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天才①


「紙一重なんだよね。」

唐突に彼は言葉を紡いだ。


私達は同棲生活を始めるにあたって、電化製品を買い揃える為にホームセンターを訪れている。どうやらテレビ画面に映った報道を見ての言葉なのだろう。


「えっ?何が?」


私はテレビ画面に視線を向け、その言葉の意味を考えていた。テレビ画面には、数年前に起きた、とある天災の映像が映し出されている。それは九州を襲った未曾有の大震災の映像であった。


私には、その映像と彼の放った言葉の繋がりが分からなかった。暫く、テレビ画面を見ながら彼の言葉の意味を考えていると、そんな私の様子に気付いた彼は…。違う。違う。そっちだけじゃない。あっちも…。と指を指した。その指に釣られて視線を移す。すると少し奥に設置されたテレビ画面に辿り着いたのだった。


テレビ画面には、不可思議とされている事件が映し出されていた。都内の数箇所の学校で飼育されている動物の変死体が発見されたと云うモノである。その事件には不可解な点が幾つも存在していた。発見された遺体からは血液が大量に抜き取られていた事。その遺体には何かに噛まれた痕がある事。目撃者の証言によると、動物を襲っていたソレは大きな赤い瞳で牙を生やし、骨と皮だけの痩せた外見をした生き物であるとの事。それ故か巷ではチュパカブラによる事件と云われているモノだ。


「えっ?どういう事。」

私は彼の言葉の真意がますます分からなくなった。


「ん?あぁ…。この事件も、あっちのテレビで報道されている自然災害の様な天災みたいなものなんじゃないかな。」

彼はそんな私の様子に気付くと言葉を続ける。


「そういった未確認生物の仕業なのなら自然災害と変わらないだろう?」


「確かにね…。」


「まぁ。僕の憶測だとさ。この事件の犯人は天から特殊な才能を授かった天才なんだよ。」


「ん?」

まただ。彼から紡がれる言葉は変則的に姿を変える。

思考が追いつかず私は、彼の言葉の先を待つ。


「飼育小屋には壊されていた形跡はない。と言う事は誰かが鍵を開けているって事になる…。そして捜査の結果では飼育小屋の動物には、何かに噛まれていた痕があるよね。そしてソレは犬の犬歯ではないかと云われている。その2つから推測するに、犯人は飼っている犬に飼育小屋の動物を襲わせている…。」


「犯人は動物を虐待して楽しんでいるって事?」


「ん?言葉が足らなかったね。犯人は飼っている犬の為に犯行を重ねているんじゃないかな。チュパカブラと云う未確認生物の犯行に見せかけている…。つまりは不可解な状況を作り上げ真実を曖昧にする為とでも言うか…。」

彼は少しの間、目を閉じて、そして続けて言葉を紡いだ。




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