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幻界星霜 ウィスタリア ー幾度も移り行く転生者ー  作者: 弓削タツミ
ー屍界狂想 ネクロノワールー
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96.屍界狂想 ネクロノワール 10



ーーー翌日の早朝、シグくんが帰って来た時はとても驚きました。



全身ボロボロで、泥々に泥や血液、重油や鉄屑…。言い表わし尽くせない程の汚れに塗れて、身体中が酸性雨に塗れて錆が浮いて居たり、生体部分が爛れて居たり。

そんな状態でも右手からぶら下げていた大型の拳銃は汚れ一つ錆一つ無く、傷さえ浮かべ無いかの様に綺麗な状態を保っていました。

私は車両型の下半身で直ぐに詰め寄り彼の様子を尋ねましたが、片手で私を退けたシグくんは工房長のレオンさんへと尋ねました。


「あの男はどこに行った?」


しかしレオンさんは首を横に振り、


「知るかよ、あの人ぁフラッと現れたかと思うとまたフラッと消えちまうんだ。どこから来たお貴族様かは知らんが、もうかれこれ30年の付き合いになる。………ま、俺様が生まれる前からずっとあの見た目だっつーから、機人…あぁ、今や戦機と呼ばれるずっと前から、あんな調子なんだろうぜ?」


ーーーと、友人と呼んだ相手への評価を戴きました。

あの方への嫌悪感は感じられないのですが、やはり帝国と皇国への嫌悪感は拭えない様です。

そして機人…。

私の知らない時代には、そう呼ばれて居たそうです。

きっと私達の様な半人半機の生命体にも、今とは違って物では無く、人権を与えられていた時代があったのでしょう。


「ーーーそれで、修理は…改修はどの位で済む?」

シグくんが質問すると、レオンさんは唸りながら設計図?の様な貴重な紙を眺めて言いました。

「普通なら二ヶ月(ふたつき)から半年…って所か?…何分飛行技術なんて失われて久しいからなぁ。闇雲に元の形に戻した所でまともに飛べるかすら分からん。……ま、どんだけ急いだって最低でも一ヶ月半(ひとつきはん)は欲しい所だ。」


「一ヶ月でやってくれ。」


レオンさんの言葉にシグくんは無茶を言い始めました。

「おいおいおい!!無理に決まってんだろ!?只でさえ解析にどんだけ掛かるか分からねえってのに、無理矢理組めば最悪…爆発ボンッだ!………ニイちゃん、悪い事ぁ言わねえ、じっくり時間を掛けようや?」

「シグくん…レオンさんの言う通りですよ。空中で分解なんかしちゃったら…」

「頼む……。」

シグくんの力無い言葉に、私は思わず息を呑みました。

何時もの堂々とした声では無く、明らかに自信を、信念を折られた様な弱々しい声だからです。

一体昨日は何があったのでしょうか?

私は声を掛けられずに居ると、レオンさんは腕を組みながら彼へと問い掛けました。


「何か理由があるんだろう?言ってみな。話次第で考えてやる。」


シグくんは私達の現状を話し始めました。

皇国に追われてる事。皇国の最強兵器で在る特殊飛行スカッド型戦機『ジークフリード』に寄って右腕とシグくんが操る炎を奪われた事。それが他国は勿論のこと、皇国に持ち帰られでもしたらこの大陸其の物が焼き払われる運命すら想定出来る事。

そしてジークフリードは言いました。


『炎は貰ったぞ、シグルド。……返して欲しければ俺を追って来い!!』


つまり此方を誘うと言う事は、それなりに待ってくれると言う事だと思います。

大きなダメージを負ったのは何も此方だけでは無いのですから。

彼は自我を取り戻していた様に思えます。それを考えると、皇国に戻った線は薄いと思われます。

何故なら自我を取り戻した兵器等、扱い切れる訳が有りません。自分達を不当に狩り、勝手に所有権を振り翳して自分勝手に改造した元人間等、国に対する憎しみしか無い筈ですから、皇国側としては処分したいに違いありません。

ただ…それでもそれを隠して皇国に帰り、改修を受ける可能性も捨て切れないのです。

ですから、シグくんが焦る気持ちもよく分かります。


しかしそれでも、時間が掛かる事も理解出来ますし、何より…


「よぉニイちゃん。話は分かったが、今のお前さんで本当に闘えるのか?」


ーーーへし折れてしまった今のシグくんは、簡単に殺されておしまいだと思うのです。



ーーー

ーーーーー



根城にしている廃工場で、私はシグくんの頭を抱き締めて居ました。

私には片腕しか有りませんが、それでもそうしたかったのです。

シグくんならきっと立ち直ってくれると信じて。


ーーーおかしいですよね?

