夢視た乙女
【生きていく為の必要最低限の身体】
だけが残った。
私はー
漸く私らしくなったのだ。
眼球も鼻もー
耳も唇も、髪も歯もー
両の手、両の足もー
残っていた男性の象徴さえもー
失った。
蛆虫はー
壊死した細胞をー
私が要らないと望んだ身体の部位をー
私の内に有るー
糞や尿の汚物までもー
全てー
総てー
食い尽くした。
また…。
美しい声が鳴り響く。
〖どうですか?思い出しましたか?〗
ーごめんなさい…。ごめんなさい…。
私は涙を流す。
〖思い出したのですね?貴方が犯した罪を…。〗
ーごめんなさい…。ごめんなさい…。
私はー
酔うと記憶を無くす。
その【無くした記憶】がー
私の下へ還ってきた。
〖どうやら…汚物の中にアルコールもあったようですね。〗
ーごめんなさい…。私はー。私はー。
〖記憶は無くならないのです。貴方は、ただ…視ようとしなかっただけだ。アルコールの所為にして逃げていただけだ。貴方は朧気におぼえていたのでしょ?完全に泥酔していたのならー〗
ーそもそも記憶されないのですから……。
『記憶されない?』
〖脳が麻痺して、【記憶する】と云う機能が働かないのです。だが貴方はー朧気に覚えていた筈だ。もう逃げる事は、出来ない………。〗
美しい声は嗤う。
〖貴方には、逃げる為の身体が無い。〗
ーごめんなさい…。
ーごめんなさい…。
ーごめんなさい…。
思い出した…。
私が罪を犯した事を…。




