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異世界魔術物語  作者: 青空 御春
第3章:『罪と友情の1章』
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ページ3―8『行く宛を求めて』

 ハプとシアルは、ケプナスを浮かせて走っている。あのホテルにはそろそろ、ケミキルが使徒を向かわせている可能性がある。

 あの病院の従業員は、全員ケミキルの部下だ。派遣しようと思えばすぐだろう。

 そんなわけで2人は、走っている。ここ、ツム国キャリフラワーズ市を、行く宛はありながら場所を知らずに、適当に走っている。



「シアル、これじゃぁ永遠につかないよ! もっと場所を絞ってから…」


「そんなことしてる間にあいつは来るよ。いいかい? 魔術師のチームなんてそんなにすぐそこにうようよいるわけじゃないんだよ。一般の人達が押しかけてきたりしたら溜まったものじゃない。だから、ある程度は探さないと見つからないはずだ。…でも、安全な場所はそこくらいだろう。探すよ、ハプ。キャリフラワーズの魔術チームを」



 ◇◆◇◆◇



「シアル! 荷物まとめれた? 穂羽、ケプナスを持っていきます! 穂羽の荷物持ってください! 」


「ぇぇぇ…僕がケプナス運ぶからさー。君が荷物持ってよねー」


「浮遊術で浮かせればいいじゃない。ほら、早く早く」


「その考えがあるなら自分でやってよねぇ…! 全く…」



 シアルはしぶしぶ浮遊術でケプナスと荷物を浮かせた。



「で…どこ行くの? 」


「そうなんだよねー…。行くところが決まってない。今回みたいに何度も何度もホテルや旅館を移動しまくるのもいいんだけど、そんなことできるほどお金持ってきてないんだよー」


「穂羽も。お家に置いて来ちゃった。ケプナスはいつもお小遣い持ち歩いてるけど、ケプナスは直ぐにお小遣い使っちゃうからほとんどないし…」



 ハプは念の為にケプナスの荷物を探るが、財布の中には小銭がちょっとしか入っていなかった。



「やっぱり…ケプナスったら。取りに帰ったりはできないよね、絶対追いつかれちゃう。…あっ! 追いつかれてから逃げるとか、できない? 」


「いや。逃げれないよ。使徒だけならまだしも、ケミキル本人がいた時のリスクを考えると逃げるべきだね。それにソルビ市に戻ったら、ゆぴとかが言いつけを破って飛び出てくる可能性がある。逃げ回るメンバーはこれ以上増やしたくないね」


「そう…かぁ。ならなら、とってもとっても大変じゃないのっ! 行くところもなく、ずっとずっとくるくるするの? 」


「いや。行く宛はあるよ。場所がわからないだけでね」



 シアルは荷物とケプナスを浮かせたままで、ホテルの外に出た。

 ハプも急いでついていく。



「行く宛…! どこ? 」


「ソルビ市に、魔術師チームがあるだろ? 前も言ったけど、魔術師チームは地域によって魔術師を簡単にまとめているグループだ。つまり…」


「このキャリフラワーズにも、魔術師チームがある! 」


「その通り…! そこに行って協力してもらえるかどうかは分からないけど、行ってみる価値はある。大体チームは、その市の中心部分にあるから。そこに知らない魔術師が入ってきたとなると、誰か出てくるだろう。ビルが多い、あの辺かな。行くよ! 」


「りょーかいっ! 」



 ◇◆◇◆◇



 そして今に至る。



「都市部分に来たのに…、誰も来ないよぉ! さっきも言ったけど、場所を絞ろうよ! ここが中心部分とは限らないでしょ、キャリフラワーズ市の主要な部分とかかもしれないじゃない! 」



 シアルは一時停止し、後ろ歩きでハプと同じところまで戻ってくる。



「うん…確かに、そうかもしれないよね。君の言っていることも一理ある。というか、かなり」


「逃げることばっかりに集中し過ぎ! 無駄に逃げ回って体力が消えちゃったら、ほんとに逃げないといけない時、すごくすごくすごーくすごーーく大変なんだよ! 」


「うん、間違いない。僕、焦ってたね。うんうん。ありがとうハプ」


「もう、馬鹿なんだから。で? キャリフラワーズにはなにかあるの? 」



 シアルは笑顔になり、ゆっくりと歩きながら説明をしだす。



「ここキャリフラワーズ市は、工業に発展している。世界屈指の工業地帯だよ。ツム国ってすごいんだよー? 工業のキャリフラワーズ市、魔術のソルビ市、商業のソルイヨ市と、かなりの先進国なんだからねー? ま、余談は置いといて。そんなふうに機械とかそういう方面に特化した場所だからさ」


