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オルタネガティブ
「一人の人だけを生涯かけて愛するってさ。純愛だと思うかい?ソレとも…。」
視軸の先にいる男性は、そう云った。
「それとも?」
私は、その言葉の先は何となく知っている。彼の性格上、きっと綺麗な言葉は続かない。
「狂気だと思うかい?」
完成された美術品の様な男性は、そう続けた。彼の名前は柊冬馬と云う、彼は表情を変える事無く私の瞳を覗く。
「相手によるんじゃないでしょうか…。」
ソレはそうなのだろうと自分でも思う。もし、自分が誰かに愛されているとして、此方が好意を寄せている相手なのなら、嬉しいだろうし、嫌っている相手なのなら厭な気分になるだろう。純愛と捉えるのか、狂気と捉えるのか、ソレを感じるのは主観的な感情だ。
「ソレは主観的に考えた?そうだなぁ…。」
柊は少し間を空けて…。
「もし、その愛する人が実在していないとしたら、どうなる?」
と云った。




