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OH!庭番  作者: 唯一
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1.御庭番の末裔

旅行先で見た、とある看板から着想した話です。

メインで書いてる、異世界転生小説の息抜きに。


本日0時まで、1時間置きに完結まで連投させて頂きます。よろしくお願い致します!


20XX年。日本某所にて。

二階建ての昔ながらの日本家屋の屋根から、大きな松の木の天辺に飛び移る人影。

「oh!Ninja!」

その姿を見た、外国人観光客が歓喜の声を上げた。

声を聞きつけた人影は松の木の天辺から、外国人観光客に向かって手を振る。

グループで観光していたらしい外国人らは、本物の忍者に会えたと心から喜んで全力で手を振り返す。

すると、人影は身軽に松の木から、家屋を囲っている石垣に飛び移り、観光客の元へ降り立った。

これにまた観光客達は歓喜し、降り立った人物に賛辞の拍手を送る。

「どうもどうも」

拍手を送られた青年は正に忍者の様な格好をしており、Tシャツに乗馬ズボンと地下足袋を履いており、庭仕事をするための道具らが、腰ベルトに括り付けられている。

頭には手ぬぐいを巻きつけ、ザ・職人の姿がより観光客達を喜ばせた。

記念撮影を求められた青年はあっさりと了承し、手慣れた様子で観光客達と忍者らしいポーズを取った。

それぞれに握手を求められ、青年が全てを受けた後、観光客達は満足して去っていく。

その様子を少し離れた場所から見ていた乙女が、呆れた様子で青年に声を掛けた。

「翔!また命綱無しで作業してたの?いい加減、着けなさいよね!」

黒髪のストレートロングの、これまた先ほどの観光客たちが喜びそうな大和撫子の呈そうを為した乙女。

地元の高校の可愛いと有名な女子制服を身に纏い、姿勢良く立っている。

「あ、瑠璃。お帰り」

「お帰りじゃないわよ。何でまた家に居るの?昨日も庭木の手入れしてたじゃない」

幼馴染の服部 翔(はっとり しょう)が連日、自分の家の庭に居る事を不快に思っているようだ。

小学生の頃ならいざ知らず、今の翔は徳川 瑠璃(とくがわ るり)にとって、あんまり話したくない存在であるからだ。

何故なら…。

「勿論、瑠璃の姿を見るために庭仕事しに来たに決まってるだろ?瑠璃は俺の姫様だからなっ!」

「気持ち悪いっ!」

何の取り繕いもなく翔に対する素直な感情を瑠璃は口にした。

「それ止めてって言ってるでしょ!?高校生になってまで、お姫様とか鳥肌立つから!それと家に頻繁に来るの止めて!!私、今の翔は嫌いなの!」

ハッキリと拒絶の言葉を告げる瑠璃。

そんな瑠璃に悲劇が起こる。

瑠璃の背後から、それは襲いかかった。

神風である。

膝上丈のスカートが後ろから吹いた神風によって、大きく波打ち捲れ上がった!

瑠璃の正面に立っていた翔には、完全に見える角度である。

瑠璃は顔を真っ赤に染め上げて慌てて、風に靡くスカートを抑えつける。

突風が収まると同時に瑠璃は翔を上目遣いでキッと睨みつけた。

「…見た?」

「見てない」

何を、と無粋な事は言わず、お互いに確認をとったが、瑠璃は納得しなかった。

「嘘!絶対見えたでしょ!?嘘、付かないでよ!」

何とか翔を謝らせたい瑠璃は、見た事を認めさせようと責め立てる。

そもそも事故だったのだから、事故で見たかもしれない翔に謝らせるのは理不尽ではないか?と言う意見は丸無視の言動だ。

それに対し、翔は真顔で答えた。

「嘘じゃない。態々、見る必要性を感じないしな」

翔の言葉を聞き、瑠璃は眉を潜める。

必要性も何も、スカートが突風により捲り上がっていた時、翔はずっと目を開いていた。

見ないように顔を避けていた訳でも無いのに、一体全体その言い訳はどう言うことか?

そんな瑠璃の疑心に応えるように、翔は真顔のまま言葉の心意を説明した。

「今日は茶道部で例の先輩が来る日だって分かってるから、瑠璃のパンツは白のレースにピンクの花が刺繍がされたお気に入りの奴だって知ってるからな!ちなみにブラジャーも同じ細工がされた、パンツとセットの…」

瞬間、翔の顔面に衝撃が走り、目の前に光が走った。

翔の発言を聞いた瑠璃が持っていたカバンで攻撃したからである。

どうやら、翔の言葉は瑠璃の今日身につけている下着を正確に当てたようだ。

革製の学校指定のカバンによる攻撃は、流石に猛烈な痛みを齎した。

顔面の痛みに悶えてしゃがみ込む翔の横を走り去り、瑠璃は自宅へ逃げ帰っていく。

その姿を横目で確認した翔は顔のあちこちを摩りながら、立ち上がった。

「いってぇー……さて、帰るか」

護衛対象である瑠璃の安全を確認した事で翔はようやっと帰宅出来る事にホッと息を吐いた。

自宅までの道をショートカットするために、翔は足音も無く徳川宅の石垣に登り、各家庭の屋根を伝い、帰路を辿っていった。


ー…服部 翔。17歳。高校2年生。

彼は、かつて日本を統治していた徳川家に仕えていた、御庭番の1人の血筋を引く末裔。

そして、今世まで受け継がれてきた徳川家の末裔である徳川瑠璃を、陰ながらに支え、守る、現代の御庭番である。


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