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異世界魔術物語  作者: 青空 御春
第3章:『罪と友情の1章』
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ページ3―2『ケプナスの病気』

 「っ…」



 ケプナスはその場に硬直し、瞬時に拳を握りしめ、私服から魔術服に変換する。



 「…戦う? 」


 「動いたら首がちょっと切られる、死ぬ! 助けを呼んでも、死ぬ! このままいても、死ぬ! ならケプナスは…“こおりおに・逃亡者”! 」



 ケプナスは固有魔法を発動。「鬼ごっこ」ではなく「こおりおに」なのは、捕まったことで鬼が変わるのではなく、捕まったらそこで終わりだから。

 ケプナスは念の為のシールドを発動しながら、大きな音を立てて扉を開ける。



 「リーダー! おにちゃーま! 」


 「「け、ケプナス!?」」



 2人は急いだ様子でケプナスの方に向かおうとするが、ハプとシアルの周囲にいた看護師や受付係が、シアルとハプを取り囲んだ。



 「シアル! 何が起こってるの!? 」


 「…僕にも分からないけどねー。何か、はめられたってことは間違いなさそうだよ」


 「そうだね…ケプナスは、大丈夫? 」


 「僕には判断しかねるよー…とりあえず」



 シアルはハプの手を握る。



 「え? 」


 「“停止”」



 シアルはそのままの状態で、固有魔法を発動する。



 「僕が触っている物や人は、停止中でも動けるようになるからねー。ひとまずはこれでケプナスを連れて逃げて…」



 シアルがハプの手を引いてケプナスの方へ向かおうとすると、その2人の間に、1本のメスが飛んできた。横切った瞬間に、2人は目を見開き、ゆっくりと後ろを振り返った。



 「な…んで…」



 振り返った先には、悪戯心を目に宿した少年のような笑みを作ったケミキルが、両手に大量のメスを持って立っていた。

 シアルはハプの手を離しかけるが、瞬時にその事に気がついて手をとる。



 「ん? あれぇ? シアルじゃん。久しぶりだね〜」



 シアルはハプの手を持ったままで即座にケプナスの手を握り、出口に向かって全力疾走して行く。



 「し、シアル? 」


 「リーダーにゃのです! 」



 ケプナスは体調が悪く、上手く走れないため、シアルがかつぎあげた。それから時間停止を解除し、進みながら魔術で近寄ってくる人々を押しのけ、扉を破壊して外に出た。



 「走ってくれ、ハプ! もう時間停止は解除した。ケプナスを抱いて、僕の家まで! 」


 「え? う、うん! 」



 ハプはケプナスを抱える。それから浮遊術で浮かせて、シアルの家まで全力疾走した。



 「はぁ、はぁ、はぁ…ケプナス、大丈夫? 」


 「う、気持ち悪いのです」


 「ごめんね、急に走って。シアルのベッド、ちょっと借りようか」



 ハプは、ケプナスをベッドに寝かす。ケプナスは額に汗をかいている。



 「やっぱり…ケプナス、まだ熱がある。はい、濡れタオル」


 「にゃ、にゃのです…」



 ケプナスは息を荒くしながら、寝返りを打つ。ハプはその隣に小さめの椅子を持ってきて座り、ケプナスの手を握った。

 


