第一話 転移
夜中にふと、目が覚めて水でも飲もうとするのはよくあることだろう。ここでもある少年が夜中に目が覚めたらしく水を飲もうと自分の部屋を出てキッチンに向かおうとしている。
少年の名前は天野冴介。日本の東京に住む中学二年生。つまり、十四歳の少年だ。
冴介がキッチンへと続く扉を開ける。そこへ寝起きの冴介にとってきつい光が射し込む。目が慣れてきて目を開くとそこに広がっていたのは現代の地球では見られないような広大な草原だった。
「…なんだ、これ。」
冴介は周囲を見渡して何かないかを探す。すると丘の反対側に煙が見えた。冴介は他にどうしようないのでその煙を目指すことにした。
丘の上へとたどり着くと下に野営地が見えた。煙が出ているのはあの野営地かららしい。
そのまま丘を下りて野営地を目指す。野営地側も冴介に気づいたようで、数人が近づいて来ている。冴介は近づいてくる人に声を掛ける。
「すいません。」
「Jfyfuzvjpggxまに22kvl,fzfxoh@j」
言語が違うらしく冴介と相手の話は通じなかった。すると、老人が一人前へと出てきて何かを呟く。
「J/rlbfsBX」
サスケは何か違和感を感じた。
「どうじゃろう翻訳の魔術をかけたのじゃが言葉が分かるかのう。」
老人の話した言葉が分かるようになった。
「はい、分かるようになったんですけど、魔術ってなんですか。」
冴介にとって魔術というのはゲームや小説のなかでしかないもので現実には存在しないものである。
「魔術を知らぬじゃと…。お主、転移者か。」
「転移者って言われても」
「ふむ、お主先程まで全然違うところにおったが気付いたらこの草原に来てたとかではないのかのう。」
「そうです。」
「ならばやはり転移者じゃ。転移者であるなら行き場もなかろう儂らと一緒に来るかのう?」
冴介は確かに行き場もなく、この世界について何も知らないので着いていくことに決めた。
「はい、お願いします。」
「それでお主の名は何というのじゃ。」
「サスケ、アマノサスケです。」
魔術とは何かは結局分かっていないが混乱しているサスケは気づいていなかった。
その後、野営地へと移動したサスケは老人によって老人にいろいろと説明を受けていた。
「まず、儂らは龍王国という国の特務部隊の一つでの仲間は儂を含めて六人じゃ。まずは儂じゃな。儂はソーレル=ドラク=フローズじゃ。種族は竜人族じゃな。基本魔術師じゃが、槍や杖を使った戦闘もできるぞい。」
「竜人族って人と違うんですか?」
「おお、そうか 。種族についても同時に説明する必要があるようじゃな。この世界には人、お主のような種族を人族と言い、他にもいくつもの種族をまとめて人というのじゃ。竜人族は祖先の竜によって適正が異なっての例えば儂は高いものから順に氷、水、風、雷、土、岩という感じじゃな。それに身体能力も高い者が多い。後、全体的に肌が鱗に覆われておるの。」
そういうとソーレルはローブの裾をめくり、腕を見せる。その腕は確かに鱗に覆われていた。
ソーレルの外見は一言で言うならば某亀の仙人に近い。そこに青みがかったローブを着ている。
そこでサスケが気になっていた魔術について聞く。
「あの属性とか魔術って」
「む、確かに説明しないとならんのう…。魔術と属性については隊の者を紹介してからでもよいかのう。」
ソーレルは少し考え、後でまとめて説明することに決める。
「分かりました。」
「そうか、それなら次はセラかの。」
ソーレルがそう言うと赤毛の若い女がソーレルの隣へとやってくる。
「彼女はセラ、人族じゃ。多分お主も人族しゃろう。セラお主から説明と自己紹介をしてくれ。」
