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異世界魔術物語  作者: 青空 御春
第2章︰『登場人物の1章』
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ページ2―37『それぞれの役目』

「過去公開ショーとか言うやつでは、気になることがいっぱいだったのです。というか、ショーと言っても、ほとんど語りを聞くだけで、ながーいお偉いさんの話を聞いたあとみたいで今ケプナスは気分が悪いのですよ」



 そう、過去公開ショーという名前であるが、今回のショーは『音声のみ』である。ツアーのように実際にその場にいるような臨場感を出すわけでもなく、映像を映画鑑賞のように見る訳でもない。その理由は、ナルの魔力。ナルは連続して『動揺操作』の能力を使い、常に肉体強化術を使っている。元々の魔力量の少ないナルが、これだけ魔力に負担をかければ、残りの魔力量が少なくなるのは当然だ。

 勿論、過去を見せることにも魔力は使う。それをこの場の全員に見せるとなると、大量の魔力を消耗することとなるだろう。



「ナルは、死にたくなかった、負けたくなかった。それだけなの」


「どれだけ足掻こうと、勝つのはケプナス様なのです。……ふるふる、違うのです。ケプナス様と、そのお仲間さんたちなのです!どち道同じ運命を辿るのだから、どっちでも良かったというものなのですよ! いでよ、ピコピコハンマー!! 」



 ケプナスは仁王立ちしてピコピコハンマーを出現させる。通常より少し大きめ、プラスチック製。

 ピコピコハンマーを大きく回転させ、ナルに向かって突進して行った。



「喰らうのです、我が渾身の一撃! ――スーパーピコピコハンマーフラーッシュ! 」



 ケプナスは空中で一回転し、ナルの頭をピコピコハンマーで叩く。ピコッ、という音がして、ケプナスが落ちていこうとすると、シアルがケプナスを浮遊術で浮かばせた。



「無防備にも程があるよー、あのままだと、頭からとか落ちてたんだからねー? 」



 しかし、そのケプナスの無防備で身勝手な一撃は、全員にとっての、戦闘開始の合図となった。



「アイツにばっか、いいとこ取らせるとか絶対無理ってもんよね!! 」



 ゆぴは遠距離から銃を打つ。だが、ナルは本気で死にたくないと思っているらしく、魔術攻撃をシールドで防ぎながら銃弾をほとんど避けていた。

 セレインに引き連れられた連盟員達も、周囲から必死に攻撃を続けていた。

 ゆぴは歯を食いしばり、目を細めた。



「ちっ、ちっ、ちぃ…! なんで避けんのよ、避けんな! 」


「銃弾に自ら当たりに行こうとするMなんて、ここにはいないの」



 ナルは変わらずの動きで避ける。偶に武器を投げたり魔術攻撃をしたりするが、防衛に必死でほとんど攻撃はできていない。



「やだもー! 当たってって言ってんでしょ! 」


「避けられるのなら、避けられないようにすればいいのでございます」



 ゆぴが狙いを定めている後ろから、セレインは声をかけてきた。



「あ、アンタ…その…」


「ええ、わたくしです。わたくしが、ゆぴ様の銃弾の速度を加速させます。いくらナルでも、最高速度の銃弾が連続して飛んできたとなれば、避けることはできないでしょう」


「…そー、よね。そうそう。なら、お願いするわ」



 ゆぴは気まずそうに眉をしかめ、銃を構えた。セレインはその近くに手をかざそうとするが、1度止まって、言った。



「すみませんでした、ゆぴ様。わたくしは少し…取り乱していたようです。お怒りなのは当然、怪しまれるのも当然でございます。ですが…どうかわたくしを信じて、その顔をこちらに向けてくださりませんか? 」



 ゆぴは歯を食いしばる。悪いのは自分だと考えているのに、セレインはセレインが悪いと言っている。謝りたいけど、出てきた言葉は。



「…馬鹿」


「馬鹿でございますか!? な、何故そう思われたのでしょう? 」


「何よ…」



 ゆぴはプイ、と反対側を向いた。頬を赤らめている。



「馬鹿! 」


わたくしが謝ったのがいけなかったのでございますか? いいえ、謝ってはいませんが…。まだお怒りなのですか?わたくしは非常識なことを言った覚えはないのですが、何故馬鹿と…」


