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虚飾


 私は1つ嘘を吐いた。そして嘘を隠す為に嘘を重ねた。幾重にも重ねられた嘘は、初めて吐いた嘘を覆い隠した。


 口から、虚しい言葉が発せられる。


 「私は、今でも貴方を愛しているわ。」


 この言葉が真実なのか、ソレとも嘘なのか、それさえ、私には区別出来なくなっていた。


 私は今でも貴方を愛しているのであろうか?いや、そもそも貴方の事を愛していたと云う過去があるのだろうか?流されるだけ流されて、気付いたら結婚していただけの様にも思う。そしてソレが慣習的なモノになってしまったのだから【愛】と勘違いしているに違いない。


 私は嘘を吐いていた。嘘を吐いていたのだから、責められても仕方の無い事の様にも思う。でも嘘を吐かせたのは貴方の方なのだから、私だけが一方的に責められるのも違う様な気がする。


 貴方は1度足りとも嘘を吐いた事は無かった。貴方の口から語られるのは、いつも正しい言葉だった。私はそんな貴方の真摯な姿を愛したのだろうか…。違う。そんな貴方の紛うことなき言葉が、いつも私を傷つけていたのだ。そんな貴方の穢れない瞳に映る私の姿を見る度に、私は傷付いていたのだ。


 貴方は貴方の正義を貫くのだろう。なら、私は私の嘘を、墓場まで隠し通さなくてはならない。


 私達・・には子供がいなかった。


 ただそれだけなのだから…。

 

 


 正義の天秤より抜粋

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