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異世界魔術物語  作者: 青空 御春
第2章︰『登場人物の1章』
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ページ2―35『友情という包み込み』

 差し伸べられた手と相手の姿を交互に見つめながら、呆然としていた。

 あまりにも急すぎる出来事に頭の理解が追いつかず、焦った。

 隣を見ると、ナルも同じように焦っていた。



「あなたは……」



 騒めく沢山の大人、声をかけられた私たち。

 こんなにも大勢の人がいながら、1番初めに声を上げたのは、最年少のセレインだった。



「あなたは……何をするために、ここに来たんですか? お迎えなんて頼んでいないのに、どうしてお迎えに来たんですか? 」



 怯えてはいたが、しっかりとした態度だった。引け目を取らないよう、決して油断することなく、常に相手を警戒し。



「何もないのなら、おひきとり願います。私たちは、大切なパーティーをしているんです。これは、私たちのおうちの、大切な行事なんです。じゃまをすることは、いけないことです」


「とても、勇敢なお嬢様ですね。大丈夫、この方々はキャリソン家、またはその関係者。我々魔術神秘教団が、危害を加えるはずもありません」



 口元には笑みが浮かんでいて、何を考えているのかわからなかった。セレインは相手を睨みつけていた。


 私は、怖いと思っていた。正直急すぎて、理解できなかったし。

 抵抗したら殺されるかもしれないとも思ったから、抵抗することは無かった。

 もし殺されたら、せっかくのナルとの約束も全て無しになってしまう。

 やっとこれからナルとずっと一緒にいられるようになるのに、ここで死んでしまっては元も子も無い。


 そもそも、魔術神秘教団とはなんなのか。それが疑問で仕方ない。

 急に現れて急に迎えに来たと言われて、危害を加えないと言われても信頼出来るはずがない。

 考えていると、思っていることを、シアルが言い出した。


 武器を相手に突き立てて、ここに来た目的と、何をすることでここから帰ってくれるのかどうか。

 もし無意味な訪問なのならば、今すぐに帰還すること。それが出来ない場合、自分が対応する、と。



「素敵。貴方はとても勇敢で、行動力がある。この急な状況で即座に動揺を抑え、私に対して対応した。貴重な人材ですね」


「質問に答えてない! 僕が聞いたのは、僕に対する評価じゃない。何がしたい。何をするためにここにきた? 目的を告げろ! 」



 それだけ言うと、ローブの女性は、やっと自分の目的を話し始めた。

「確かに、何も言わずに理解してもらおうなんて、少しわがままがすぎましたね」と続けて。


 相手の目的は、『第7の導き手』を迎えに来ること。話によると、相手は『魔術神秘教団』という組織の一員らしい。

 聞かされたことによると、私は『時間の観望者―未来―』としての素質を持っている。

 今まで固有魔法だと考えていたそれは、固有特権という、魔術神から与えられた能力だったらしい。



「なら……」



 ナルが口を開いた。



「なら、ナルには固有魔法も、固有能力も無いの? この過去を見る力が固有特権なのだとすれば、ナルは……」


「それはきっと、貴方に真の生き甲斐がなかったからなのでしょう。これから生き甲斐を見つけていけば、その生き甲斐にそった固有魔法が生まれると、私は思いますよ」


「…リナは、どうしたいの? 」



 ナルはリナに聞いた。ナルの選択は、私にかかっている。


 私は、相手のことが計り知れなかった。誰もがそうだ。魔術神秘教団というのはつまり、宗教だ。この世界の全ての人は、ニート・スペリクルを信仰しているはず。


 つまり、キャリソン家も。


 そんな私が、そんな宗教に入ることなんて、両親が許すはずがない。

 でも、それと同時に、思った。

 この人は、周りの意見に囚われず、新たな可能性を見つけ出そうとしている。

「魔術神」という、新たな可能性を。


 素晴らしい。



「魔術神秘教団は、殆どの人々は知り得ることのない集団。『目的』を果たしてくれるのならば、なんだってしていい自由の空間。

 でもその分、対抗者も現れるのです。

 ――自由があれば、不自由もある。それはどちらも同じでしょう。

 でも、自由と不自由、つまり。

 希望と絶望が変化する時に、より大きな変化を楽しめる『人生』を歩めるのは、どちらにつくことだと、貴方は思いますか? 」



