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異世界魔術物語  作者: 青空 御春
第2章︰『登場人物の1章』
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ページ2―32『道化師は嗤う』

「い゛___っ! 」

「いだいだなのでふ! 」



 2人は突き刺され、上手く声も出せない状態で、叫んだ。



「ケプナス、ゆぴ……う」



 ハプは立ち上がろうとするが、まだ傷が完全に治りきっていない。

 ナルは笑う。悪魔のように。

 ___道化師のように。



「《動揺……増幅》♪」


「あ……」



 ナルは、同じように。部屋全体を大回りして、エイ以外の全員を切り裂いた。

『ケプナスとゆぴが致命傷を負った』

 この事実によって動揺した皆の動揺を、ナルが《動揺感知》で感知して、それを《動揺増幅》で大きくする。

 魔術師として未熟で、身体能力も、特別高い訳では無いナルだが。

 この『動揺を増幅させる能力』によって、圧倒的有利な状況を作り出すことができていた。

 今までもそうだ。今まで、過去の声を見せた後、その『お客様』が全員退場させられたのも。その能力があってこそ。

 でも。



 「ナルの能力が通じない、2人目を見つけたの……はぁ。困っちゃうの」



 エイは、感情を『知らない』から、動揺なんてすることがない。知らないから、疑問に思うことはあれど、動揺することなどない。

 心のどこにも元がないなら、それを膨らますことだってできるわけが無い。



 「きもちわるーいの、天敵なの。思い出すから、やめて欲しいの」


 「何を言ってるのか分からない、エイは誰とも違う。エイはエイ。それだけ、何回も、そう言ってるはず。

 ケプナス、ゆぴ、やっぱりエイが戦った方が良さそう。休んでて、お願い」



 エイは右手に、杖を出現させる。

 それから目を細め、杖の十字架の先をナルに向かって突き付ける。



「エイ、本気で行くから___」


「いいの? ここは、4階なの」



 ナルは背後にある『4階 パーティーホール』と書いてある表示を指さす。

 そう、ここは4階だ。

 エイが本気で戦うと、この建物は崩れ去るだろう。

 そうなると、ナルだけではなく、この場にいる全員も瓦礫に押し潰されて重症、運が悪ければ死亡する可能性もある。



「壊さない方法だって…! 」


「あるの? 本当に? いわば『封印を解かれた』ばかりの状態のお前が、建物や味方にだけ害を与えずに、ナルだけに致命傷を負わせるレベルの大魔法を打てるの? それは幾らなんでも、不可能に近いというものなの」



 エイはそれを聞いて、無言で杖の先をもう一度ナルに向ける。その先に複数個の魔法陣が平行に並び、その陣の中心を通って細い金色の光線が発射される。

 その光は真っ直ぐにナルに向かい、ナルは危機を感じてシールドを発動する。

 攻撃はシールドを容易く貫通し、ナルに直撃した。



「くっ……! なんなの、お前! 」


「大魔法を使ったら大変になる。なら、範囲の小さい魔法を使えばいい。エイ、それくらいはわかるよ。エイ、知らないことは多いけど、知ってることもあるし、考えれるんだよ」


「でももし、ナルが避けたら? このレベルだと、壁に激突したら、壁は崩れてしまうの」


「そんなことないもん。エイだって、まだ抑えれるし……」



 エイがそう言って魔法陣を通して壁に細い光線を当てると、壁に当たる直前に大爆発し、壁は崩れていった。



「なんで……エイだって、できるもん」



 エイはそう言って、もう1度壁に攻撃をぶつけようとする。

 それを見て、背後からシアルがゆっくりと声をかけた。



「エイ……、ちょっと、落ち着こうかなー。もういいよ、僕が相手をする」


「でも、キミはケガ、してるんでしょ? ケガをしてたら、痛いんでしょ? それで、動くと、大変なんでしょ? なら、休んでた方がいいよ」


「……言いたくはないんだけどさー、ナルの言ってること、一応筋が通ってるんだよねー。君は、いわば強すぎるんだよ。君は強すぎるけど、その力を制御できない。わかってるんだろう? 」



 シアルは立ち上がり、前に進もうとするが、その体はフラフラと倒れかけていた。



「シアル、危ないよ! シアルは行かない方がいい、いい加減にやめましょうよ! 自己犠牲なんて……」



 ハプは自身に回復魔法をかけながら、シアルに向かって言った。



「穂羽なら、もう結構回復もした。ここはシアルじゃなくて、穂羽が行くべきなんだよ! 」



 シアルはそれを聞き、目を細めて少しハプの方に振り向く。口元は、いつものように笑っていた。



「君は、傷は回復してるよねー。なんで、傷は回復したのかなー? 」


「え? それは……回復術を使ったから、だよ? 」


「だよねー? あの致命傷を、この短時間で回復させた。つまり、それだけ魔力を使ってるよねー? 傷が治っていても、魔力が足りなければ、元も子もないはずだよねー。

 ……そっちこそ、自己犠牲の道を歩もうとしてるんじゃないかなー? 」


「そう、だけど……」



 ハプは歯を食いしばった。

 シアルは拳を握りしめた。

 2人はどちらも、仲間を傷つけたくないが為に、仲間を守りたいが為に、言い争っていた。

 そんな話をしていると、二人の間にダガーが1本飛んできた。

 その方向を見ると、呆れたような表情をしたナルが、ステージの上に立っていた。



「仲間同士の、醜い争いなんか、やめて欲しいの。お前達の争いを見たい人なんて、どこにもいないの」



 ナルは追加で投げようとしていたダガーを、元々持っていたツアーの旗に戻した。

 これにより、ナルには戦闘の意志がないことが証明されている。



「こうやって動いてるけど、ナルはもうそこまで動けないの。それは、事実なの。でもでも、殺される覚悟とかはできてないし、殺されるのはとーってもいやなの」



 それからナルはその旗をほおり投げる。するとその旗は、シルクハットに変形した。



「だから、もしシアルかハプ。どちらかがナルに襲いかかって来た場合、襲いかかって来た方の過去を、この場で全体公開なの♪ 」



 それを聞き、シアルとハプは1歩後ずさりをする。ナルは笑う。



「それは、やめて欲しいの。穂羽はちゃんと、ケプナスの『おにちゃーま』で居たいから」


「…それは、ほんとにやめて欲しいかなー。全体公開なんて、僕にとって地獄絵図でしかないからさー」



  ハプは必死に、シアルは恐怖を隠して、そう言った。



「それでいいの。でも、ここは一旦休戦。ナルも戦う気分じゃないし、お前達もかなり負傷してるの」



 ナルはシルクハットを被り、言う。



「リナは死んだ。でも、まだそこにいる。そうだとしても、リナはいないから、『時間の観望者』はナルなの。だから__」



 部屋の明かりが、一斉に消える。ナルはシルクハットを右手に持ち、一礼した。

 ナルの居るステージの中央は、スポットライトに照らされていた。

 全員の中で、その行動が、リナと重なる。



「__()()()()()()()()



 ナルは微笑み、帽子を被り直す。

 全員の中で、その笑顔が、リナと重なる。



()()()()()、お客様。

 魔術神秘教団、第7の導き手。『時間の観望者―過去―』『時間の観望者―未来―』()()、ナル・キャリソン」



 その言葉が、リナと重なる。



「始めましょう、『過去公開ショー』」



 部屋にあかりが点いて。まわりには、黒い、宇宙のような空間が広がって。



「上映します、『リナ・キャリソン&ナル・キャリソン』」

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