「なら…あっちの、海の方の工場が沢山ある所とか? 」


「可能性は高い。うん、そうだねー。あっちに行こうか。目標が決まったら小走りだ。スピード落として欲しかったら言ってねー」



 そう言ってシアルは、ハプから見たらかなり早いスピードで走っていく。ハプはあっという間に差をつけられて、シアルを引き止める。



「小走りとは! 」


「ご、ごめんごめん。ハプも浮かせたらいいかなー? 」


「そうしてよ! プンスカ! 」



 シアルはハプとケプナスとその荷物を浮かせて、小走りで走っていく。



「早い! もう、穂羽バタンキューしちゃう! 早い! 」


「ハプが言ったからなんだけどねー…ま、ついたよ。ここの辺りかな。キャリフラワーズにとっての、中心部分は」



 ◇◆◇◆◇



「…へぇ、もういなくなったんだ? 準備早いね? どこ言ったか聞いた? 」


「は、はい…! ホテルの受付に聞きましたが、つい先程出て行ったと…」


「先程? 先程ならさ? 追いかけたら追いつける可能性あったんじゃない? 君でもさ? 他にも使徒連れてってたよね? なんで追いかけなかったの? 」


「ひ…そ、それは、報告した方が良いかと思いまして…」


「報告? 電話番号教えたじゃん? 忘れた? 連絡方法なんていくらでもあるよね? 」



 病院の裏側にあるケミキル・バントの自宅で、ケミキルは椅子に座って足を組み、片足で適当にリズムを取りながらパソコンを弄る。

 使徒はその部屋の隅で俯き、顔を真っ青にしている。



「で、ですが…」


「何? 聞いてあげるよ? 」


「い、いいえ…なんでも、ありません…」


「なんでもないの? 折角聞き返したのにさぁ? 文章ってものは始まりを聞くと最後まで聞かないと気になるんだよね? あのさぁ…」



 ケミキルは瞬時に立ち上がってメスを取り出し、相手の鼻面に突きつけて、吐き出すように呟く。



「殺されたいの? 人間が」


「ち、違…! 」


「…いいよ? 自ら殺されたいなんて言うわけないもんね? 今回は僕の失態だよ? 指示を君に任せたのが悪かったよ? ちゃんと部下の能力理解しておくのも、上司の仕事だしね? 」


「…」


「…そうだね、僕が行くよ。君、さっきの奴ら集めてよ? 指示は全部僕が出す。はい安心、解決。そのホテル行くから」


「で、でも、そこにはもう居ないと…情報も聞きましたし…」


「1回聞いただけでほんとのことを全部話すと思うわけ? 脳のどっかの血管破損してない? 口止めされてるとかいうちょっと頭捻れば出てくる可能性の領域を考えろよ? 脅せばいいじゃん? それ以上情報無かったら…」


「ですが、それが本当に限界の情報だったら…! 」



 ケミキルは使徒を横目で睨みつける。



「あいつら匿っただけで罪だって、なんでわかんないかな? ほら、僕目線で考えろよ? 知らなかったとしてもさ。情報だけ聞き出して殺す。情報くれなくても殺すけど」



 ◇◆◇◆◇



「ここか…出てきてくれるかな。どうしても来なかったら…」


「そうだね。敵と誤解されるかもしれないけど…攻撃だ」



 シアルは少量の魔力を集め、何も建物のない海の方向に攻撃を放つ。



「これで…魔力反応をあっちが管理してくれたら、来るはずだ。後は、説得するだけだけど…」



 2人がその場を見渡していると、2人の間で急に爆発が起こる。思いのほか、早い反応だった。その攻撃により、ケプナスは跳ね起きる。



「…敵襲、敵襲ーっ、って言いたいところだけど、わざわざ海の方向に弱い攻撃を放つお馬鹿さんはここには居ないと信じて! 貴方達! なんの用だぁ! 」

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