 変わらずの表情で両手を広げ、リナに問いかける。


 ずる賢い人だ。


 そんなの、そっちに決まってるじゃないか。



「1つ、条件があるわぁ」


「何なりと」


「貴方の力を証明しなさい。ここにいる、私とナルを除いた全員と、本気の決闘をしなさい。それで勝つことが出来たのなら、私はあなたにつきましょう。

 ――殺しても、構わないわぁ」



 薄笑いを浮かべたことが、それを許可した証明だった。それを見た参加者達も、戦闘態勢に入った。

 シアル、セレインもだ。



「少しばかり、気が引けますね。しかし、それだけでまた、導き手が1枠埋まるのであれば。了承しましょう。全く、キャリソン家は、葬る対象には入っていないというのに」



 次の瞬間から、戦闘が始まった。

 私は、とんでもない人と出会ってしまったのだと確信した。

 この人とは、絶対に戦いたくないと。

 その人は、その場からは動いていなかった。まず手を開いて前に突き出すと、1番遠くに離れている数名が、跡形もなく消え去った。

 しかしそれはよく見ると、存在を消失させたという訳では無い。

 見えないくらい粉々に、一瞬で砕き割られた。


 その場にいた人々は動揺した。もちろん、リナも、ナルも。

 シアルも、セレインも。シアルは杖の真ん中に着いている水色の宝石を掴んだ。



「《停止》! 」



 すると周りの人、物、生物は全て灰色になり、動きが無くなった。

 シアルと、リナとナル。それから、ローブの女性を除いて。



「なんで……効かないの!? 」


「タイミングは完璧。戦術も素晴らしい。貴方に足りなかったのは、相手の力量を見計らう洞察力でしょうかね」


「余計なお世話だよ! 」


「そうですか、それは失礼致しました。ですが、貴方の能力は私には効きません。貴方の従兄弟である、この方々にも」



 リナはその場で立ち尽くして、見守っていた。自分でこの争いを産んでおきながら、呆然と立ち尽くすことしかできなかった。


 灰色の空間は無くなり、シアルはもう一度杖を向けた。女性はシアルには攻撃をすることが無く、浮遊術で浮かび上がった。



「時間が無いので、簡潔に」



 全方位から金色の光線が飛び交った。その全てを操作しているのは、空に浮かび上がった女性。


 もう、いい。力は十分以上に証明された。

 止めようかな、とも思ったけど、見ていることを選択した。

 高レベルのその戦闘を。


 光線が当たった場所には火が付いて、ある程度燃え広がったところで、女性は会場全体に適度な風を吹かせる。火は燃え広がっていき、やがてその会場を包み込む炎となる。



「お父様、お母様……! 」



 シアルがセレインを守りながら外に連れ出そうとすると、セレインは炎の中に手を伸ばす。



「セレイン、生きてくれ。お願いだから! こいつのことを、こいつらのことを、外に伝えてくれ。君ならできる、お願いだ。僕が今から一斉に、炎を退ける。僕の力量では、それは一瞬だから。その間に、走って。そこの出口だけを見て、走れ。後ろを振り返るな、僕を見るな。

 さぁ、行って……! 」



 セレインは涙を流し、汗を流しながら、炎の中を駆け抜けて行っていた。

 それから先は、セレインを見ていない。でも、炎が落ち着いてきた時に。外から聞こえてきた叫び声は、今でも鮮明に覚えている。

 泣き声混じりの、叫び声。



「返して、返してください! 父様を返して、母様を返して! 叔父様も叔母様も、みんな返して! 名前は覚えました、魔術神秘教団。いつか連れ戻す。私が連れ戻す。まだ信じていますよ、リナ様、ナル様……! いつか私が、迎えに行きます。それまで、待っていてください! 」



 私が持ち出した状況なのに、セレインはそう言った。私を信じていた。


 ああ、なんて愚かなんだ。



「『友人』と言いましたね。貴方は使徒の、導き手の友人であって。

 私に、世界一憎まれている人間です」

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― 新着の感想 ―
[良い点] キャリソン家の過去が明かされたことにより、これまでの伏線が回収された気がします。シアルが1人で魔術神秘教団に立ち向かおうとする理由もこれでやっとはっきりしましたね。緊迫した状況を上手く表現…
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