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異世界魔術物語  作者: 青空 御春
第2章︰『登場人物の1章』
58/100

ページ2―30『最弱最強コンビネーション』

 ケプナスは、リナにしたのと同じように。

 ナルに向かって、手を突き出した。

 ケプナスは、リナに言ったのと同じように。

 ナルに向かって、そう言った。



「牢屋にケプナスをゴミのように放り込んだこと、後悔させてやるのですから! 」


「ゴミのように放り込んだ覚えはないの 」


「例えと言うものなのです! もしや、お馬鹿さんなのですか? そうなのですか……ならラッキーなのですね、 今、君はここで! この天才的ケプナス・スルーリー様に巡り会えたのですから! そして、今、ここで、その時は来たのです! そう、今が! その時なのです! お前は幸運なのです!

 今、お前は、このような天才的ケプナス・スルーリー様と!

 戦闘を! することが! できるのですからね!」



 ケプナスはそれだけをほぼ息継ぎなしの早口で話し、その場を3回回る。



「別に、戦闘できて嬉しいとは思わないの。幸運でもなんでもないの 」



 それに対し、ナルは短い言葉で簡潔に、応える。

 ケプナスはナルの態度に不満を持つが、もう一度ナルに指を突き出し、決めゼリフのように、叫んだ。



「その態度、今すぐにひっくり返してやるのですよ! この、ケプナス様の手にかけて!

 覚悟しろ、みちびきて! 」



 そう言いながらも、突き出す左手は、強く握りしめられ、細かく震えていた。

 その叫び声を合図に、2人は戦闘体勢に入った。

 ケプナスはシャボン玉を取り出し、ナルは持っていたダガーを構える。

 ケプナスはごくんと音を立て、唾を飲み込む。

 今にも逃げ出したいと、考える気持ちと一緒に。

 今の状況は、明らかにケプナスが不利である。

 ケプナスの武器は、シャボン玉を初めとした子供用おもちゃだ。魔力を込めることはできるが、それでもおもちゃであることに変化はない。

 対してナルは、二刀流ダガー、つまり、対人用ナイフだ。一般的に呼ばれる『ナイフ』は、多目的切断具である。そして、『ダガーナイフ』と呼ばれるそれは、対人用、つまり人と戦闘するためだけに作られたナイフだ。

 それだけではない。

 2人とも、浮遊術は使えない。

 だが、ケプナスは肉体強化術も使えない。つまり、動きは間違いなく相手の方が上手うわて。それから考える頭脳も、即座にそれを実行する力も経験も、相手の方が上手うわて。そして、その武器にも致命的な差がある。

 絶望的な状況だ。


 状況だとしても。



「ケプナス様の手にかかれば、ちょちょいのちょいなのです! 」



 ケプナスは、挫けなかった。

 逃げずに、足掻いた。

 振り返れば襲いかかってくる絶望ではなく、前にある希望の未来だけを見つめていた。

 それこそが、ケプナスの長所、ケプナスの強さであった。



「ちょちょいのちょいされないように、注意しておくの」



 そう言ってナルは真顔で、上空からダガーを構えて飛びかかってきた。



「びびび、びっくりドッキリなのですよ! 」



 目を見開いたケプナスの腕に、円形をしたプラスチックでできたおもちゃの盾が現れる。

 その盾でなんとか斬撃を防ぐが、その重みでケプナスは思いっきり尻もちをついた。



「は、はーん! そーんな攻撃が、ケプナスに当たると思うのです? 馬鹿なのです!? 」



 斬撃が自分に当たっていないことに気づくや否や、ナルを煽った。

 しかしその直後、すぐ隣をナルのダガーがよぎり、悲鳴をあげる。



「煽る暇があるなら、攻撃すればいいと思うの。そうしないと、永久に勝負は決まらないの」


「そそそそ、そんなことわかってるのです! べーだ!

