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空白の記憶 終
「空白の記憶に何があったのか分かったのか?」
完成された美術品の様な男性は言葉を奏でる。
「いえ。それが…。」
美しい女神の様な女性は言葉を一瞬だけ止めー。
「彼、気が触れてしまったから…。」
と続けた。
「気が触れた?」
「そう。今までがおかしかったのよ。何故、正気を保てていたのか…。重度の好酸球性髄膜脳炎による脳機能の甚大なる損傷だと思う…。目覚めたと思ったら、別人の様になっていたわ…。いや…。別人と表現するのも少し違うわね…。」
美しい女神は視線を窓へと向け、あの日の記憶を辿る。
そう。
彼は急に意識を失い倒れた。
そして倒れたと思ったら…。
眼から。鼻から。口から。下半身から。
ダラダラと体液を漏らした。
その後…。
あぁ…。うぅ…。と呻き。
身体をユックリと捩らせ、地を這いずった。
這った跡には…。
光沢のある白濁とした粘液状の液体が…。
女神は視線を戻すと…。
「まるで蛞蝓みたいだったわ…。」
そう言った。




