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異世界魔術物語  作者: 青空 御春
第1章︰『動き出す1章』
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ページ18「災難→危機」

「ここに居たんですね、シアル。」



それが、ローブの人間の去り際に残した言葉だった。

無言の時が過ぎていった。

ハプは、その言葉の意味を考えた。



────ここに居たんですね。



相手は、シアルを知っているのか。シアルとどんな関係なのか。

シアルだけではない。

彼女は言っていた。『真実を知りたいのか』と。

その【真実】とはなんのことなのか。自分達は、何を間違っているのか。何を【偽って】いるのだろうか。

かんがえれば考えるほど、混乱は蓄積するばかりだ。



ゆぴもまた、後ろから見つめていた出来事について考えていた。

前に少しだけ進んで、分からない答えを解き明かそうとしていた。

ゆぴは、このフードの人物を見た時に、何か気がついていた。

そう、過去に遭遇したことがある。

しかし、遭遇しただけ。ゆぴにもまた、【真実】の単語ワードは引っかかるばかり。



シアルは黒のローブの相手が遠くへ、見えないくらい遠い所へ飛んでいくまで、目を細めて見つめていた。

一言も話さずに。その時、ハプはシアルを見ていなかったが、シアルの表情はいつもと違った。

そこには、いつものような爽やかな笑顔はなかった。わざとらしい笑いもなかったし、不穏な笑いもそこにはなかった。

言ってしまうのなら、笑ってすらいなかった。

目を釣り上げて警戒し、強ばった表情を見せていた。

車が爆発した時や一般市民軍全滅を聞いた時、レットと対峙した時、ゆぴにやられてもう気絶寸前の時でも、シアルは笑っていた。

無理矢理にでも。


笑っていない


それが今のシアルキャリソンだった。


────変なことを吹き込むな。僕の大切なチームメイトだ。知らなくていい。そのまま生きていればいい。



「──さぁ、起きるのが遅くなってごめんね、ハプ。色々と聞きたいことはあるが、まずは何故一緒にいるのかな?ゆーか・ゆーぴぃー。」



シアルが口を開いて沈黙を破り、いつもの表情に戻った。

ハプとゆぴは、今までに起こったことをシアルにひと通り説明した。



「ということで...いいかな?ゆぴ、チームに入れたいんだけど...。いいかな?いいよね?いいよね?ね?」



ハプはシアルに問いかけた。シアルはしばらく考えていた。



「うん、ハプ、1回落ち着こうか。それで、1回静かにできるかな?

それで、僕的にはハプの考えは充分聞いたから、張本人の考えが聞きたいんだけどな。」



そう言ってシアルは振り返り、ゆぴの方へ向いた。ゆぴは一瞬目を逸らしたが、すぐにシアルの方へ向き直った。



「えーーっとね、あたしさっきあんたのことぶっ倒したし...あれよ、敵でなんか感じ悪ーとか思うかもだけど、あれよ...ごめん?謝ればいいの?

ま、そんな感じなんだけど、チームに...、

だーもう!わっかんね!あたしを!チームに!入れなさぁい!いいわね!あたしはチームにはいりたいのよ!

だーかーら!あたしをチームの一員として迎え入れなさい!」



ゆぴは途中まできちんとお願いをしようとしたが、不慣れな感覚で混乱したのか、急につんつんした。

それを聞いたシアルは目をぱちくりさせてから、クスッと笑った。



「はぁ、今すぐに、とは行かないけど。君はー、魔...さっきの黒い人達のことも知ってるようだしね。今回の戦争においても僕達の味方に着くというのならば歓迎しようと思うよ。」



それを聞いたゆぴは顔を輝かせた。その様子を隣で見つめていたハプは、ゆぴの仮所属が決まった瞬間、その場で飛び跳ねた。

シアルは、手を前に差し出した。ゆぴは差し出された手をマジマジと見つめた。少し不思議そうに見つめていたため、ハプは言った。



「握手だよ、握手。」



そう囁かれてゆぴは理解して、手を前に差し出した。



「わかってるわよ!それくらい!」



そう言って差し出されたシアルの手を、ゆぴが握ろうとした。

その瞬間、握手をする前に、攻撃が過ぎった。



「ちょーーーっとぉぉぉー!ゆぴと!シアルの!友好の!愛情の!絆の!誓を!断ち切ろうとする奴は誰!ほわは見逃せません!」



2人の握手を断ち切った攻撃の出てきた方向に向かって、ハプは大声でつま先立ちしながら叫んだ。



「みんな仲良く!世界平和!ダメでしょ!そんなことしたら!2人の仲良しの証を断ち切った貴方は!誰ですか!!!!」



フライパンを片手に前に差し出しながらまたまた叫んだ。

シアルは杖を構えた。

ゆぴは一瞬戸惑ったが、モーニングスターを構えて銃を浮かべた。

崖の方から、人影が見えてきた。薄茶色のローブに紺色の髪。



「あーはいはい。流石中立と言ったところだわ。すぐ裏切る。ま、元々相性良くなかったもんだから嬉しいっちゃ嬉しいんだが。」



レットが復活して、トムガノ魔術国の一般市民軍隊を大勢引き連れて向かってきた。



「レット!傷は大丈夫?痛くない?」


「...お前さ、俺が敵ってことわかってんのか?まあ、多分あの時傷を治したのはお前だろうな。スルーリー家の長男さんよ。まぁ、俺戦いたいとかでは無いけどさ。一応復活したわけだし戦うわ。あー、めんどっ。」



レットは今度は物理攻撃ではなく、魔力を込めて攻撃してきた。

体の周りに複数個のボールをレットを中心として周し、次々に投げてきた。



「レットの固有魔法は『運動』。運動で使うスポーツ用品とかを使った魔法攻撃をしてくるわ。固有能力が『超肉体強化』。肉体強化術の上乗せよ。気をつけなさい!」



ゆぴがモーニングスターを振り回しながら叫んだ。レットは面倒くさそうな顔をしてゆぴを見つめた。



「はぁー、お前さぁ、めんどいやつだよな。ゆーか・ゆーぴぃー。まぁ、俺だって本気じゃないけどさ。あ、それと忘れるなよお前ら。俺だけじゃないってことさ。」



レットがそう言うと、他の一般市民軍がハプを目掛けて一斉に発砲してきた。

ハプは急すぎて、慌ててフライパンを出して守ろうとした。

目を微かに開けながら見ていると、途中で銃弾は右へ飛んで行った。

左を見てみると、深緑と紺色を混ぜたような髪色の青年が立っていた。

彼は右手を右に伸ばし、その手には1冊の本を持っていた。



「遅くなって申し訳ないね、シアル様。僕も少々あちらで、片付けなければならない仕事が残っていたものだから。」



ゆっくりとした声で、シアルを見ながら彼は言い、本をパタンと閉じた。



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