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紅茶にイケメンはいかがですか?

「ただいま〜。」


バチン!バチン!

リビングに電気をつける。もうこれで暗さはなくなった。それに今日は·····。


「おじゃましま〜す。」

「なかなか綺麗にしてるんだな。」

「そうですか·····?」

「うん。久々に来たけど、素敵なお家だよね。」

「作人、来たことあんの?」

「まぁ、何回か?」

「何しに?」

「うーん··········。」

「はぁ?なんで言えねーんだよ。」





緋音さんと作人さんを晩御飯に招いた。2人には毎週月曜日お世話になっているし、今日は数学の勉強を教えてもらう。


「どうぞ、荷物とかも好きな所に置いてください。」

「じゃあ、このへんに。」


広々としたリビングに大きなソファ、テレビ、テーブル。1人で住む場所じゃないなと、我ながら思う。

2人はソファに荷物を置いた。


「すぐ作りますね!ハンバーグ。」

「手伝うよ。」


作人さんが腕まくりをしながらキッチンについてきてくれた。


「助かります!私、他にもおかずを作るので、かさ増し用のたまねぎを切ってもらってもいいですか?」

「了解。」


「俺はここに座ってるからなー。」

「はい、緋音さんはゆっくりしていてくださいね。」

「·····んだよ。なんかご機嫌だな。」


楓は気分が弾んでいた。家に人が来ることはあるけれど、誰もいないことが普通なのでこんな日は嬉しい。月曜日はだいたい1人だ。今日はいつもと違うので特に楽しい気持ちになっていた。


「あ、緋音さんテレビつけますか?」

「いや、いい。」

「そうですか。」


暇潰しにでもと思ったが断られてしまった。何やら薄い冊子を持っている。

あんな真剣な顔、初めて見たなぁ··········。


「楓ちゃん?」

「あ、はい?」

「たまねぎ、終わったよ。」

「ありがとうございます。」

「じゃあひき肉と混ぜて、臭み消しと、塩コショウと··········、繋ぎは卵じゃなくて小麦粉でやっちゃいます!」

「へぇー。卵使わないんだ。」

「そうなんです。節約になりますよ!」


作人さんが手際よく進めてくれる。おかげでとても早くハンバーグが出来てしまった。


『いただきます! 』


「うわ、おいしい!」

「本当ですか?よかったです。作人さんも手伝ってくださいましたし··········。ほんとだ、美味しいですね。」


美味しい理由はそれだけではなかった。傍に人がいる夕食はやっぱり大切な時間だなぁと実感する。

緋音さんは黙ってハンバーグをつついていた。


「緋音どう?俺と楓ちゃんで作ったハンバーグは。」

「まぁ、··········うまい。」


口をパンパンにして美味しそうに頬張っている。


「よかったー。よかったね、楓ちゃん。」

「え、あ、はい!」


楓はどもってしまった。普通に美味しいと言われると思っていなかったから予想以上に嬉しい。

··········それに予想以上に喜んでいる自分に居心地が悪くなった。


みんなで食べる晩御飯に、そんなに浮かれてしまっているのか··········。少し恥ずかしい。






「ご馳走様でした。」


みんなご飯を食べ終え、お腹を満たした。

作人さんは楓が下げようとした皿を奪う。


「片付けは俺がやっておくから。楓ちゃんは勉強教えてもらいな?」

「すみません、ありがとうございます。」


来客に洗い物なんて、と思ったが今日はお言葉に甘えさせてもらった。それくらいに、テストは危ない状況だ。

早速数学のワークを用意する。これを何回もやり込むしかない。


緋音さんはどんな風に教えてくれるのだろうか。

ワークを開いて緋音さんの方を見ていると、緋音もこちらに気づいた。


「まず解いてるとこ見とくから、なんか自分で問題やって。」

「はい。」


言われた通り解き始める。自分でテストまでにやらなきゃ行けない所はあらかじめ印をつけてあるのでそこを解いていく。


しかし、ちらりと見ると緋音さんは自分の持っている冊子ばかり見て、こちらを見る様子はない。

本当に勉強見てくれるのだろうか。


「あの、」

「なんだ?もう集中切れたのか?根性ないな。」

「いやいや、違います。その本、なんですか?」

「あぁ、台本。」


··········なるほど。道理で真剣なわけだ。演劇ってどんな役をするんだろう。練習ってどんなのだろう··········。大変、なのかな。考えていると手が止まっていたみたいだ。


