第五話 冒険者ギルド登録
タイトルは「冒険者ギルド登録」となっていますが前半は訓練風景になっています。
サスケが五代目龍王国国王に謁見した次の日、サスケとウィルへの指導の日々が始まった。
「今日は闇の日だから、私が体術を教えるわ。とりあえず、使うものをとってくるから、準備運動として柔軟と修練場の壁に沿って五周しといて」
セラはウォーミングアップの指示を出すと上の部屋へと戻っていった。
サスケとウィルは柔軟をしてから、修練場を走る。地球で剣道部に所属してたサスケはもちろん、ウィルも幼いころから王となるため、武術を習っているため体力に自信はある。そのため、ノルマの五周はたいして疲れずに直ぐ終わった。
(二人とも体力はある程度あるみたいね。それに、手を抜くっていう考えもなさそうね。)
セラはサスケとウィルの性格を把握するために忘れ物をしたふりをして、一階にある地下の修練場の様子をみることができるモニター室からウォーミングアップの様子を見ていた。終わったのを確認してからセラは修練場へと戻る。
「さて、あなた達の実力を知りたいから組み手をしましょうか。でも武技はとりあえず禁止ね。」
「先はどっちでしょう。」
「二人同時で構わないわよ。これでも私Aランク位はあるから」
「分かりました。」
これはセラとウィルは組み手の方式を決め、サスケはAランクとは何かを質問しようとしたが、タイミングを失い大人しく組み手の準備をする。
「あ、後これ付けてやりなさい。」
そう言ってセラが投げ渡したのは、手を守るためのグローブのようなものであった。
「それじゃ、始めましょう。何時でも掛かって来なさい。」
ウィルはセラの許可が出ると瞬時に殴り掛かる。
サスケはウィルの突如の動きに驚くものの直ぐにウィルの攻めた左側とは逆の右側に回り込み、左足による蹴りでセラの右足を崩そうとする。
セラはウィルの拳とサスケの蹴りを左後ろに下がることでよけ、ウィルを弾き飛ばす。ウィルはサスケを巻き込みながら、吹き飛ぶ。
「今のは悪くないけど、二人でやる作戦じゃないわね。ほらもう一回掛かって来なさい。」
こうしてセラとサスケ、ウィルの模擬戦は三十分程続くのであった。
模擬戦開始から三十分後ー
「とりあえず、今日の模擬戦は終わりにするわ。」
(サスケは以外に基本はできてるわね。ウィルは普段武技に頼り過ぎみたいね。)
セラは模擬戦を通じて見えた二人の問題点に合わせたメニューを考える。
「ウィル、あなたは武技に普段頼りすぎのようね。サスケもある程度は基本ができてるけど、経験がたらないわ。今日はこのまま模擬戦を続けるわよ。」
─授業終了時刻─
ウィルは終了三十分前に力尽き、修練場の端で休んでいる。サスケは基本的な動きを確認してもらっていた。
「今日はこれで終わりね。ウィル、あなたは体力が足りないわね。あなたはまだ、休んでいてもいいけど、サスケはこの後、冒険者ギルドに行くんだから急ぎなさい。」
「「は…い…。」」
サスケは疲れている体を動かし、自分の部屋へと戻り昨日買ってもらった外出用の服に着替え待っているよう言われた建物の玄関へと向かう。少し待つとセラとソーレルが建物裏から馬車を回してきた。
「サスケ、準備はよいかの。」
「はい。大丈夫です。」
「…敬語は止めてもいいんじゃぞ。」
「そういうわけにも…。」
「まあ良い、とりあえず行くとするかの。」
冒険者ギルドは四つ目の壁の内側にある為、十七小隊の寮がある一つ目の壁の内側からでは移動に時間がかかる。御者はセラがしているため馬車の中にいるのはサスケとソーレルだけである。
「サスケ、相談なんじゃがお主、儂の養子になるつもりはないかの。」
「逆にいいんですか。」
