うねうね迷路のようになっていたので、ケプナスは「めいろ、めいろ、めいろ、めいろ! 」とはしゃいでいた。



「あ、安心はしないでおいでよね、貴方達。私は20歳の温情ってやつで御三方を受け入れてますがね、ほかの人達が貴方達を匿うことに許可するとは限らないからね!

 そうなったらさすがに、私も匿うことは無理! チームの一員としてさ。おっけ? 」


「勿論、それは承知済みだよー。僕達はこうして君達に物事を頼んでいる立場なんだ。ま、無理だったら静かに引き下がるよー」



 ハプはチラチラと横目で2人の口元を追う。交渉が上手く成功するのかどうか、不安なのだ。少なくとも自分自身は、ソルビ市側が有利になる展開に持ち込める自信が無い。

 ケプナスは論外として、シアルに賭けるしかない。でも、もしシアルが成功しなかった場合、ハプ達が逃げ切れるとは到底思えない。

 キャリフラワーズ市の実力は知らないが、いると居ないでは大きな戦力差が出てくる。


 そして、仮に。成功したとしても、ハプには不安がある。キャリフラワーズ市がハプ達3人に協力し、3人を匿った場合。

 確定で、関係の無い彼女らもケミキルに追われることとなる。つまり、ハプ達が彼女らを、巻き込むことになるのだ。


 シアルならきっと、このことを言わない。交渉を成功させるために。でももし何も言わず、適当に受け流し、実際に戦った時に、何を思われるか分からない。

 でも、そんなハプの不安も、この後すぐに塵となって吹き飛ばされた。



 ◇◆◇◆◇



「保護? 俺はOK。はい、交渉終わり、邪魔だからどっか行って」


「…え? 」



 漫画だとここで、風が吹いて木の葉が1枚舞うのだろう。

 しばらく工場を歩き続けると、最深部に小さな精密作業をするための部屋があった。

 その奥の机に座って、ひたすらに作業をしている女性。


 ルー曰く、ここの魔術師チーム「キャリフラワーズ工作学会」のリーダーだ。



「え、即答…それって、条件も聞かずに!? 」



 ハプは焦って身を乗り出す。シアルとケプナス、そしてルーも、さすがに動揺していた。



「あちゃー、この素早い交渉はいくら20歳のスーパー直感を持ってても予想できませんなぁ」


「…おバカさんなのです? 」


「これはびっくりだよー、ほんとにいいのかなー? 」



 3人は、その女性の周りを取り囲み、不思議そうに覗き込む。



「何作ってるのです? おもちゃ? 」


「ケプナス、邪魔したらダメでしょ! 」



 ケプナスが無意識に邪魔をしまくるので、ハプはケプナスを引き寄せた。



「全く…で、ほんとにそれでいいの? ラビさんよ。私は御三方を匿うことには賛成だが、それは危険が伴うかもしれない。ほんとにいいの? 」


「あ、そのこと、わかっててくれたんですね、ルーさん…」


「当たり前! それでこそ面倒見のいい20歳のお姉さんってやつでしょ! あ、それとそうそう。こいつのこと、紹介するの忘れてたね。こいつはラミカス・ラビヌ。ここキャリフラワーズ工作学会のリーダー、そして作業担当だよ。ラビって呼んであげて、私達もそう呼んでるから」



 ルーは両手を上下に出して、ラビヌと呼ばれた女性に向かってヒラヒラさせる。それを聞いて、女性は椅子の背もたれに片腕を乗せ、椅子を回転させてこっちを向いてきた。



「ルー、そのヒラヒラを今すぐにやめろ。今すぐにあの熱々の火の中に放り込んでやってもいいんだぜ? 」


「ヤダヤダこわぁーい、というよりその脅しにはもう慣れましたとさ。20歳の理解力を舐めなさんな? 」


「まだてめぇは自分を20歳20歳言ってやがんのか、こちとら聞き飽きましたとさ。まさかこいつらにも20歳で通してやがんのか、ルー。お前31だろ! 」


「な! おい、馬鹿! 私は20歳なんだよ! 31、30の1個上。だから実質31は30なの! んで、30って1個下がったらもう20代じゃん! 20代は20歳と同じだって、何度言ったらわかるの! 」


「そのクソ理論いい加減にやめやがれ、いいか、聞いたな御三方。こいつはこの20歳理論とかいう自論を押し通してる馬鹿みたいな自称20歳の31歳植物学者。まぁ、俺からも自己紹介しておくかな。

 俺はラミカス・ラビヌ。ラビヌでもラビでもラミカスでも、好きに呼んでくれ。あ、リーダー兼作業担当もやってるぜ。それと炎タイプな」



 2人は長々とした茶番を終え、ハプ達3人の方に向いてきた。



「ラミカスちゃん、って呼ばせてもらいます! ハプ・スルーリーだよ、よろしくね! そういえば、ラミカスちゃんは、女の子なのに俺って言うんだね。ルーさんも改めてよろしくお願いします! 」


「なんでルーは敬語なのに俺はタメなんだよ…ハプか、よろしくな。あと一人称だけど、どうでもいいだろ。俺が俺であることがわかるならさ」


「私に対して敬語なのはさ、私がお姉さんっぽいから! ラビに対してタメなのは、ラビがガキっぽいから! これ以上に明確な理由などぉ…ない! 」


「本気で放りこむぞルーてめぇ。ちょっとは集中させやがれ。後、御三方を匿う件だが、俺に言われたところでなんか判断できるわけでもねぇ。俺が担うのは、あくまで作業だ。物作りは、作るだけじゃねぇ。設計して、作って、色んな工程が重なって、やっとひとつの物ができ上がる。俺は設計されたものを、そのまま作るだけの職人だ。

 いいか、ルー。今は交渉とかなんたら、その危険性とか話さなきゃならねぇ段階なんだろ。なら、今は設計中だ。俺の専門分野じゃねぇ。なら、このことを話す相手は俺じゃねぇ…、わかるだろ? もう一度言う。俺は作業をするだけだ。こういうのは、もっと専門のやつに言いやがれ」



 ラミカスは長々と話をして、もう一度作業机と向かい合った。



「ふーん、悪い人ではなさそうだねー。本当ならここで交渉成立! のはずなんだけど…ラビヌの話の感じだと、これで終わりでは無さそうだねー? 」


「おぉ、20歳の直感に負け劣らぬ素晴らしい直感をお持ちのようで。そうだね、その通り! 今から私達4人は、このキャリフラワーズ工作学会のトップを統べる3人の中の残りの1人。設計担当に会いに行く」



 そうして4人は部屋を抜け、その隣にある部屋に入る。そこには、深緑色の少し長めの髪をし、上の方で小さくふたつに髪をまとめている、小学生くらいの男の子が立っていた。その手には、分厚い本を持っている。



「まーたまた読書かい? ローエルさんよ」


「君が、いつも植物の研究に熱中して励むのと同じように、僕が好きな本を読むのに熱中したくなるのだって同じ事。ご理解いただけると幸いだね。ところで、聞きたいことがあるんだけど、ルー」



 どこかで聞いた事のある口調で、少年は話した。



「そちらにいる右から順に身長178、125、150の御三方は、どなたか教えていただけるかな? 」

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