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異世界魔術物語  作者: 青空 御春
第1章︰『動き出す1章』
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ページ19「大切な人 大切な居場所」

「来るのが遅くなったね、ハプも。」



本を閉じてハプの方に向き、青年は言った。ハプは困惑したような様子になった。

それを見た相手は息を飲んで、目を閉じてもう一度言った。



「あぁ、記憶喪失なんだったね。これまでは様をつけるなと言われていたからつけてないけど、つけた方が良かったかな。ハプ様。」



「───あ、ううん!そんな風に言ってもらうと、ほわびっくりしちゃうから!ハプっ、て呼んでくれたらいいよ。

それと、助けてくれてありがとう。」


「わかったよ。ハプ。」



ハプにその一言を残し、今度はレットの方向を向いた。

そして、ゆっくりとしたその口調でレットに話しかけ始めた。



「トムガノ魔術国軍。これ以上君達に勝利の風を吹かせる訳には行けないんだよ。ここからは、僕も勢力に加わらせて貰う。

それと、ゆーかゆーぴぃーがこの場にいることは少し不思議だね?君の立ち位置はそこではないはずなんだけど。

───嗚呼、成程。君は何らかの交渉によって此方側に寝返ったわけだ。戦力増大には僕も歓喜の言葉をあげなければならないね。

これ程の戦力差がついたんだ。こちとらそう易々と負けられるものでは無いね。

シアル様、僕は一般兵の相手をさせてもらうよ。ハプはゆーかゆーぴぃーの周りを着いて回り、回復と護衛をお願いしたい。ゆーかゆーぴぃーは上空からのレットマジシャン射撃をお願いする。あくまでも射撃以外は駄目だからね。」



彼は、ずっとゆっくりとした落ち着いた口調、真顔で全体に指揮をした。それから一般兵の方に向かって走りながら、振り返らずに言った。



「嗚呼、シアル様は地上での攻撃を。どちらも上空、どちらも地上という状況は避けて頂きたいね。」



それを聞いて、シアルはニコッと笑って頷いた。ハプは感心したような目で、走り去っていく青年を見つめていた。



「シアル、あの人誰?すっごく

落ち着いてて、凄いね。チームソルビ市の人...だよね。」



ハプはシアルに問いかけた。



「うん、そうだね。彼はチームソルビ市の一員。副リーダー兼指揮官だ。名前はペリィ・スリータ。星3なんだけどね。洞察力と判断力、理解力を評価して副リーダーに任命したんだ。その時ケプナスがなんで自分じゃないのかってペリィに逆ギレしてたんだよー?」



シアルはクスクス笑ってハプに言って、早速レットに攻撃を仕掛けた。

それを見たゆぴも銃を構えて、ハプと一緒に空中に浮かび、狙撃を始めた。

初めは1つの銃だけで攻撃をしていたが、それではレットは、その素早い反射神経で全ての銃弾を避けた。



「チッ!!!なーんーなーのーよー!無駄に速いのよ!ちょこまかちょこまかとぉ!めんどくさいのよ!

はぁ、なんで銃弾をだけなのよぉ!」



そう言ってゆぴは自分の周りにさらに多くの銃を出した。

シアルもまた、杖をクルクル回しながら攻撃を仕掛けていた。魔術攻撃を連続で繰り出しながら、針での斬撃もやめなかった。

レットはゆぴの攻撃は余裕そうに避けていたが、シアルの攻撃を避ける時はギリギリだった。

それに対してシアルは、ニコニコと爽やかな笑いをうかべ、余裕そうに戦っていた。

ハプはレットの投げてくるボールをフライパンで跳ね返した。



◇◆◇◆◇



その頃ペリィは、無駄な魔力と体力を消費しないよう、最小限の動きで攻撃をしていた。

本を片手に、その本から出てくる粉状の光でどんどん一般兵を撃退して行った。



「君たちは戦争の為に鍛えられているとは言っても、魔力を持たない一般人間だからね。僕のちょっとした攻撃でも気絶位はするものなんだよ。

できるだけ簡潔に終わらせたいからね。広範囲攻撃で相手をさせて頂くよ。

痛くはないだろうから安心してね。これはあくまで途中経過地点だからね。ここで尊大な時間を消失させるのはお互い望んでいないだろう。」



ペリィは一切表情を変えず、ゆっくりと喋りながら撃退を続ける。



「あー、めんどくさいんだよ。さっさとやられてくれればゆっくり休めるのにさぁ!俺のゴロゴロする時間、これ以上奪って何しようってんだよ...。」



そう言いながらレットは最大の力を込めてサッカーボールを蹴ってきた。

魔力を込めたボールを、元々運動神経のいいレットの運動神経を上乗せで上げた状態で本気でける。この攻撃は、とても威力の高く、ダメージの大きいものだ。

そのボールは素早いスピードを出しながらハプの方へとんできた。ハプはフライパンを構えて、包丁をボールに向けた。



「待ちなさい、ハプ!」



ゆぴがハプに向かって焦ったように叫んだ。

ハプはそれを聞いてゆぴの方を見つめた。

ボールはフライパンに直撃して、フライパンが割れた。



「────え。」


「メインとなる攻撃力バカのアタッカーが倒せないなら。邪魔してくるディフェンサーか、回復してくるヒーラー、バフかけてくるサポーターから戦闘不能にすんのが常識ってもんだろ。」



その言葉と同時にボールはハプに直撃して、ハプは空中から地上に転落した。



「あ、痛た...気絶なんて人生で初めてだな...良かった、レット、元気になってたね...。」



囁くような声でハプは言って、そのまま意識不明の状態になった。

その様子をゆぴは上空から呆然として見つめていて、しばらくするとレットの方へ向き直った。

それから今浮かせている倍以上の銃を周りに浮かせて、レット目掛けて乱射した。

それを見て、一般兵を倒し終えたペリィはゆぴに向かって言った。



「正確に、狙いを定めて撃った方が良くないかな?弾の消費量が無駄になるよ。」


「嫌よ。」



ゆぴは呆気なくそれだけ返事をして、また乱射を続けた。



「はーぁ、そんなに四方八方から撃たれたら流石に避けれねーよ。...何そんなにムキになってんだよ。馬鹿みてぇ。」



ゆぴは乱射を止めず、レットを睨みつけて言った。

レットに向かって180度から大量の銃が向けられた。



「ハプをよくも気絶させたわね、あいつはアンタのことを助けたってんのに!この!恩知らず!

あいつはあたしの大切なやつなのよ。あたしを救ってくれた、あたしの恩人なのよ!

家柄のせいで中立で、誰とも打ち解けられなかった!共に戦っている仲間でも、それはあくまで「その時だけの関係」!あたしが中立家系だから!

そんなあたしに、あいつは手を差し伸べてくれた。少しだけの協力のために、沢山の報酬をくれて、あたしに居場所をくれたの!

一緒に戦って、仲間になって、一緒にお喋りして!

あいつは!あたしを変えてくれた大切なやつなのよぉーーーー!!!」



力いっぱい叫んでゆぴは手を前に出した。

全ての銃口から、銃弾がレット目掛けて撃たれた。


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