32/60
紡がれる言葉
「あの人は何なのです?」
完成された美術品の様な男性は問う。
「あの人?誰の事かしら?」
此の世の者とは思えぬ美貌の女性は返す。
「惚けないで下さい。貴方が接触しろと言ったのでしょう?」
「フフフ…。」
美しい声でその女性は嗤った。
「そうね。あの人を例えるのなら…。」
そう続けると指で空間に三日月の様な図形を刻んだ。
「貴方なら知っているのでしょ?」
そう言って、また三日月を描く。
「何の事です?」
表情を変える事無く、美術品は再び問うた。
「ナジャ…。」
吐息の様に声を漏らす。
その言葉を聞いた美術品はー
「ネイティブアメリカンのアクセサリーですか?」
と声を返す。
「そう。ナジャは三日月であり、子宮を示してるの…。」
「それと、あの人とどんな関係が?」
美術品は思考の海へと沈む。
それからー
「まさか…。そんな筈は…。死んでいる筈ですよ…。」
と言葉を並べた。
その言葉を聞いてー
妖艶な美貌の女性は
「あたしだって。死んでるじゃない。」
ーと少女の様にクスクスと嗤った。