「もちろんじゃ、儂の息子は初代陛下の亡くなった戦で戦死してしまって財産を継がせる者もおらんしの。儂にとっても得のある話じゃからな。」
「それならお願いします。」
「おお、そうか。受けてくれるか。それなら、冒険者ギルド正式に登録するかの。」
この世界での養子縁組はギルド等の公式組織の仲介、もしくは公務員や村長などの公的な立場の者の仲介で認められる。
─約一時間後─
サスケ達は冒険者ギルドへと到着した。
冒険者ギルドの外見は三階建ての酒場である。
そもそも冒険者ギルドとはなにか。
初代ギルド長が何人かとの冒険を行った時に支援の必要性を感じたのが始まりである。
今では本来の未開拓領域への冒険の支援は勿論、薬草等の素材の納品から魔物退治まで幅広い仕事を行うようになった冒険者の支援を行う団体となり、世界各国に広まってる。冒険者ギルドのギルドカードも正式な身分証明書と扱われる程、世界的に信用されている。
セラは馬車を停めて待っているというのでソーレルとサスケの二人で冒険者ギルドの中に入る。
ギルドの中は半分が酒場、もう半分が冒険者ギルドとなっている。二階には宿屋があるらしく、酒場のカウンターには宿屋のマークがあった。
「まずはサスケの登録じゃな。受付に行くぞい。」
ソーレルとサスケが向かった受付は昼間だからかギルド職員が二人いるだけで並んでいる者もいなかった。
「いらっしゃいませ。本日はどのような御用でしょうか。」
「この子の冒険者登録と養子縁組じゃ。」
「分かりました。ギルドカードはお持ちでしょうか。」
ソーレルは来ていたローブのポケットから銀色のカードを取り出す。
「これで良いかの。」
「はい。それでは先にそちらの子の登録を行いましょう。」
受付嬢はカウンターの下の棚から紙を取り出す。
「養子縁組登録の準備をしてきますので、その間こちらにご記入をお願いします。代筆は必要でしょうか。」
「いや、大丈夫じゃ。」
「それでは失礼します。」
受付嬢は事務所につながっていると思われる扉へと入って行く。
「サスケ、お主は養子になる。これからは家名をフローズと名乗るようにするのじゃ。よいな。」
「はい。サスケ・フローズと名乗るようにすればいいですよね。」
「そうじゃ。儂がこの紙を書いている間、少し待っていなさい。」
ソーレルはサスケに名字を変えさせ、受付嬢に渡された紙を書き始める。すると、直ぐにその手が止まりサスケの方へと振り返る。
「お主…今何歳じゃ。」
「…十四です。」
その後、所々をサスケに確認しながらもソーレルは紙を書き上げた。そして、受付嬢も帰って来た。
「これで良いかの。」
ソーレルは記入を済ました紙を受付嬢へと渡す。
「…はい。大丈夫です。それでは登録を行いたいと思いますのでここに手を載せて下さい。」
受付嬢は金属製と思われる箱を出し、その中にソーレルが記入した紙を入れる。そして、箱の上に手を載せるように言う。
「こうですか。」
「はい。もう大丈夫です。」
箱の反対側に印刷口があったらしく金属製の小さな板が出てきた。
「こちらが冒険者ギルドカードとなります。冒険者ギルドの説明は必要でしょうか。」
「お願いします。」
「分かりました。それでは面談スペースを使いましょう。どうぞこちらへ。」
受付嬢は受付から出て近くのドアへ入り、その中にある小部屋の一つへと二人を案内する。
「こちらは面談スペースと言いましてギルド職員と冒険者の方がある程度以上の時間話す時に使われる部屋になります。どうぞお座り下さい。」
サスケとソーレルは部屋の中にあったソファに座り、反対側のソファに受付嬢が座った。
「それでは冒険者ギルドについてご説明します。」
次話が冒険者ギルドについての詳しい話になります。