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白い煙が漂う夜に…。
「ありがとう。」
白い布を纏った影がー。
黒い影へと声をかけた。
「あぁ。これで良かったの?」
「うん。」
「暑くない?彼はどうせ家からは出てこないから、脱いでも良いんじゃない?」
黒い影は優しい音色で言葉を歌う。
「うん。暑いね…。」
白い影はそう言うと、纏っていた白い布を宙へ放った。
白い布はくねくねと、その形を変えながら地面に落ちた。
「でもさ。本当に…これで良かったの?」
「うん。ありがとう。私の命を救ってくれて、そして、願いを聞いてくれて…。」
痩せた女性は小声でそう言った。
「引っ越すのは3日後だっけ?」
「うん。」
「元気でね…。もう飛び降りようとかはしないでよ。」
「うん。もう大丈夫…。」
黒い影は煙草に火を点けてー。
「またね…。」と言い…。
白い煙を口から吐き出した。




