No4771110
私がこうなってしまったのは…。
あの木乃伊の所為なのだと思う。
この世のモノではない彼方側の存在だ。
包帯で顔を隠した男。その包帯の隙間から覗く瞳には、生気がまるで感じられなかった。その木乃伊からは薬品の香りがした。私は薬品の知識は無いのだけれど、ソレが薬品の香りであるとは解った。それは病院でしか感じた事の無い匂いであったからだ。
独特な薬品の香りだ。真新しい包帯の香り。その男から発せられる体臭では無い。その男が扱っているであろう薬品の匂いだ。実際、その男の鞄には様々な種類の薬品がミッシリと詰め込まれていた。見知っている薬品もあれば、見た事の無い薬品もあった。
薬には様々な種類がある。
錠剤、カプセル剤、散剤(粉薬)、顆粒剤。
液剤、坐剤、膣剤、貼り薬、塗り薬。
点眼薬、吸入剤、噴霧剤、エアゾール剤。
点鼻剤、点耳剤、浣腸剤…。
そして…。
注射剤…。
その木乃伊は…。
私に何かを注射した。
そして私は私では無くなっていった。
木乃伊取りが木乃伊になる。
その言葉通りに…。
私は包帯で全身を包まなければならなくなった。
そうして私は…。
人間ではなくなった。
リビングデッドより抜粋。