「分かったわ。えっと私はセラ=クレトーラ。基本は前衛ね。武器は片手剣を使って盾を使うのが多いけど、一番得意なのは大剣よ。他の武器だと短剣なんかは一応使えるわ。後は人族についての説明ね。」
セラは赤毛短髪の背が高め(175cm程)のスレンダーな女性だ。上半身は長袖赤い戦闘服の上から胸部から腹部にかけて金属の軽鎧を着け、下半身はベージュ色のショートパンツ型の戦闘服に黒いロングブーツと黒く長い靴下という服装だ。
「人族はまぁ、外見的な特徴は大丈夫よね。属性適正に関してだと、平均的にはどの属性にも高くもないけど低くもないわ。ただ、家によって得意な属性は変わるわ。例えば私は火、溶属性の適正が高いわ。逆に対抗属性の水、氷属性の適正が低くなってるの、他の種族みたいに一切使えないって訳じゃないけどね。さて、こんな感じかな。爺さん、終わったよ」
「そうか、そうか」
ソーレルはそう言うと出発の準備を止めてこちらに来るとセラの尻を触る。セラは震えると
「…このエロ爺が!」
そう叫びソーレルを吹き飛ばす。その光景を見てサスケは思う。
(あの爺ただのエロ爺じゃねえか)
この内心から分かる通り現在、サスケは猫を被っているのである。
その後ソーレルは戻って来ると説明を始めた。
「次はエマじゃな。」
「はい、私がエマです。まざ、サスケ君に一つ言っておきますね。私たちに敬語を使う必要は有りませんよ。特にあのエロ爺には。」
「は、はい。」
サスケはエマのソーレルに対する態度に恐怖を感じる。
エマは銀色の長髪で、背は160cm程で、体型は普通だ。全体的に白い法衣を着ている。
「改めて私はエマ=セテルナです。この隊の回復役を勤めています。信仰している神様は…、これは言っても知りませんね。今度神々について教えてあげますね。私も人族なので種族については構いませんよね。」
そう言い、ソーレルに確認をとる。
「そうじゃのう…、神族について教えてあげてくれんかの。」
「分かりました。神族というのはいわゆる神様のことですね。他の種族と比べて基本の能力が圧倒的です。属性の適正は神様の司るものによって異なります。神族には眷族と呼ばれる種族がいます。それが天翼族です。まあ、眷族と言っても一部が神々に仕えているからなんですけどね。天翼族は神族の下位的な存在で、属性の適正も高いものの絶対的なものではありません。
神族についてはこんなものですかね。それじゃあ、私は出発の準備をしておきます。」
「よろしく頼むの。次はそうじゃのう…。キルト、お主で良いじゃろ。」
キルトは顔立ちは美形で緑髪緑目の男だ。服装は旅装束に近く、全体的に茶色っぽい長袖、長ズボンに深緑のコートを着ている。
「え、俺すっか。分かりましたよ。俺はキルト=フォーラム。弓使いだ。種族はエルフでこんな風に耳が尖っているのが見た目の特徴だな。」
そう言い、キルトは耳を指差す。なるほど確かにその耳はサスケの知っている人間と違い、尖っている。
「エルフの適正はだいたいが風、土、水のどれか一つが高いことが多い。俺なんかは風の適正が高い。それでエルフには上位種族がいて、そのまんまハイ・エルフというんだがこいつらは火、溶、毒、爆の属性以外の適正がものすごく高い。そいつにとって一番適正が高い属性は神族レベルに届くとみていい。こんなにも適正が高いのはエルフが風、水の大精霊の眷族だからだ。後は、エルフは手先が器用で細工や弓が得意だな。…エルフについてはこんなもんかな。爺さん、終わりましたよ。」
「いや、お主ドワーフ嫌いについて説明してないじゃろ。それと、ドワーフについても説明してもらおうかの。」
「そういやそうだな。エルフの大半が嫌いな種族としてドワーフっていう種族がいるんだが俺とかみたいにそこまで嫌いじゃない奴もいる。
