善人なおもて往生をとぐ、いわんや悪人をや
私は占いで色んな人を見てきた。占いの館【フォルトナ】で…。
それこそ数え切れない程の人を見てきたであろう。
人とは…。
生きる上で、大勢の人との出逢いがある。
では…。印象に残っている人とは何人いるのであろうか…。
私が最も印象深く記憶しているのは…。
クラスメイトでも、友人でも、同僚でも、お客様でも無い。
偶然に、街中ですれ違っただけの人だ。
そう。すれ違っただけの人。普通ならば顔も認識する事さえ無い、気に止める事すらも無い、そんなすれ違っただけの人だ。印象に残っているのならば、顔を覚えているのか?と聞かれても覚えてはいないとしか云え無い。ソレは姿、容姿が印象に残ってる訳ではないと云う事なのだろう。だとしたら何が印象深く、記憶に残っていると云うのであろうか…。
雰囲気。佇まい。オーラ。空気感。気色。情調。
そう云う言葉とも違う。何と言えばいいのか…。
本質。そう【本質】なのだろう。
ただひたすらに【恐怖】を感じたのだ。
本能が。直感が。ソレとの関わりを拒絶した。
ソレは、そんな私に気付いたのか。
此方を振り返り綺麗に微笑んだ。
私は、その時、初めて悟ったのだった。
幸福とは、ああいったモノとの関わりを持たない事なのだと…。
そして…。
その横に居た男性の方こそが問題だったのだ。
蟲の複眼の様な瞳を持つ男性こそが…。
【不幸】を齎すモノに違いない…。