私は彼を許した訳でも、信じている訳でも無いのだと、自分に言い聞かせて居ました。

実際そうなのだと思います。

ーーー思っていました。


ーーーしかしそれでも、彼は私を助けてくれました。

死にたく無いと懇願し、殺してやると襲い掛かり、見極めると上から目線で見下していた私を…

縁も無いのに救い、殺そうとしたのに必要だからと受け入れ、実際に私を守るために命を賭けてくれて、名前もくれて、いつの間にかお互いに背中を預け合える相棒になってて…


お姉さんの事が有ったとは言え、それでもーーー



あぁ、なるほど。………多分、私はシグくんの事が…




「リンムレ…」

「はい、何ですか?シグくん?」

私は彼の震える様な声に精一杯の気持ちを込めて返しました。

…そして、シグくんから出た言葉は…。


「俺は弱い。…だから、強くなりたい。……お前を…姉さんを守れる位に、お前と共に闘える様に。」

力強い声でした。


「力を貸してくれ。……あの男を探したい…。その為にはお前の能力が必要だ。……頼む。」

「はい!…私達は…リンムレ達は一心同体、運命共同体ですから。…お任せ下さい。」


そう、この気持ち…もう私は自分に嘘が付けません。


「シグくん、私は…シグくんのことが……シグくんのことを、信じてます。…だから、もっともっと、頼って下さい。」

「あぁ、頼りにしてる。リンムレ。」



ーーー

ーーーーー



それから私達は再び工房へと訪れました。

レオンさんは腕を組んで怪訝な視線を私達にこれでもかと浴びせてましたが、シグくんは頭を下げて言いました。

「このままでは世界が焼き払われてしまうかもしれない。………俺が許せないのは私欲で俺達を無様に弄ぶ連中だ。其奴らを倒す為にはアンタの力が必要なんだ。………だから、少しでも早く仕上げてくれ。」

シグくんの震える様な声に、レオンさんは頭をガシガシと掻きながら顔を顰めます。


「坊主もこう言ってる事だ、力ぁ貸してやってもいいんじゃねぇか?」

そこに訪れた男性の一声に目を向けました。

先日の男性が入り口の前に佇んでいました。正直、目的の人物が向こうからやって来るとは思って無かったので、驚きました。

「要するに飛行技術の設計図が必要なんだろ?…俺が独自に開発部から捻り出して来たコイツが有りゃ十分か?」

男性がゴチャゴチャと機材やら工具やらが投げっぱなしにされた机の上に放り投げた紙のスクロールを拡げたレオンさんは、ゴクリと生唾を飲み込んで尋ねました。

「おいおいアンタ…マジで何者なんだ?…まさか、皇国の…」

「あぁ?んな訳あるかよ。あんなゴミ臭ぇ国にお仕えだぁ?反吐が出る。」

とても酷い言われ様ですが、この際関係有りません。この設計図が本物かどうかはレオンさんの鑑定で大体予想が付きました。

折角の好機を生かさない理由が有りませんから、私達としては是非とも利用させて戴きたいです。

………そんな私の胸中とは関係なく、シグくんは頭を下げ直して男性に懇願しました。


「俺は強くなりたい。…何故、何の為に強くなりたいかははっきりとは見えて来ない…が、一つだけ信念を持って言えるのは、リンムレや姉さんを守り抜く為だ。…だから、頼む!俺を鍛えてくれ!!」


言葉足らずなシグくんにしては珍しく考え抜いた答えなのでしょう。

そんな彼の力強い言葉に、男性は見下ろしながら言いました。


「………ま、及第点って所か?…まだ寝ぼけた事抜かしやがったら俺がぶち殺してた所だったが…」

今回は煙草を咥えてませんでした。

そして、いきなり投げ飛ばす事もしませんでした。

「教えを請うなら敬語だ!!それから俺の事は今後、師匠と呼べ!!返事は!?」

男性の檄にシグくんは驚き飲み込めてませんでしたが…


「あっ………あぁ、……いえ!!はい!!師匠!!」




頭を上げて覚悟を決めた今の彼なら、きっと強くなれるのだと、私ことリンムレは思うのでした。

うちに猫がやって来た!!




ので、しばらくおサボりしてしまいましたすみません。

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