仔羊の見る夢
目蓋を刺激する光の明滅に意識を取り戻すとー
鼓膜に纏わりつく音が五月蝿く感じた。
無機質な機械音が正確な時間を刻んでいる。
朦朧とする思考。
気怠い体躯。
目蓋を擦ろうと右手を動かすと………
ージャラ…っと
金属音が鳴り響いた。
ビクッ
急激に云いようのない感覚が体躯を満たしー
現実の状況を把握しようと意識を外の世界へと向ける。
白い空間。
鎖に繋がれた四股。
手術台に乗せられた自分。
ドクドクと血流が早まるのが解る。
ー 何だ?
ー 何なんだ??
様々な感情が思考を蝕む。
明滅を繰り返すライト。
嗅覚を刺激する薬品の匂い。
金属製の鎖が皮膚を撫でる。
ー 落ち着け…落ち着け…
心音が体躯の中で反響する。
ドクドクと脈打つ命の音。
ー 落ち着け…落ち着け…
瞳を閉じ心音を数える。
深呼吸をし、冷静になる様に言い聞かせる。
ドクドク。
ドクドク。
どれくらいの時間が過ぎたのだろう…。
鼓動はユルリと音を奏で始める。
瞳をゆっくりと開ける。
眩い光が網膜を刺激する。
円形を形作るライト。
見覚えの無い機械。
鼻を擽る薬品の匂い。
ー 何だ?
ー 何故、僕は此処に居る?
ー 此処は手術室だよな?
だだっ広い白い空間にポカリと存在する手術台にー
両の手、両の脚を鎖に繋がれながら僕は横たわっている。
ー 何だ?
ー 何だ?
ギィィィィ…。
ギィィイイ…。
何も無い空間から音が産まれた。
視線を音の鳴る方角へ向ける。
ギィィィィ…。
ギィィイイイ…。
白い空間に黒い筋が走る。
そして、それは、少しずつ縦長の長方形を形作る。
ー これは扉?
ギィィィィ…。
ギィィィィ…。
ゆっくりと白い空間に黒い空間が産み出される。
ギィィィィ…。
ギィィィィ…。
ギィィィィ…。
20cm位の空間が出来た時だった。
ガゴッ。
其れは突如として現れた。
黒い空間から得体の知れないモノが此方を凝視している。
ー 何だ?
フゥゥゥ…フゥゥゥ…とー
生臭い息を撒き散らす。
ダラダラと垂れ流される涎。
生気を感じさせない黄金色の瞳。
ー嗚呼…
其れは
人の形をした
黒山羊だった…。




