裏切りは冒険に付き物
「キャーーー、、バ、バケモノ!!」
女の甲高い声が響き渡った。5人のうち1人が叫び出したのだ。その女の膝はガクガクと震え腰が完全に抜けている。他の4人はその声に驚きすぐさま草むらへと隠れてしまった。1人残された叫んだ女は動くことが出来ず、猫のおもちゃになることは目に見えている。「助けろ!!裏切り者!お前らを呪い殺してやる!!」恥もクソもない。女は叫び狂ったのだ。だがそんな女の願いも通じず、他の4人は出てくる気配すらない。猫は近づいてきた途端その女を前足で潰した。猫からしてみれば、軽くじゃれたつもりだったんだろう。だが人間からしたら、そんなことでは済まなかった。数千kgの重りを上から叩きつけられるようなものだった。猫はおもちゃがすぐに壊れたことが分かると、つまらなそうにまたノソノソと歩いて消えていった。僕は一瞬の出来事に生きた心地がしていなかったが、末端に血が通うのを感じて落ち着きを取り戻した。
死んだ彼女の元に行くとありえない状況が目の前に広がっていた。カケラも残らないとは、まさにこのことだろう。血が飛び散っていたが、肉片や内臓の1つも見当たらなかった。そこにさっきの生き残った4人がやってきた。少し離れたところから、武器を構えている。小さい槍のようなものを持っていた。1人のリーダー格っぽい男が「死にたくなければ、身につけているもの全てをそこに置け!俺に服従することを誓ったら、殺さず俺らの下で働かしてやる」と怒鳴ってきた。さっきまで僕は勘違いしていたのだ。こいつらが武装している理由は、バケモノから身を守るためではなく、同じ状況に陥った自分たちより立場の弱い人間を手下として確保したいからだったのだ。だが僕はそのリーダー格の男の言葉に屈するわけがなかった。妹を助けなければならないのに、こんな男の元で働くなどまっぴらごめんだった。さらに彼らはまだ知らないが、僕は中距離を狙える弓を持っている。彼らと戦えば、僕が有利なことはわかっていた。僕はそっと弓を取り出し、狙いを定め男の足に命中させた。男は痛がりながらも、焦った様子で「なんだよ!そんな本気で捉えることはないだろ!そんな強い武器を持っているなら、俺達組まないか?」などとほざいてきた。見たら分かる、この男は自分より強い立場のやつには何もできない。ただ自分の命が惜しいだけの奴だと。だがそうしないと、この男は精神を保てないのだろう。だが、僕はこの男に対しすごい嫌悪感が湧いた。そして気づくと、僕は男の心臓に狙いを定めて弓を引いていた。これが人生で初めて人を殺した瞬間だった。