「ちゃんと解けよ、それ。」

はっとして、また集中し始める。作人さんはもう洗い物を終えてソファーに座っていた。






「作人は帰らなくていいのか?」


ノートパソコン作業をしていた作人さんは手をとめずに答える。


「大丈夫だよ。緋音が何かしたらまずいからね。」

「するわけねぇだろ。」

「··········??」


2人がよく分からないことを言っているが、とりあえず作人さんもいてくれるらしい。

緋音さんと2人だとどんな空気になるか分からないので、いてくれて嬉しかった。


しばらくして1つの問題で詰まっていると緋音さんが話しかけてくる。


「解けない?」

「解けない、です。」


台本の読み込みで私の勉強など見ていないと思ったが、見てくれていたみたいだ。


「ちょっと貸して。」


問題集を取ってノートと見比べ、楓が解いたところをチェックして行く。吟味されている緊張感。

出来栄えを見られているようなので、楓は緋音さんの様子を伺っていた。


「へぇ。ある程度のところはできるんだな。」

「本当ですか?」

「間違えてるところだいたい計算ミスだぞ、これ。」


う······、たしかに計算ミスで落とすことが多い。だから、絶対できるはずなのになんで間違ってるの??っていう状況が生まれるのだ。


「解けないのは応用問題か。」

「計算ミスって、どうしたらなくなります?」

「は?解く量と慣れだろ。」


ぐうの音も出ない·····。数学が苦手なあまり、甘えたことを言ってしまった。地道に頑張ろう··········。


「解き方教えるから。あとは自分でやってみな。」

「お願いします。」






それから、分からないところで詰まったら解き方を教えてもらい、テスト範囲の3分の2くらいまで進めることが出来た。

自分で出来るのはこれを繰り返し解くことだ。


緋音さんの教え方はわかりやすく、最後まで丁寧に教えてくれた。

本当に頭がいいみたいで、聞いたところはすぐにスラスラと答えが出てきて圧倒されてしまったほどだ。


作人さんも作業をしながら黙って様子を見守っていてくれて、1時間半程たったのか、もう夜の9時頃になってしまった。





「うわ、もうこんな時間ですね、すみません。帰り、大丈夫ですか?」


緋音さんも作人さんも同時に笑った。


「このくらいの時間、全然大丈夫だよ。俺ら男だし、大学生はまだ外にいたりするよ。」

「そ、そうなんですか。」

「お前にはまだはえーな!」


2人が帰る準備をする。


「俺らは大丈夫だけど、こんな時間までここにいたらそろそろ千絵さんに怒られちゃうからね。」

「千絵さんこんなことで怒るかー?逆に喜ぶんじゃないか?」


作人さんが笑う。


「あはは、、そうかもね。」


お母さんの話をする時、2人はいつも楽しそうだ。まぁ、面白いまでいくくらい、お母さんは破天荒な人だが。

2人はお母さんとどんな仲だったのかなぁと何となく思った。


「ありがとうございました。教えていただいて。作人さんも遅い時間まで、」

「いえいえ。」

「まぁ、意外と勉強してたみたいだから許す。明日、店閉めるくらいにまた来ればいいか?」

「お願いします·····!」

「ん。」


出勤でもないのにわざわざここに来させてしまうなんて··········。なにかお礼をしないとな。


「楓ちゃんごめんね······、俺はちょっと明日用事があるんだ。2人にしちゃって申し訳ないけど··········」

「申し訳ないってなんだよ!」

「いやいや、でもさ、」

「大丈夫です!すみません、気にかけていただいて。」


作人さんが困ったように笑う。


「うーん、多分楓ちゃんが思ってる心配とは少し違うんだけどな·····。」

