プロローグ
『英雄』と聞いて何を思いべるだろうか。
例えば、
一人で千を超える軍勢から勝利を勝ち取る一騎当千の者
自由気ままに生き、友のために戦う者
人々を率いて、国をつくり上げる王となる者
竜を倒して、財宝と栄光を手にする者
数多の英雄が存在する。
彼らに共通するのは歴史に名を残し、語り継がれということ。
だが、その一方で名を残せず忘れられていく者達がいる。
英雄に相対する兵士として戦う者
英雄同士の戦いに巻き込まれる者
国をつくり上げる王に必要な犠牲といわれ見放される者
恐るべき竜に村を襲われ、大切な人を奪われる者
そんな名を残せなかった人々は忘れられていく。
英雄は良いだろう。例え悲劇の英雄だったとしてもその名は残り伝えられる。
だが、彼ら名もなき人々は違う。悲劇に巻き込まれようが、忘れられる。
最初は語られるだろう。
こんなひどいことがあった、可哀想にと。
しかし、英雄達が為す偉業に比べればどうでもいいことだ。
英雄が素晴らしいことを成し遂げた。
彼は素晴らしいと。
それだけで悲劇に遭った人々は忘れられる。
だからこそ名もなき人々は英雄へとなれない。そして、英雄へと憧れる。
そんな名もなき人々から英雄が現れたらどうだろうか。
人々はその英雄を他の英雄以上に讃えるだろう。
自分たちの無力さがわかるからこそ、ここからそこに至った凄さを思って…
これは本来、名もなき人々の一人として終わりを迎えるはずだった少年の英雄譚だ。