第4話 王都
サスケを含めた龍王国特務第十七小隊は王都に着いたものの王都の都市門で時間をとられていた。龍王国を始めとする多くの国では、都市に入るのにギルドカードなどの身分証明証が必要となるのだが、転移者であるサスケは勿論証明証を持っておらず、仮の証明証を作るのに時間をとられたのである。
「これが仮の身分証明証だ。期限は10日それを過ぎると、身元保証人に対する刑罰、都市への入場の禁止、身分登録ができなくなるなどの罰を受けることになるから気を付けろ。」
衛兵はサスケにプラステックのような材質でできたカードを渡す。
「ありがとうございます。」
サスケは衛兵へと礼を言い、ソーレル達の元へと向かう。
「これからの行動じゃが、お主を陛下に会わせる。」
「そんな簡単に会える人じゃないですよね?」
「無論、そうじゃが儂は国王直属の配下じゃからのわりとすぐに会える。お主を儂が育てるにしても小隊の一員として扱うには許可がいるからの。」
現在の龍王国国王は五代目である。たった五代目かと思うかも知れないが王族の血筋には龍族の血が色濃く受け継がれている。そのため、王の寿命が長い。建国してから200年程経過しているが初代国王は五年程で亡くなり、二代目も二十年程で王位を退き、三代目からは五十年交代で王位を次へと譲っている。
五代目国王の名はレオギル・ドラグーン。その手腕と十年程前の帝国との戦争における活躍から、[老龍]と他国から呼ばれる王だ。
サスケ達は馬車で王城へと移動する。
王都は同心円状の都市で4つの壁によって仕切られている。
一つ目の壁の内側は王城を始めとする政治関連の施設が並ぶ。
二つ目の壁の内側は貴族街や国立の施設が並ぶ。
三つ目の壁の内側は住宅街で王都の住民が住んでいる。
そして、四つ目の壁の内側は王都の華である。商店街を始め、宿屋等の旅人向けの店、冒険者ギルドや商業ギルドなどの八大ギルドの王都支部もここにある。
サスケ達は王都を奥へと進み、王城付近の国王直属部隊の仕事場へと着き、伝令を出して、謁見の許可を待っているのである。
ソーレルはサスケにある提案をする。
「サスケ、お主には我々が中心となって王都滞在中に知識や技術を教えたいと思っておる。それでどうじゃ。」
「是非、お願いします。」
サスケの返事は即答での肯定である。
「そうか、ならこれを見とくのじゃ。時間割じゃな。」
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火 武術 魔術 教養
水 武術 地理 言語
風 武術 歴史 雑学
土 武術 魔術 教養
無 武術 地理 言語
光 武術 歴史 雑学
闇 武術 未定 未定
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そこには一週間分の予定が書かれていた。
ソーレルはサスケからの許可とると、国王への謁見許可が下りるまで小隊で外部講師は誰にするかなどを話し合っていた。
謁見の許可を伝えに来た使者はサスケ達を王城の一室に通すと、ソーレルと共に謁見の間へと向かった。
1時間程の間、サスケは主にセラにこの世界について教えてもらいソーレルが帰ってくるのを待った。
ソーレルは国王と共に戻って来た。
「お主が弟子にしたいとソーレルが申す者か。うむ小隊に入れ、ソーレル、其方の養子として構わん。ただし、身分は冒険者とすることだ。王国の兵士として雇っては外聞も悪く、この子の将来にもよくないだろう。」
「ハッ、ありがとうございます。」
手続き等もあるので正式にとは言えないがこれでサスケはソーレルの養子となったのである。
「そういえば、この子はウィルと同じ位の歳ではないか。」
「ウィル王子とですか、ウィル坊は今、十四歳でしたか。それならば同い年ですね。」
「ならば、ウィルも呼ぶとするか。」
国王は護衛として連れて来ていた二人の騎士のうちの一人にウィルを呼んで来るよう命じた。
ちなみに第十七小隊はセラ以外は国王に挨拶をした後、隣の部屋へと移っているので、部屋にいるのは国王、国王の護衛として騎士が一人、ソーレル、ソーレルの護衛としてセラ、そして、サスケの五人が部屋の中にいる。
国王とソーレルは今回の小隊の遠征の結果についての詳しい話をしており、サスケはセラに魔術文字の勉強を見てもらっている。そんな時にノックの音がする。
「おじい…陛下、ウィリアムです。入っても宜しいでしょうか。」
「うむ、構わん。」
入ってきたのは茶髪でサスケと同じ年ぐらいの少年である。
「彼は陛下の孫、いわゆる王子じゃ。彼の名はウィリアム・ドラグーン、王太子の嫡子じゃ。」
ウィリアムは軽く、サスケのほうを見たが直ぐに国王へと視線を戻す。
「それで何か御用でしょうかおじ…陛下。」
「言い難いならば内輪であるから陛下でなくて構わん。それで用じゃが、知っておるとは思うがこちらが国父ソーレルだ。明日からお前に魔術を教えてくれる。」
「宜しくお願いいたします。ソーレル殿。」
「そして、この子はサスケ。転移者だ。お前への指導はこの子と一緒に行われるから、挨拶をしなさい。」
「ウィリアム・ドラグーンです。宜しくお願いします。」
「サスケ・アマノです。こちらこそ宜しくお願いします。」
ウィリアムとサスケはお互いに挨拶をする。
「ソーレル、明日からのウィルの指導をよろしく頼む。」
「お任せ下さい、陛下。」
国王は立ち上がり、扉へと向かう。
「仕事があるから行くぞ。ウィル来い。」
国王はウィルと一緒に部屋から出ていく。サスケとソーレル、セラも隣の部屋に居るエマ達と合流し,小隊の寮へと向かう。
特務第十七小隊の寮は王城に近い地上三階、地下二階建ての建物で二階と三階に個室がそれぞれ五つずつ風呂とトイレが一つずつあり、サスケは三階の部屋を与えられた。一階にはリビングとキッチンがある。地下は魔術で強化された修練場となっている。
サスケが寮に来るまでに買っていた服をしまっていると部屋にセラがやって来た。
「明日は六時に起きなさい。朝食を食べたら今日買った修練用の服に着替えて地下の修練場に来なさい。体術の修練をするから、分かった?」
「はい、分かりました。」
その後、小隊の全員で夕食を取り、サスケは風呂に入り直ぐに寝た。