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異世界魔術物語  作者: 青空 御春
第3章:『罪と友情の1章』
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ページ3―9『天才≠頭良い』

ビルの上で、恐らく爆発を仕掛けてきたであろう女性が、腕を組んで立っていた。



「貴方達が意図して遥か彼方の海に向かって弱々しい魔術攻撃を放ったことは私達はもう知っている! 合図なのだろう! つまり貴方達は、私やその仲間に、出てきて欲しかったと! もう一度言う…貴方達、なんの用だぁ! 」



シアルは上目遣いで相手を見る。

その隣で、ハプとケプナスは、その人の容姿について話していた。



「ふーん、反応が早い…」


「ケプナス、あの人とっても髪が長いね。というか起きたんだね」


「そうなのですね。それに片方だけにつけるはずの眼鏡みたいなやつ、わざわざ個別に両方つけるとか変人確定なのです。起きてたのですよ」


「変人って、ケプナスに言われるのだけは可哀想。それにね、腰に茨のとげとげなんてつけてたら、当たったら痛そう」


「どうしてズボン片方だけ捲りあげてるのですか。新手のファッションなのです? 」



コソコソと話をしている間も、その人はずっとビルの上で腕を組んだままだった。



「降りて来てくれないかなー? 話がしたい。君は、キャリフラワーズの魔術チームの一員と考えて間違いない? 」


「貴方が上がってくればいい、私だって君達と話がしたくない訳では断じて無い! うんうん、話のわかる人は嫌いじゃないよ! 私はキャリフラワーズチームの副リーダさ! 」


「…まぁ、そうだねー。僕達から呼び出したんだ、僕達から行かなきゃ駄目だ。ハプ、ケプナス、ついてきて。交渉だ」



シアルは飛び上がり、ジャンプに浮遊術を加えてビルの上に飛び乗る。ハプもケプナスを抱いて、浮遊術でビルの上へ向かった。



「来てくれたね、じゃ、早速だけど要件を聞かせてもらおうか」


「まずはお名前を知りたい。穂羽はハプ・スルーリー。おばさん、名前は? 」


「ケプナス様はケプナス・スルーリーなのです。世界一頭が良く、世界一強く、世界一可愛く、世界一きゅーとで、世界一くーるで、世界一天才のケプナス様なのです。おばさん、お名前はなんなのです? 」



ハプとケプナスの自己紹介を聞いた茶髪の女性は、雷が綺麗に自分に直撃した時のような顔をして、その場に膝と手をついた。



「…ねぇ、大丈夫? 体調、悪いんですか? 」


「…私は…」


「私は、どうかしたんですか…? 」


「私は、おばさんじゃ、なぁーい! 私の名前はアルクトテ・ルー! 決して、おばさんではなぁーい! いいか、よく聞け黄色い兄弟! ルーまだ20歳! いいね! 列記とした20歳(はたち)の植物学者だ! おばさんとか言ったら私、怒るぞ! 」



