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異世界魔術物語  作者: 青空 御春
第1章︰『動き出す1章』
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ページ4「浮遊術習得」

「おいしー! 美味しいおいしい! どこかの誰かさんの料理とは大違いの美味しさだよ!」



「どこかの誰かさんと比べられるなんて心外だなぁ。比べ物にもならないよ」



 リーダーこと、シアルキャリソンに出してもらった朝食を、次から次へとほうばっていくハプ。あったばかりだが2人はどこかの誰かさんの料理を通じて仲良くなることが出来た。



「まあ、ケプナスに比べたらまだまだなのですけど、ある程度の腕前はあるのですね? リーダー。」



「心外だなぁ」



 恐らく悔しがりながら、ケプナスもシアルの料理を食べている。



「はぁ、美味しかった。ご馳走様でした!」



「ごちそーさまなのです!」



「えっと、片付けないと...…シアル、どこまで運んだらいい?」



 そう言いながらハプは自分の食べた食器をトレーに乗せて持った。



「あ、運んでくれるの? なら梯子の上の台所にお願い出来る?」



「持ちながら? えっと、『浮遊術』? どうやるか、教えて貰ってもいい?」



 先程シアルが行っていた、浮遊術というものを使えば梯子を足だけで登れることをハプは知っている。しかし、やり方が分からない。折角だから魔法も使ってみたいし、これは絶好の機会だ。



「あ、そっか。記憶喪失なんだったね。浮遊術なんて基本中の基本だから、ハプならすぐにできると思うよ」



「基本中の基本? そうなんだね? じゃあ、ほわすぐにできるかな。教えて、教えて!」



「いいよ、ハプならすぐに覚えるだろうし。まず1から教えた方がいいかなー。まずね、魔術師には体内に魔力っていうものがあるんだ。だから、その体内にある魔力を1箇所に集中させ、『正しいルート』を通って体外に放出する。それが基本の魔力の使い方。実践するね。」



 そうしてシアルは目を(つむ)り、手を組んだ。そして数秒経ったと思いきや、ぶあっ!とシアルの周りを風が取り巻き、シアルが宙に浮いた。



「す、凄い...…」



「凄くないよー。これは基本中の基本。大抵の人はできるよー。チームソルビ市でもできない人1人しかいないしね。


 で、体外に放出した魔力を、体の周りに風のように纏わせるんだよ」



 えっと、まずは魔力を集中させて…...ルートを通ってと。体外に放出して...…



「わぁっ!!」



 ハプが魔力を体外に放出させると、その場で炎が出て、一直線に前へ進んで行って壁の一部を破壊した。



「ご、ごめんなさい...…」



 破壊された壁を見てハプは言った。シアルは壊れた壁へと向かっていき、ヒョイっと指揮をするように壁を直した。



「大丈夫大丈夫、記憶喪失なんでしょ? これくらいなんてことないよ。チームの中には、初めての時魔力を一点に集めることからできない人もいたからね。」



 それを聞いたケプナスは一瞬ビクッとなったが、すぐになおった。



「魔力を操る上で1番大切なことは、想像力。しっかりと使う魔法について想像することが、1番大切。浮遊術を使う時は目を瞑って、自分が優雅に空を飛んでいる状況を想像する。ほら、やってみてー。」



 言われるがまま、ハプは自分が空を飛んでいる姿を想像した。


 青い空の下、天使のような羽の生えたハプが、くるっとまわってすっと飛んで、空中で停止してキラキラとした光を出しながら優雅に空を飛ぶ。



「きらきらー、ひらー、ひらひららー。くるんくるん、ふわわーん。」



「...…できたかな?」



 フワッ!



「きゃぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁあ!!!!」



 そう考えているうちに、ハプは宙に浮いていた。



「うん、習得が早いねー。さすがハプ。未だに全然飛べない人とは大違いだねー。」



「お、おおおおおおおおおおにちゃーま、飛べるのです?! いくらなんでも早いのです!」



「浮遊術の習得なんてこんなものだよー? ケプナス」



 いつものようによく分からないポーズを取りながら喋るケプナスに、爽やかな笑顔を浮かべながらシアルは言った。



「君以外はね」



「ンなっ! そ、そんなことないのです! この天!才!的!ケプナススルーリーは直ぐに習得できるのです!」



 片目を抑えてクルクルしながら、ケプナスは言った。それをシアルは爽やかな笑顔で見つめ続ける。


 そしてハプは決別の目で見つめる。



「ふふ、ケプナス。大丈夫だよ。それでハプ、それを使って上に食器を持って行ってくれる?」



「あ、そっか。うん、勿論」



 そうしてハプは先程習得した浮遊術を使って、梯子を登って行った。



「…...わぁ、ここにも時計ある...…。台所、ここかな? 置いておけばいいんだよね...…」



 そう言って食器を置いて下に降りようとしたハプだが、台所に食器が置かれた状態でそのまま放置しておくことがどうも気に食わない。



「…...むぅぅ、大丈夫だよ、大丈夫。シアルは置いててって言ってた。そう、置いておけば、シアルが片付けてくれる...…」



 そう言ってまたもや下に降りようと梯子に足をかけたが、やはり気になって台所の方へ行く。



「もう、無理! 置かれた食器を見て洗わないなんて出来るわけないでしょ! よし、洗おう! 洗剤あるね、スポンジあるね。水道あるね。よぉし、片付けるぞ!」



 そう言ってハプはスポンジに洗剤をつけて、次々に食器を洗って行った。



「早く降りなきゃ心配されるよね、速攻で終わらせよう!」



 そう言ってハプは次々に高速で食器を洗い、目にも止まらぬ速さでタオルを動かし食器を拭いて行った。(※この間1分)



「シアルー。置いてきて洗って来たよー。」



「洗って…...? そこまでしなくていいのに!というか早くないー?」



「ごめんね、もうああいうの見たら洗わないとやってられなくて...…」



 もじもじしながらハプはそう言った。今までずっと1人で家事をこなしてきたため、ハプは家事が大好きで、とても得意。



「いや、構わないよー。普通に助かるしねー。ありがとう、ハプ」


 シアルは変わらぬ笑顔でハプにお礼の言葉を言った。


 ……うん。優しそうなリーダーで良かった。


 ハプは食事と魔法のお礼を言いながら、そう心の中でつぶやいていた。



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