「ご、ごご、ごめんって言ってるでしょ! 」


「言っていないのでございます! わたくしは貴方の口から謝罪の言葉を聞いたのは、今回初めてなのですが! しかし、何故先程まで馬鹿と…まさか、謝ることを負けと感じてしまって、謝ることが出来ず、わたくしに罵倒の言葉を浴びせたということなのでしょうか? ゆぴ様もまだまだ子ど…」


「うっさいわね! 撃つわよ! 」



 ゆぴは顔を真っ赤にして引き金を引いた。セレインは焦った様子でふらつきながら手をかざした。



「急すぎます! “ 加速 ”! 」



 銃弾は急激にスピードが上がり、それを目で捉えられなかったナルは、腕の1部を撃ち抜かれた。



「使徒の救援を…呼ぶべきなの」



 ゆぴは1度銃口を下げ、セレインの方を見る。



「共闘したんだから、もう仲直りっしょ! この話終わり、はい終わり! 」


「そ…そうでございます、ね」



 ◇◆◇◆◇



 ナルが救援を呼ぶと、数分後に、その場に急に数名の使徒が現れた。



「…増援。全く、自分は移動せずに対象の物や人だけを瞬間移動テレポートさせる特殊系瞬間移動テレポートか。友人の仕業と考えて、間違いなさそうだねー」



 シアルは使徒に近づいて、順に倒して行きながら話す。



「これで、エイにも仕事が出来た。攻撃しなくても、みんなに飛んでくる攻撃をエイが防げばいいんだ。防衛はエイに任せて、リーダーさん」


「了解だよー。攻撃は僕に任せてね、エイ。倒されても倒されても転移してくるから、ちょーっと大変な作業になりそうだねー。

 みんなー、使徒は気にしなくていいよー。僕とエイで、押さえておくからさー」



 ナルがダガーを床に投げ捨てる。



「なんでお前らなの…本気でやられたら使徒瞬殺なの」



 ◇◆◇◆◇



「ぺリィ、傷は大丈夫? 治すよ…」



 ハプが負傷者の手当てに部屋を駆け回り、ステージの近くに来た時にぺリィに声をかけた。



「これくらいは平気だよ、僕はこの際、無駄に戦闘に参加することなく、作戦を立てる方がチームに貢献できそうな気がしたからね」


「そうかも…でもねでもね! そうだとしても、穂羽は傷を治したいんです。傷ついた仲間を見るのって、そんなに好きじゃないの。治療魔法って便利だよね。擦りむいたりしたら、水で流さないといけないじゃない? バイキンが入らないように。でもでも、水って痛いじゃない! そんなことせずに、傷治せるもんね! 」



 そう言いながら、ぺリィの傷を治し出すハプ。ぺリィは不思議そうな目でハプを見る。



「この状況で良く、その言葉やその考えが浮かんだものだよね。周りの思考に流されず、常に自分のペースで行動する。考えがズレていて、鈍感であり、純粋で、どんな色にも染まりやすい。これを、『ど天然』って言うのかな? 」


「違うよ、天然って言うのは、自然。自然に取れた水とかって、天然水って言うでしょ! だから多分、天然って自然だと思うの! 」


「…これを、『ど天然』って言うんだね。

 で、ハプ。君は戦いには行かなくて大丈夫なのかな?」



 ハプはぺリィの治療を終えて、頷く。



「うん、これで一通り回復は終わったけど、戦わないの。穂羽ね、とってもいい作戦思いついちゃった。だからぺリィは考えなくていいの。そのために、穂羽の魔力がいっぱい必要だから、溜めておくの」


「作戦…なるほど、その作戦、聞かせていただいても構わないかな? 」



 ◇◆◇◆◇



 作戦を練るハプとぺリィ。

 共闘するセレインとゆぴ。

 使徒を食い止めるシアルとエイ。

 そして、ナルと直接的に戦うケプナス、連盟員達。


 それぞれ違った役目を果たし、ナル討伐に、着々と近づいていた。

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