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異世界魔術物語  作者: 青空 御春
第2章︰『登場人物の1章』
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ページ2―12『案内人は嗤う』

「セレインちゃん、こっちであってる?」


「そこの突き当たりの角を右へ曲がって。それから1つ目の角を左に曲がるとかなり長い廊下があると思います。そこを進んでいくと、本部にあるような牢屋があります。

 ...しかし、そんなにすんなりと行けるとは思いません。途中で使徒が待ち伏せしているでしょう。」


「フゥ...もうすぐケプナスを助けられるわね、待ってなさいケプナス。あたしがアンタを助け出してやるんだから。」



 ハプとゆぴはセレインの道案内を受け、ケプナスの囚われている牢屋に向かっていた。

 ハプの心にはもう『緊張』などという言葉はなかった。ただただケプナスを助けたい、それだけで心を埋めつくしていた。



 ――もう、目の前で大切な人を失いたくないから



 それからも3人は歩き、歩き、歩いた。



「...この廊下、本当に長いんだね、セレインちゃん。外見だと、こんなに長いように見えなかったのに、これもなにか空間魔法を利用してるの?

 ...ちょっと、疲れちゃった。」



 しばらく歩き続けるが、セレインの言う突き当たりは見当たらなかった。隣では、ゆぴもブツブツ呟いていた。



「早くあいつを助けなきゃなんないのに、なんなのよ...。これじゃ永遠に続いてるみたいじゃないの、疲れるわよ。あたしはお散歩をしに来たわけじゃないってのに...。

 ...ねぇ、連盟長様々よ、アンタさ、アイツらと従兄弟って言ったわよね?」



 ゆぴは俯いて呟いて、顔をあげると直ぐにセレインを睨みつけた。セレインは一瞬驚いたような表情をし、ゆっくりと頷く。

 ハプは状況を理解し、咄嗟にゆぴの前に立つ。



「ゆぴ、それは違うよ!セレインちゃんがほわたちをはめるわけないじゃない!きっと、きっと、魔術神秘教団が何かしたんだよ!」



 ハプは首を振り、おどおどしながらも必死にゆぴに訴えかける。ゆぴはそれに反撃するように、1歩を大きく踏み出してハプに言う。



「出会って1日もたってないやつを、よくもまあそんなに信用できたものよね!ほんとに、平和で羨ましいことよね!

 アンタのその選択で、誰かが死ぬかもしれないのに!」


「――あ。」



 ハプはそれを聞き、少しふらついた。口からは言葉なんて出てこなかった。



 ――穂羽ちゃんはいいよね、なんでもお話で解決すると思ってるんだから。



 ハプの脳裏を、記憶が過ぎる。



「これは、遊びじゃないのよ。」


「――」


「何でもかんでも、ドラマみたいにいいように行くわけじゃないのよ。」


「やめ...。」



 ハプは頭を抱えて、ゆっくりと屈む。



「────現実を見なさいよ。」


「ご、ごめん、ごめなさ...ごめんなさい...。」


「...ハプ!?」



 ハプは頭を抱えて、屈みこみ、呻くように訴える。

 ゆぴは一瞬反応するが、1歩を踏み出すのを躊躇した。セレインはハプの元にかがみ、背中に手を置く。

 ゆぴは俯き、呟く。



「...あたしのせいじゃないから。あたしはまだ、アンタを疑ってるから。」


「まだ言うのですか。なぜわたくしが得体の知れない連中と協力すると?想像するだけで気分が悪くなります。」


「そう簡単に信用とか出来ないから。キャリソン家のヤツらには裏があるのが基本なのよ、多分...だけど。」



 セレインはゆぴがハプの方へ向かわなかったことで怒り、ゆぴに視線を向ける。ゆぴは目を逸らしながらもセレインに反撃する。



「...喧嘩は、駄目だよ。意見がまとまったら来て。ほわ、先にケプナスを助けに行ってくるから...。」



 そう言って、ハプは悲しそうな顔で立ち上がり、奥に進んで行った。


 これは、ハプなりの気遣いでもあった。

 ゆぴとセレインに迷惑をかけたくなくて、ただひたすらに歩き続けた。



「...どうしてかな、ずっとずーっと歩いてるのに、ずっとずーっと突き当たりが見えない。...セレインちゃんは、絶対何もしないもん。これは絶対、魔術神秘教団の仕業だもん...。

