痛みこそが…。
私は月ヶ岡高等学校で教師をしている。月ヶ岡高等学校は、都内にある高等学校で、周辺には様々な施設が隣接している。ショッピングモール、広大な公園、スポーツ施設、リゾート施設。病院。近くには海があり、潮の香りが風に紛れて運ばれてくる。有名な進学校なのだ。
勤務を終えると近隣にある広大な公園へと足を運ぶ。その公園の中央には、大きな時計塔がある。そのデザインが好きで、私はよく此処へと来るのだった。機械仕掛けの時計で、その内部を隅々まで見透せる構造となっている。その内部は複雑な歯車が幾つも重なっていた。時を示す。その為だけに、あの様な複雑な仕組みになっているのかと想像するだけで、私は幸せな気持ちになるのだった。そう。1つのパーツも欠けてはならない構造なのだ。
では。
この世の中はどうなのだろうか?
欠けても何ら問題のないパーツだらけではないか…。
美しくはない…。
美と云う概念とは程遠い…。
カチカチと頭の内で音がする。正確な音を刻む音。
チクタクと秒針が進んでいく。
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カウントダウンされては…。
爪の間に針を刺された、あの時の記憶が鮮明に浮かんだ…。
痛みこそが世界の真実より。