それでドワーフについてだが見た目は小さいオッサンだな。身長は人族の子供程の大きさで太っており長い髭が生えている。そんな姿が成人したドワーフの姿だ。ドワーフは火と土の大精霊の眷族で火、土、岩、溶の適正が高い。後は水、氷の適正は皆無と言っていい。後は、この適正の高さと手の器用さを生かした鍛冶が得意だな。ドワーフもこんなものか。爺さん、今度こそ終わりましたよ。」
「そうか、残っとるのは後、椿とファルじゃの…。先にファルじゃな。」
「ウチですか。」
「そうじゃ。獣人族についての説明も頼むぞ。」
「はーい。ウチはファル=フレシア。狼人族っていう獣人族の一種の種族。獣人族は魔力の適正は血統とかにもよるけどそこまでは高くないの。でも、魔力量の平均値は他の種族と比べて高い。それに身体能力も獣が基準になってるから高い。だから、基本的にウチ達、獣人族は身体能力強化の魔術で身体能力を上げて近接戦闘をするものが多い。こんな感じかな…。あ、獣人族には種族がいっぱいあって種族ごとに考え方とかがあるから下手に獣人と話さないこと。話すならウチらの誰かと一緒にね。」
ファルは鈍色の狼耳と尻尾、髪で目だけ赤色のスタイルが良い女性だ。服装は薄着で青色の長袖のシャツと短パンの戦闘服の上に黒いコートを着ているだけだ。
「最後は椿じゃな。」
「何、エロ爺。」
そう言い、冷たいを目を向ける。彼女は黒髪黒目の美女で服は着物状の戦闘服を着ている。柄は黒い生地に二つ、三つ程の大きな赤や橙の花があしらってある。
「エロ爺呼びはないじゃろ…。椿、この子に自己紹介をしてやってくれ。」
「…分かったわよ。私は椿=一之瀬。極東の生まれだから一之瀬椿と言った方が語呂が良いように名付けられてるの。種族は人族と龍族のハーフよ。これでいいでしよ。」
そう言い、その場から離れ先程まで作業を行っていた場所へと椿は戻っ行く。
「全く、あやつは…。椿はのう。根は良い奴なんじゃがのう。」
ソーレルは椿が去った方を見ながらため息を吐きながら話す。
「…ともかくじゃ。これでこの部隊の者の名前くらいは覚えたじゃろ。それと補足するとじゃな、種族というのは主な種族のことじゃ。今の時代では純血の者などほとんどおらん。これも覚えておくのじゃ。それなら出発じゃ。あの馬車に乗っておれ。」
「はい。」
サスケは馬車へと移動する。サスケが去ったソーレルのもとにはセラが来た。
「で、どうだったの爺さん。」
「そうじゃのう。まず、魔力量が飛び抜けておる。10万はあるじゃろう。」
「そう…。で、実際どれくらいなの。」
「お主、分からぬのに聞くか、普通…。まぁ、軍の高官、だいたい佐官クラスじゃの。これでだいたいは分かるじゃろ。」
「それって結構凄くない?」
「そうじゃな。近接の才能や魔術式の組み立ての才能となると分からんが戦闘に関する最低限の才能はあるじゃろう。」
(それだけではなく、異世界に転移してきたというのに騒がず受け入れかけている精神力もすごいがの。ただ、認識が追いついていないだけかも知れんから、慰めなどはしない方が良いな。もし精神の強さが本物ならばあの子には申し訳ないが利用させてもらうとしよう。まあ、こんなことを言うと他の者にしばかれそうじゃがな。)
「それであの子をどうするつもりなの。」
「才能はあるじゃろうから、儂ら特務部隊で預かろうと思っておる。」
「そう。」
「それなら、出発するとするかの。セラと椿は儂と一緒にあっちの馬車じゃ。」
ソーレルはサスケが乗った方の馬車を指差す。
「分かったわ。」
「…はい。」
二つの馬車は7人を乗せ出発する。
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