 ケプナス、待っててね、絶対に、助けるから。死なせたり...しないから。」



 ハプが息切れして俯く。それから顔をあげると、そこに廊下はなかった。

 そこは、長い長い廊下ではなく、無限に広がる、宇宙のような空間だった。その空間の中央で、ハプは白い椅子に座っていた。

 周りを見渡すが、やはりその空間に終わりはないように見える。

 そして椅子から立ち上がると、床はないのに、立つ事ができた。



「...ここ、何かな...?も、もしかして箱檻...みたいなやつかな、色違い、みたいなのがあるのかも!なら、ここにケプナスが、いるのかも...。探さなきゃ、ケプナス、ケプナスー!ほわ、来たよ!ケプナス、いるならお返事して!ほわ、ケプナスを助けに来たよ!」



 しかし、ケプナスから返事はない。



「...もしかして、エイがいたりするの?それならつんつんしないと。

 うーん、でも、エイもいない。

 ならならっ、またリナちゃんだね!変なイタズラしないでよ!マジックも面白いし、ショーも見てあげたいんだけど、それはケプナスを助けてからだから!

 ちょっとせっかちすぎるとほわは思います!」



 ハプはこの空間がリナによって生成されたものだと考え、そこにはいないリナに呼びかける。

 しかし返事はない。当然だ。


 そこにリナはいないのだから。



「ケプナスーーっ!エイーーーっ!リナちゃーんっ!誰でもいいから、お返事をして!無視はね、喧嘩になることが多いんだから!やめた方がいいんだよ!」




 ハプがそう叫ぶと、その空間の一部が揺れた。その揺れた部分が波紋のようになって、その中心から1人、女性が出てくる。

 女性は片手に三角形のライト付きの旗を持ち、その光で空間を照らしながらハプの方へ近寄ってくる。



「席にー着いて!」


「えっ、う、うん?」



 女性が掛け声をかける。ハプは不思議に思い、戸惑いながらも椅子に座り直す。

 それから相手の顔を見上げる。

 青が多めの薄紫色の髪で、耳の上あたりで髪をふたつにまとめていた。髪質は天然パーマで、目の色は紫色。

 紺色のシルクハットを被って、パフォーマンサーのような服装をしていた。それから大きめのマントを羽織っており、そのマントの端と手を金具で繋げてあった。



「...リナちゃん、じゃないよね。」



 ハプは一瞬、リナかと疑いそう問う。女性は目を丸くし、首を振る。



「リナ...違う、違うの。ぜーんぜん違うの。失礼なやつなの。」



 ハプが見つめていると次の瞬間、目の前に旗の先があった。



「わっ、びっくり...。」


「初対面にその態度はどうかと思うの。全くもう、プンスカプン。」



 女性は全く同じ表情で、少し目を細めて言った。

 それから表情を作り直し、旗を掲げて笑顔で言う。



「ツアーへようこそ、なの!」



 ハプは何かと思い、「ツアー?」と聞き返す。



「そうなのそうなの。ホントは、みんなで仲良くツアーをしてもらう予定だったけど、喧嘩してたみたいだから急遽予定変更したの。

 全くもう、なんでこんなことしないといけないのかよく分からないの。」



 やけに『の』が多い喋り方で、女性は1人で喋りだす。

 初めの『ツアーへようこそ』といったセリフなどが、ハプの頭の中でリナと重なる。



「まあ、そんなことより、早く準備準備!では、参ります!」



 その服装が、ハプの頭の中でリナと重なる。

 それからこんな状況においての、ぶれない余裕着々とした態度。



「過去探検ツアーへ。」



 つまり、



「...『時間の観望者―過去―』?」



 ハプの問いに、女性が笑う。

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