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幻界星霜 ウィスタリア ー幾度も移り行く転生者ー  作者: 弓削タツミ
ー大樹の王国『スロートリング』ー
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84.エルキュールちゃんの事情

こんにちは、久しぶりも久しぶりなエルキュール=グラムバルクです。

今日も元気に楽しい一日をメイキングしちゃいますよー!


それにしても、どうしてこんなに久しぶり感を醸してるのでしょう?まぁそれは置いておきます。

件の竜の帝国からの襲撃事件より三週間が経ちました。

そんな私達は街道に沿ってスロートリングの中心街を目指して居ます。

道中、様々な村に立ち寄り興業を行いながらのゆっくりとした旅です。

ここまでの旅路はとても緩やかな物で、途中現れた山賊………盗賊?や魔物、凶暴な動物等に襲われたりもしましたが、現在は目的地が同じだと言う他キャラバンさんに同行して割と安心な興行を行っております。

あ、もちろん父母への手紙は忘れてませんよ?


襲い来る魔物は大した事が無いらしく、青いスラたんやら原種ゴブリンとか言う凶暴で人と親しく無い種とか、ローパーやらが襲い掛かって来てるみたいなのですが、特に問題無く皆さんで対応してました。

寧ろ人間の方が恐ろしいです。

飼い慣らした魔物や動物をけしかけて来るので、其方に気を取られて居る間に背後から襲撃されたり、時には私やシャルロットちゃん、とてもよく目立つ沙霧ちゃんが人質にされ掛けたりもしました。

ただ、最近私はあの黒い力をちょっとだけ自分の意志で使える様になって来ましたので、意外と自分で対処出来る様になって来ましたけど。

あ、使えると言っても弓矢に黒いオーラと言いますか、ドロッとした恐いのを纏わせる程度なんですけどね?



ーーー所で最近私はよく服を作ってます。

ん?今どうして今更?とか思いませんでした?思い出したかの様にちょっと混ぜ込んでるだけだとか、タイトル詐欺とか思ってませんでした?

だって仕方ないじゃのいこ。

…作り始めた理由は単純に、この大陸は島国で在るファルネリアと違って雪が降る位に寒いのです。

何せ、現在地球の日本で言う所の二月半ば程ですよ?この星でも二月ですよ?霜が降りてるので、これでも一面銀景色にならないだけマシです。


そして私には着替える服や、冬を越す為の服が有りません。

地味に服を買えるだけのお金も有りません。出費ばかり激しかったのでいつかのバイト代も底を付いてます。

ではどうやって服を作ってるのかと言いますと、始めは商隊で要らない生地を貰ってパッチワークです。ちょっとホラーっぽい見た目でしたが、ポップな要素も取り入れてやりました。

出来た服をアリシアに着せてたりしたら、シャルにゃんが自分の分もと言い出しました。

それで作って着せてたら、今度は沙霧ちゃんが私も欲しい…と。流石に和装は目立つと自覚してたんですね?

二人の子供に着せてたら、シャリアおねー様から


「折角だし、エルたそのブランドで作ってみたらどう?」


…と、初期費用替わりに生地やら小物やら裁縫道具やらをお貸ししてくれました。

貸してくれたのは一般家庭用のミシンとかその他道具でしたので、シェリーさんに教わりながらなら、私でも扱えたのも有りました。

まぁつまり、私の借金が増えたのと、道中の村々で売れた分から少しずつお給料が貰える様になりました。

因みに御同行の他のキャラバンさんからもちょっとだけ作製依頼が戴けたりしましたので、地味に凄い事なのでは?…と、思います。

………ただ、毛皮をなめしてたのが多い気も知れませんが。

とにかくブティック・エルキュールの開店です!!




ーーー

ーーーーー



………そんなこんなで仕事に追われて数日目の早朝。今朝の事でした。

トラック内に作って貰った作業用の一室。その長椅子の上で私が目を覚ますと、とても久し振りに布団が膨らんでました。


はいはいアリシアアリシア…と思ったでしょ?正解です、アリシアです!


フワッとした茶色い毛が私の布団の中から生えてました。


ーーーそして私は脱がされてます。極寒ゴッサムの中ですよ?ブチ犯してやりましょうか?


なんだか日頃の多忙のせいでムラっと来た私は取り敢えずアリシアを脱がし返して、肌と肌を重ね合わせました。

アリシアの温かな体温を感じて、アリシアの甘酸っぱい匂いにクラっと来て、思わずアリシアの頬をペロリと舌で舐めるともう自分を抑えられませんでした。

アリシアの小さな身体に自分の身体を擦り付けて、小さな手を取って指先をちゅぱちゅぱとしゃぶり…………って、アリシアが涙目で私を睨んでました。


「んぎぃ……エルキュール、これどう言う事?」

「なんかアリシアをギューってしてたらつい…」


やっぱりアリシアは私を睨んだままです。ああ可愛いよアリシア!アリシアぺろぉ!


「………わたしだって、色々聞きたい事も有ったし、我慢してたのに…」


そう言うアリシアの瞳を覗き込むと、少し悲しそうに見えました。


「聞きたい事?」

「うん、コシミズキヨリって何?……エルキュールは前世で男の人だったんだよね?」

アリシアの質問に私は思わずキョトンとしてしまいました。


「コシミズキヨリ??」


アリシアが言ってる意味がよく分かりませんでした。


「私の前世は『ジェシカ=バーンズ』って、教えたよね?ちょっとアリシアとファミリーネームが似てて嬉しいって話したじゃない。」


その瞬間、アリシアから身体を引き剥がされて、彼女は私の呼び掛けに一切応えてくれませんでした。




ーーー

ーーーーー



「おっはよーエルたそ〜!」

「シャリアおねー様、その呼び方やめましょーよ。不特定多数の何かに殺されますって。主に私が!」

私が服を着替えて朝食の為に皆さまの集いに参加すると、相変わらずも相変わらずな隻眼のシャリアおねー様が出迎えてくれました。

私は朝から不完全燃焼でフキゲンなワルツを踊ってますよ?

