戯れ
「貴方。余程、彼に気に入られたのね…。」
幻想的な美しさを纏う女性は…。そう言葉を紡ぐと、「羨ましい。」と吐息を漏らした。
「どういう事ですか?」
完成された美術品は言葉を返す。
「だって…。彼は貴方に、その話をしたのでしょう?」
「では…。あの話は真実なのですか?」
完成された美術品は幻想的な美しさを纏う女性の瞳を見据えた。
真実と虚構が混ざり合ってはいるけれど…。幻想的な美しさを纏う女性は再び吐息を漏らすと…。
「9割ほどは真実を話してるわね。」
と長く白い足を組み替えながら言った。
「何処までが真実で何処が虚構なのですか?虚構の話を混ぜる必要なんてあるのですか?」
「彼は…。ただ愉しんでいるだけよ。戯れみたいなモノ。」
「戯れ?」
「きっと劇的な未来を求めてるのでしょうね…。でもソレが喜劇であるのか…。それとも悲劇なのか…。まぁ。殆どの人からしたら悲劇であるのには違いないのだけれど…。」
そう云うと。幻想的な美しさを纏う女性は少女の様にクスクスと笑みを浮かべた。
「あの人は貴方にとって何なのです?」
完成された美術品は問う。
「あたしにとっての過去。現在。未来。全て…。」
その瞳は慈愛に満ちていた。
「また、はぐらかすのですね…。」
「大丈夫よ。そう遠くない未来で真実が解ると思うわ。あたしの考えでは…。そうね…。この先、彼の周りで、少なくとも10人ほどは死ぬんじゃないかしら…。貴方達の作品も含めてね…。」
その言葉を聞いて…。
完成された美術品の瞳の奥が少し緩んだのだった。