拳を震わせながら、ルーは笑顔で叫ぶ。



「私のことはルーと呼んでくれたら構わない、仲間との呼び方がこれだからね! 決して! おばさんとは! 呼ぶな! 君達! 」


「そ、そっか。ごめんね? ルーさん。穂羽、お名前わからなかったから…」



ハプはすごく申し訳なさそうな顔で頭を下げる。ケプナスは隣でくるくる回っていた。

ルーは踏みとどまり、少し困ったような笑顔になる。



「…い、いや。私も言い過ぎたかもしれない…」


「はぁ、そうなるよねー。ハプって素直ちゃんだからさー。でも、そろそろ本題に入らなきゃだね。はじめまして、アルクトテ・ルー。僕はシアル・キャリソン」


「シアル・キャリソン…? あぁ、チームソルビ市の。キャリソン家の知名度と、そのまますぎるチーム名で覚えてたよ。で、そのリーダーがなんの用? 」



シアルは、やれやれといった表情で屋上に座る。



「チーム名がダサいことで覚えられるって、いい気しないなー。ま、要件ね。僕達を、匿って欲しい、それだけだ」


「匿う? 貴方達を? 貴方達、何かに追われているのか? 警察…とかだと、断固として拒否しよう! 」


「自己完結しないで欲しいなー、あはは。警察におわれてるわけないでしょー。まぁ、敵だよ。危険な集団」


「太刀打ちは出来ないのかな? 名門星五貴族が3人も集まっていて…」


「僕の能力が通じない相手でねー。そうなると、不利になってくるんだよ。1人は回復特化、1人は戦力にならない」


「戦力にならないとはどういうことなのです! 」



暴れてシアルを殴りたくろうとするケプナスを無視しながら、シアルとルーは話す。



「うんうん…でも、私には貴方の実力が分からないよ。私達が貴方より弱ければ、私達に貴方達を守ることは…不可能だ」


「いい。一緒に戦わなくてもいいんだ。ちょっと、匿ってくれるだけでも…」



着々と進んでいく話を見て、 ハプは何か、違和感を感じていた。このままで、いいはずなのに。



「…なるほど。でもそれは、私が決めていいことではないっ。私は副リーダー。私に何か話したところで、特に何も変わらないよ。だから、話そう」



このまま進んでしまったら、ハプは、後悔を背負ってしまうかもしれない。



「それは、交渉に持ちこんでくれる、と。断固拒否では無い、と言って貰えていると捉えていいのかな? 」



駄目だ。手を伸ばして「待って」と言おうとしたが、その時には3人は、ビルから降りようとしていた。



「ハプー? どうしたの? 行くよー? 」


「…あ、うん! えっと、ルーさんもありがとうございます! 」


「いいのいいの。その危険な集団って言うやつに興味抱いちゃって。好奇心、勝っちゃったよ。20歳の知識欲はすごいぞ? 」


「ルーはなんでそんなに20歳にこだわるのですか。うるさいのですよ」


「ケプナスが天才天才って言うのと同じです! 個性のひとつなんだから。も、馬鹿なんだから」



3人は浮遊術を使ってビルから飛び降り、先に進もうとする。



「ケプナス様を置いていくななのですよ! 」


「全く…いい加減に浮遊術くらい、習得してよねー」



シアルが溜息をついて、ケプナスを迎えに行った。



「あの子、浮遊術使えないの? 天才で最強じゃなかったのか…」


「自称、天才最強魔術師ケプナススルーリー様なんです。実際は馬鹿最弱魔術師ケプナススルーリー、ですから」


「おにちゃーまがケプナス様をお馬鹿にしたのです! ケプナス様は、天才なのですよ! 馬鹿じゃないのですよ! 」


「天才じゃないよ! 馬鹿なんだよ! ケプナスは頭悪いの! 」


「ひどひど!ひーどひどなのです! 」



ハプとケプナスがしょうもない言い合いをしながら歩いていくのを、シアルは腕を組んで見つめる。すると、その隣にいたルーが二人の間に入り、肩に手を置いた。



「何? 」

「なんなのです? 」


「貴方達! 天才の反対は馬鹿じゃない! 馬鹿の反対は天才じゃぁない! 天才の反対は凡人で、馬鹿の反対は利口だよ! 頭いい=天才じゃなくて、頭いい=利口、だ。馬鹿と天才って言うふたつの人間構成属性は、両方同時に所持できる! いいね! 」


「馬鹿と天才は、一緒に持てる…のです? 」


「馬鹿と天才は紙一重って言うだろ! 馬鹿は予想もしない場面で天才になる。天才は不意をつかれたら馬鹿になるの。馬鹿&天才は別々の部類の言葉なんだから、ね? 」



ハプはケプナスの方を見て、ニコニコと悪戯な笑顔で言う。



「だって、ケプナス。ケプナス、天才になれるって。良かったね、ケプナス」


「も、もう天才なのですよ! 」



2人がもう1度しょうもない言い合いをしていると、ルーが工場にある煙突を指さす。



「あっち! ついてきな! あの煙突に入ったら、チームの雑談場所的な場所に繋がる。じゃ、私からね! 」



そう言ってルーは煙突に飛び込む。



「サンタさん…なのです! 」



それに続いて、ケプナス、ハプ、シアルも、不思議に思いながら、煙突に入っていった。

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