「おやおやぁ?エルたそ何やら欲求不満?おねーさまが相手してあげよっか?」

「じゃあアリシアにフラれたらお願いしますねー?」

私はシャリアおねー様の冗談に冗談で返しました。

シャリアおねー様ガチ勢で此方を睨んでるマックスさんが怖すぎて草も生えませんぞ?

「うん、マジで何があったのよ?…エルたそのシャリアおねー様が相談に乗ってあげるわよん?」

「あー…実は…」

私は今朝の出来事をちょっと脚色加えて話しました。アリシアを襲い掛けた事は伏せたから、添削?

すると、シャリアおねー様は何やら真面目そうに唸って此方を見てました。


「思うに…君はどうやらとある特定の状況後に人が変わった様に性格の変化が見て取れるね。」


背後からの声はアスクレピオスせんせーの物でした。

「あら、おはようアスクレピオスせーんせっ!あたしとエルたその話、聞いてたのー?」

「うむ、コーヒーを戴きに来たらね。すまない事をしたと思うが、私で良ければ相席してもよろしいかな?」

「あ、どうぞどうぞ」

こうして私とシャリアおねー様の会話にアスクレピオスせんせーが加わりました。

「それで、結局どう言う事です?」

私の問いにアスクレピオスせんせーは美人さんな顔を引き締めて答えてくれました。

「君は以前、自分が男性だと言っていたそうだね?」

「いえ、知りませんけど…」

「エルたそは覚えて無いみたいだけど、結構独り言で言ってたのよん?…まぁあたしもその頃はただの戯言たわごとだと思って聞き流してたけどねー?」

「えぇー!?マ?シャリアおねー様ひっどー!!」

ケラケラと笑い合う私とおねー様に、アスクレピオスせんせーはコホンと咳払いを一つ。

「次に、私が聞いた時は『コシミズ・キヨリ』と、君は名乗って居たんだ。これを君は覚えているかい?」

「マジのマジ?」

「マジ過ぎてやばみよん?」

ほげー、全っっっっ然記憶にございませんわ。

「そして今回は『ジェシカ=バーンズ』、これは今の君の名前で良いんだね?」

「いや、今のも何も私はジェシカで可愛い可愛いエルキュールちゃんですよ?」

「あぁ、なるほど。」

なになに?シャリアおねー様までマジ顔ですよ?

引かれてる?ドン引き?

泣けるぜ。

「つまり私が思うに、君は死を体験した事で多重人格、要するに乖離性同一障害を患ってる可能性が見られる。ーーー現に進行症状として乖離性健忘が見て取れるからね。」

ーーーえあ!?多重人格者なの、私!?後、健忘って、ばぁ!?ばぁなの、私!?

「ーーーしかし、前世の記憶だけが曖昧で、今世での前世に関わる部分意外はしっかりと記憶してると言うのがまた奇妙だね。」

「ぐぎぎぃ………死に掛けて変わるとか、物語の主人公か私。」

こうなったらもう第四の壁突破してやりましょうか?ほら!私をすこれ!なんか見てる人が居れば!!


「これはまた、かなーりSF地味た話になるけどぉ、エルたその別次元のエルたそと入れ替わってる線も考えられない?記憶だけが微妙にズレて入ったりとか?」

ーーーはぁ?

シャリアおねー様の突飛な発案にはいつも頭を悩まされますが、それに関してはアスクレピオスせんせーが否定してくれました。

「私は全ての事柄には科学的な理由が見出せると思うがね。………最も、魔法と科学が入り混じったこの世界に於いて、それが何処まで通じるのかは不明だが。」

「それもそうねー。変な横槍ごめんなさいな。」


むーん…なんだか二人の間で難しい話に発展し始めて、エルキュールちゃんは頭がフットーしそうですよー?

………ここは場を和ませますか!


「とりあえずまぁアリシアにそれ私からは言わない方がいいですよね?」

「そうねぇ、あの子もかなーり拗らせる傾向にあるから、少しずつ接してあげたら良いんじゃなぁい?」

「よーし!そうと決まれば、私がアリシアにご飯作ってあげよう!!…もっちろん、シャリアおねー様とアスク………あー、ピオスせんせーにも作ってあげちゃいますよー?」

「ピオス…先生か、…ふふふ」

お、喜んでる?

「え?マジ?マジのマ?エルたそ、デレ期到来?結婚しよ?子供、産み付けてあげるわよん?」

「ふむ、地味に君の朝食はここ最近随分と美味しいからそれは嬉しいね。ーーー人格が変わると料理の味も変わるのだろうか?」

「難しい事は分からないですけど、今は私に出来る事を全力でやらなきゃ損ですから!ね?後、結婚はアリシアにフラれたらですよーだ。」

にひひと笑ってシェリーさんの所へ駆け込み朝食の準備を始めると、二人は遠巻きに眺めて何か話し合っていました。



ーーー今朝の朝食は芋の甘辛スープに、ハムと野菜のサンドイッチです!

ぶっ込みました。

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