8.ストーカー、愉悦する
街中にある潰れた音楽スタジオ。
眠った女子高生を抱えて、3人の男が裏口からスタジオに入る。
音楽スタジオと言う事もあり、防音設備が整っており、ちょっとやそっとの音は外に漏れない。
スタジオの中に入った男たちは、女子高生を古いソファーに横たえた。
瑠璃だ。
「はぁ…やっと、やっとだね。ルリルリ…」
眠っている瑠璃を見て、悦に浸る男子高生は上着を脱ぎ、ソファーの背もたれに掛けた。
「ここなら誰の邪魔も入らない。待たせてしまって、ごめんね。でも、今日、やっと、ルリルリは僕と本当の意味で身も心も繋がる事が出来るよ…」
そう言いながら、男子高生は瑠璃の頰を撫でる。
まるで感触を楽しむ様に触れる手に、眠っている瑠璃も顔をしかめるほどの気色悪さが伴う。
「ははっ。こんな事しなくても、お前なら声掛ければ一発だったろうに、態々、俺らを頼るとはなぁ」
明らかに男子高生ではない男の1人が笑い声を上げた。
「そうもいかないよ。彼女は恥ずかしがり屋だからね。ぼくとの関係も知られたくないんだよ。何せ、ぼくは学校一のイケメンだからさ…」
「ぎゃはははっ!流石、イケメン様が言うと説得力が違うなぁ!」
最初に口を開いた男とは別の男が下品に笑うと、男子高生は何の罪悪感もなく言葉を続けた。
「当然の配慮だろう?」
この男子高生は、瑠璃や翔が通う学校の中でも、話題になる程度には身なりが整っている。
過去に学校内で、この男子高生と付き合った女子高生は軒並みレベルが高かった。
しかし、いつの間にか別れており、別れを切り出すのは決まって男子高生の方からだった。
その理由は明確で「きみとぼくとでは釣り合わない」からだ。
だが、そこまでハッキリ言っても、過去に付き合ってきた女子高生が文句の1つも言わず、涙を飲んで別れたのは、男子高生の言う事が本当だと思ったからであり、そう思わせる程度には男子高生は自他共に認めるイケメンだった。
しかし、瑠璃は男子高生の誘惑になびかなかった。
いや、むしろ、誘惑とは気が付いていなかっただろう。
良く話すクラスメイトくらいの認識でしかなく、瑠璃にとっては恋愛対象にはならなかった。それだけだ。
だが、男子高生はそれが納得いかなかった。
これまでなら男子高生が口説けば、女は直ぐに陥落していたのに、瑠璃だけは違ったからである。
(…いや、彼女は恥ずかしがっているだけだ。)
瑠璃が一向になびく様子を見せなかった事を曲解した男子高生はそう思った。
(恥ずかしがり屋の彼女は、素直にぼくに好きだと言えないに違いない)
(ぼくは学校一のイケメンだから、ちょっとした美小女と呼ばれる彼女でも引け目を感じてしまっている筈)
(ぼくが幾ら学校一のイケメンだからって、そんな引け目を感じる必要はないのに…)
瑠璃が振り向かない現実を受け入れきれずに、曲解しまくった男子高生は瑠璃と付き合っていると思い込んで行く様になった。
通話アプリなどで話すとなると、瑠璃はまた恥ずかしがってまともに返事をしないだろうと考えた男子高生は、古典的な手法をとる事にしたのだ。
それが件の手紙である。
一方的な手紙であるものの、瑠璃の好意に気が付いているから安心してね。と言う思いから、男子高生は手紙を送ったのだ。
その手紙を学校の勉強机の奥に仕舞われているのを見て、男子高生は手紙を大事にしてくれていると勘違いし、今朝、2通目を送った。
すると、見覚えのない地味メンが、瑠璃の手から愛の手紙を奪い、更には中身まで見た事実を知り、瑠璃の身の危険を感じた男子高生は、地味メンから瑠璃を守るため、幼い頃に懇意にしていた音楽スタジオに瑠璃を匿う事にしたのである。
協力してくれた男2人は、音楽スタジオが開店していた時期に知り合った、悪戯好きの年上の友人だ。
音楽スタジオの裏口の合鍵を作った友人は、スタジオが閉店した後も出入りしており、男子高生も誘われて良くここに遊びに来ていた。
この場所は、男子高生を含めた男3人しか知らない。
だから、瑠璃を匿うには丁度良い場所だと思ったのである。
「で?いつ制服は剥くんだ?」
ソファーに横たわる瑠璃の姿を舐める様に見ながら、片方の男は言う。
「撮影は任せろ!げへへっ…」
更にスマホをビデオモードにして動画を撮りながら、下品な男が言う。
「まぁまぁ…まずは、この寝ている状態を撮ろうよ。せっかく、可愛い制服を着てるんだから」
「まぁな。お前が通ってるJKの制服は流石に良いな」
「へへっ…エロいっすよねぇ…」
苦悩の表情で目を覚まさない瑠璃。
その様子を愉しむ男3人。
正に絶体絶命。
「ー…さて、それじゃあ…まずは上着から徐々に…」
そう言いながら、男子高生は瑠璃の上着まで手を伸ばす。
その様子を下品な男がスマホで撮り、もう片方の男は肉眼で愉しんでいる。
しかし。