「こんなちんちくりん、、ねーよ。」


なんだか分からないが、急に緋音さんに貶された気がして楓はムッとした。

作人さんは緋音さんと2人で気まずくならないか心配してくれたというのに。


「まぁそういうことなら大丈夫かな·····。」

「大丈夫も何も、変なこと考えてんじゃねぇーよ。帰るぞ。」


2人とも、荷物を持って玄関へ向かう。作人さんは昔来たことがあるが、2人がこの茶色のドアから出ていくのはやはり新鮮に感じた。


「ありがとうございました。お疲れ様です。また、明日お願いします。」

「おー。」

「作人さんもまたいらしてください!」

「またね〜。」


そう言って2人は帰っていった。






3時間目の休み時間、生徒たちの話し声で教室も廊下も騒がしくなっている。


「うわー、楓、休み時間もべんきょー?えらいねぇ。」

「うんー、テストのこと忘れてたから、このままだと間に合わないの。」


学校の休み時間でもやらなくては、数学のやり込みは間に合わない。

由季は楓が勉強に集中してしまうのが面白くないらしく、ちょっかいを出してくる。


「実力テストなんて、そんなにしなくていいのにー!私なんて全く勉強してないよ!」

「いや。由季はもうちょっとやりなよ。」

「えぇー。私は赤点とらなきゃいいからさー。」

「ほんとに、こだわりないよね。··········えーっと、2xイコール」


なおも勉強に集中しようとすると、由季は前の席の椅子を借りて座った。


「ねぇ!最近どうなの?あのイケメン大学生達とは!」

「··········んー·····ん?イケメン大学生··········バイトの人達のこと?」


数学の問題を考えながら話を聞く。


「そうに決まってんじゃん!」

「うん、いつもよく働いてくれて、助かってるよ。」

「もー!そういう事じゃないよー!」


どうせ、由季言いたいことはわかってる。

大学生の人たちと、恋愛しないのー?っていつも聞いてくるのだ。

それに対して、私はしない、と常にこたえている。


しっかり働いて支えてくれているバイトの人達と恋愛なんて、言語道断なのだ。


「なんにもないってば。私、経営者側だからね?」

「まったく!硬っ苦しいなぁ。」

「えぇ。」


そ、そんな言う?

自由思考な由季と話していると、自分が持っている考えみたいなものを簡単に否定されて、会話になすすべが無くなる。


「いーじゃんそんなの!あんなかっこいい人達が近くにいるのに、もったいないよ?」

「··········じゃあ、由季が仲良くなったらどう?由季なら別に働いてる訳でもないし、」


そうだ、本当にそうだ。彼氏欲しいー。とよく言っているし、由季は可愛いし、カフェにいる人はみんな優しい。我ながら名案だ。


「それはもっとダメ!」

「え·····。なんで?」

「楓の恋路を邪魔するなんて、絶対私はしないから!」

「··········はぁ。楓の恋路ね。そうですか。」


そう!と自信たっぷりに目を輝かせて言ってくる。私たちは今、会話をしていたのだろうか。


「だから楓、頑張りなよ!」

「·····あぁ。」


そんなことをしていると、次の時間のチャイムが鳴った。


「あぁ!!もーーー、全然解けてないよ。由季ー、」

「あはは、ごめんごめん。だって私が話してるのに上の空なんだもん。」


勉強の邪魔大成功ということか·····。でも確かに人の話はちゃんと聞かないと··········だけど、んー。


由季は自分の席に戻っていった。それと同時に英語の先生が教室に入ってくる。楓は急いで数学のワークをしまった。



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