 「シアルも、ケプナスも、大丈夫かな…」



 それから数分、ケプナスの看病を続けた。すると、扉が開き、シアルが帰ってくる。



 「シアル! 」


 「やぁ、ハプ…久しぶりに、なかなか疲れたよー」



 疲れ果てたシアルが、片手を扉に当てて、倒れ込むようにその場に座った。



 「シアル!? 大丈夫!? 」


 「心配しなくて平気。まずはケプナスの看病してあげなよー」


 「う、うん。…さっきの人、シアルの時間停止が…」


 「後で話すよー。ケプナスは大丈夫なのかなー? 」


 「うん…ごめんね、ベッド借りてる」


 「いいよー。ケプナスも、ゆっくり休まないといけないからねー。さ、僕もお茶でも飲んでゆっくりしようかな」



 シアルは台所に向かい、お湯を沸かす。ハプは体温計を持ち、もう一度ケプナスの体温をはかる。



 「熱、下がってない…。シアル、本当にこれただの風邪なのかな? 」


 「どうだろうねー。僕は診察も何も出来ないから、そこはちょっと分からないねー」


 「他のところの病院に行くとかは出来ないの? ケプナスを治してあげたい…」


 「ツム国では、あそこ以外にあんまり大きな病院がないからねー、まぁ、行ってみる価値はあるけど…」



 シアルは地図帳を取り出し、病院の位置を調べる。

 ケプナスは疲れて、ハプの隣ですやすやと眠っていた。



 「じゃあシアル…明日くらい、病院行ける? 」


 「そうだねー。国内にあったよ。ツム国キャリフラワーズ市にある病院だ。そこなら、離れているし、安全だと思うよー。ハプの言ったように、明日にでも行こうかな」


 「良かった…ケプナス、明日お薬貰いに行こうね」



 ◇◆◇◆◇



 その日、2人はシアルの家に寝泊まりした。シアル曰く、このままだとまたいつか、襲撃される可能性があるからということらしい。

 ケプナスの症状は、酷くなっていくばかりだった。1日経つと、左手首が痙攣してきていた。痛みも感じるらしい。



 「ひだりて、痛いのです…」


 「ケプナス、大丈夫? 」


 「なのです…」


 「ハプ、ケプナス〜。準備できたから、向かうよー 」



 ◇◆◇◆◇



 ついた病院で、ケプナスは診察を受ける順番になった。その病院は、普通の病院だったが、念の為に診察室には2人も着いて入った。



 「これは…ただの風邪ではないですね、ちょっとウイルスの検査をしてみましょうか」


 「う、ういるすなのです? 」



 ケプナスは検査を受けた。検査の結果によると、ケプナスは新種のウイルスによる病気にかかっているということらしい。そのウイルスは、ケプナスの体内の血管を循環し、色々な症状を引き起こしている。

 ただのウイルスではなく、人工的に作られたもの。魔術も利用して作られているため、治すことは簡単では無い。

 左手首の脈の部分に何らかの方法でウイルスが付着し、そこから体内に入ったということらしい。その医者の診察能力により、そこまでは判明した。


 帰り道。



 「ケプナス…左手、何かされた覚え、ある…? 」


 「うー…」


 「左手かー、僕の記憶にはないなー」



 そう話していると、ケプナスが目を開ける。



 「ケプナス…左手…はんぶんこ…」


 「…左手半分こ? 」


 「ケプナス左手はんぶんこ実行犯の…みちびきて…」



 ケプナスの言葉が、脳裏を過ぎる。



『ケプナスのひだりてはんぶんこ実行犯の左手を、はんぶんこしてやらないといけないのです! 』




 「…リナ…! 」


 「にゃのです…」


 「あいつ…! 」


 「じゃあ、そのウイルスは、リナが…? 」


 「そうかもしれないねー。目的は分からないけどさー」


 「グルなの? あの人と、リナ」


 「…可能性は捨てきれない。死んでも尚ここに厄災を残すとは、全く。

 さ、行くよ。しばらくはソルビ市には戻らないでおこう。ゆぴには、あまり外に出ないようにと呼びかけておいた。ぺリィは大丈夫だ。今日は、キャリフラワーズのどこかに泊まろうかなー」



 ハプとシアル、ケプナスは、近くのホテルに泊まった。



 「シアル、あの人のこと知ってるの? 」


 「…嘘はつかない方がいいねー」


 「教えて、くれない? 」


 「…仕方ない、そうだね、あいつは…」



 シアルが話そうとすると、シアルのスマートフォンがなる。

 電話の着信音だ。



 「電話…誰かなー? 」



 裏返していたスマートフォンを表に向けると、そこには、こう書いてあった。


『ソルビ市市立総合病院』



 「あいつは…。今、わかるよ」

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