 くらえ! 我が秘伝のシャボン玉! 」



 ケプナスは大きく口を開けて息を吸い込み、ありったけの力で吹いた。しかし、あまりに強い力で息を吹き込みすぎたため、シャボン玉の液が弾け飛び、シャボン玉が作られることは無かった。



「な、なんと! 」


「……」



 ナルはケプナスを見て、あまりのドジさに固まっていた。その2人の争いの様子を見ながら、後ろで、ゆぴがハプに話しかける。



「ねぇ、こいつ。ケプナスさ、アタシが増援に入った方がいいと思う? 」


「でも、ゆぴも負傷して……」


「けどさぁ、このままだと絶対あいつが1番の負傷者になるわよ。あのドジ馬鹿天然ボケ自意識過剰のチビ。ね? 」



 ゆぴは目をつむってそっぽを向いて、ケプナスを守りたいという気持ちがバレないように前髪をいつもより多く顔に下ろした。



「そう、だけど……」


「でしょ?それにアタシなら遠距離攻撃とかもできるし、座って安静にしたまま、とかも出来んのよね。」


「そっか、そうだよね。うん、わかった。本当は、穂羽も助けた方がいいんじゃないかなーって思うけど、今の状況だと足でまといになるか。なら穂羽はここで、自分を少しづつでも回復させとく。お願い、ゆぴ」



 ハプは右手をゆぴの方に差し出す。



「な、何よ。別に、手なんか握んなくてもいいっしょ」



 ゆぴはそっぽを向いて、銃を取り出す。

 それから丁度固まっているナルに向けて、銃を乱射した。乱射と言っても、的が避けない限り、その弾は全て的に命中するのだが。



「スキあり。アンタのドジに救われたわ、ケプナス。アタシが弱っちいアンタを手助けしてやるわ、感謝なさい 」


「別に手助けなんか要らなかったのですが、まぁ仕方なーく感謝してやるとするのです! 」



 そう言ってケプナスは、ゆぴの動きを見て右へ左へと動き、弾をかわす。

 2人の動きは、ピッタリ合っていた。ゆぴはケプナスのことを気にすることなく銃を撃ちまくるのに、ケプナスは自然とそれを全て避けて、相手に攻撃をしていた。

 ゆぴは、上手くケプナスが隙を作った時に、集中的にナルに攻撃をしていた。

『似た者同士』の2人は、初めて出会った時から、息がピッタリだった。

 常に漫才をしているような会話で、言い合いはしていても、仲良くじゃれあっていたのだ。

『友達』と呼べる人と出会ったことのなかった人見知りのゆぴと、誰にでも仲良く接することの出来る明るいケプナス。正反対のように見えるが、2人の根は同じ。

 その凹凸おうとつが上手く噛み合い、2人は最強の最高の友達となったのだ。

 そして、それは戦闘でも同じこと。

 ケプナスは動けるが、短距離攻撃が多く、挑発系。

 ゆぴは動けないが、遠距離攻撃が得意で、攻撃系。

 2人は、魔術師としては最弱クラス。しかし、それは1人なら。お互いに足りていない部分を足しあって、最強のコンビネーションを編み出していたのだった。



「ケプナス、右! 」


「右なのですね! 」



 そう言いながらも、ケプナスは左へ避ける。

 しかし、ゆぴはケプナスが避けたのと反対の方向に向かって、銃を撃っていた。

 ゆぴはウインクして、銃をおろす。



「アンタが馬鹿でよかったわ。右と左を理解してるようじゃ、今頃アンタの腹に穴が空いてるわよ」


「まさか、こっちは左だったのですか! ゆぴがケプナスを理解していて助かったのです。

 まぁ、主人のことを理解してこその、配下なのですからね! 」



 ケプナスは自慢げに、ピコピコハンマーを取り出し、構える。

 ゆぴはそれを聞いて鼻で笑い、投げナイフを取りだした。



「アタシじゃないわ、アンタがアタシの部下になんのよ! 」



 ゆぴはそのナイフを天井に向かって投げた。すると、それはナルのすぐそばに落ちる。



「全く……変な茶番はよして欲しいの。

 弱いくせに」



 ナルは奥歯を噛み締めた。



「そーよ、アタシらは弱い。かなり無茶苦茶弱い 」


「まあ、ケプナス様は天才なのですが、確かにゆぴは弱いのです 」


「こいつの自慢話は置いといて、それは事実なの。でもね 」


「最強のケプナス様がよわよわゆぴをカバーして」


「じゃなくて、お互いに無理なところ助け合って、最弱のコンビを、最強のコンビにしてんのよ」



 ケプナスは威張り、ゆぴも笑う。

 ケプナスはもう一度、ナルに指を突き立てる。その手は、もう震えてはいなかった。



「アタシらは、最弱で最強のコンビネーションなの。弱いのに意地張って、仲間を切り捨ててでも1人で戦う、アンタと違ってさ」

 

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