マン イン ザ ミラー
「お兄ちゃん…」
頭の内に響く声がある。
「私はね。お兄ちゃんが大好き…。」
この声は僕と同じ声だ。
物心ついた時からー
その声は聞こえてはいた。
理由は分からなかったけれどー
安らぎに満ちた声だった。
その理由を聖堂学園に入学する時ー
両親に聞かされた。
その理由を聞いた時ー
僕の特殊な躰の理由も知った。
僕は、一卵性双生児として産まれてくる予定だったらしい。
一卵性双生児としては珍しい異性一卵性双生児だった。
その上、【ミラー・ツイン】だった。
僕は全臓器反転症なのだ。
【ミラー・ツイン】
一卵性双生児の中には…。
利き手が左右に分かれていたりー
旋毛が右巻き・左巻きと対称になったりする場合がある。
左右対称の特徴を多く持っている双子をー
【ミラー・ツイン】と呼ぶ。
受精9ー12日前後で受精卵の分裂が発生した場合にー
【ミラー・ツイン】になると考えられている。
【ミラー・ツイン】の中にはー
様々な外的要因の累積によりごく稀に全臓器反転症。
すなわち内臓位置の逆転(心臓が右にある 等)が生じる場合もある。
ー だからか…。
僕の内に抑制の効かない衝動がある。
【ミラー・ツイン】は単に顔の外観がー
鏡像になっているだけではない。
生物学的な相違点で示される事もある。
鏡像的に異なったー
【人格の形成】
【生活嗜好】
【睡眠パターン】etc.
鏡像的相違が見られる場合もある。
優しい片割れを失っている僕…。
人を壊したい衝動を抑えられない…。
「お兄ちゃん…。」
頭の内に響く声がある。
「お兄ちゃん。もう人を殺さないでね。お願いだから…。」
その声は、僕と同じ声だ。




