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幻界星霜 ウィスタリア ー幾度も移り行く転生者ー  作者: 弓削タツミ
ー大樹の王国『スロートリング』ー
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83.竜の勇者一行、数多な運命との邂逅

ーーーーふふふ、こんにちは。皆様のアイドル、和泉守いずみのかみ天沙霧あめのさぎりですよ?


今回、私はとある目的の為に此方のシャリア商会と言う御一行に監視の体で参加させて頂きました。

見てて下さい、若君!!私が必ず目的を果たしてみせますよ!!



ーーー

ーー



ーーーセシル達が去った後の事ーーー



「ーーーようやく目覚めた様ですね。」

「ーーーふん、小娘か。………何か臭うぞ?」

「ーーーっ!!」


此方は貴方が起きるまで貴方を回復して待ってたと言うのに何たる侮辱でしょうか!?ええ漏らしましたよ?漏らしましたとも!!


「そんな事よりも若君、まずは状況の把握と情報交換に努めるべきです!!」

「どちらも同義だな。」

「揚げ足は取らない!」


煩そうに耳に指を詰める若君にギャンギャン吠える私でしたが、コホンと咳払いを一つ。気を取り直して私はまず若君から此方の状況をお聞きしました。

どうやらあの氷機の勇者を名乗る芋侍との闘いは、若君が敗北したとの事でした。

私は絶句しかけましたが、おかしな点を聞いてみました。


「それはおかしい…。あの男からは微塵も勇者の魔力も波動も、神竜様の加護さえ感じないのですよ?」

「うむ、だが事実、吾は勇者の力と同等以上の力に押し負けた。…それに氷神竜の加護を受けぬ勇者を喰らった所で勇者の力は奪えぬ。……吾々が王共に担がれたか、将又はたまた何か裏が在るのか。」

「今の発言は不敬ですよ?………しかし、貴方がそう感じたのでしたら間違いなく何か言い知れぬ事態に陥って居るのかも知れませんね。」

「間違い無いのか予想なのかハッキリせよ。」

「ぐぬぬ…っ」


………兎に角、彼からの情報を聞き、今回起こっている勇者の使命に関して不備を覚えました。

そもそも今回、勇者の使命として伝えられたのは


・勇者同士で闘い、力を纏め上げ真竜へと至る事。

・世界を喰らう異邦者エトランジェ共を根絶やしにする事。因みに今回の異邦者とは星蝕者共を指す。

・星蝕者の核となる存在、物質を見つけ出し、確実に葬り去る事。

・場合によっては魔族側の勇者とも結託する事になるやも知れない。


ーーーと、大体この辺りでしょうか?

この条件を満たす上で、選定を受けた勇者が加護を得ていないので在れば『力を纏め上げる』と言う条件が満たせない事になります。

もしくはそもそも本来の目的が別物で在るのでしょうか?この条件を隠れ蓑に、各国の元首、または神竜達の間で何か取り決めがされていたり………いえ、今ここで頭を捻らせても答えには辿りつけないでしょう。

ーーーで在れば。


「若君、一先ずこの話は横に…。此方の状況ですがーーー」


私は現状、抵抗者の制圧は完了済みで在る事。

大樹の王国が誇る獣神の勇者を確保済みな事。

若君が戻られるまでは捕虜に手出しはしない事を言い付けた事までを報告しました。


「ーーー成る程、ではすぐに戻らねばあの血気盛んな戦争狂ウォーモンガー共が殺し兼んな。」


ククク…と笑う大将に対して私は『あんたが言うなよ』ーーーと、思いましたが敢えて言いませんでした。

その代わりに……


「ふふふ、お待ち下さい。………どうやらエゴの星詠みの預言は真実だった様ですわ。」

「ほぉ?」

どうやら食い付きました。

私達がここを訪れる切っ掛けとなった場所。

エゴと呼ばれる村に居た星詠みと名乗る女性の言葉に従ったのですが…

「南西の海辺にて、運命が動き出す。…待ち構えるは真実への道標。手離した先に待つのは虚無か死か闇か。ーーーでしたか」

星詠みの女性がハープの音色を奏でながら紡いだ詩歌しいかを私は淡々と伝えました。

どうやら星詠み様は私共一般人には見えない何かが見えてる様です。

若君はちっとも詩を理解しない質なのですが、何故かこの言葉にだけ理解を示してくれました。何故なのかはちっとも教えてくれませんでしたが。

虚無か死か闇かヴォイド・デス・ダーク、随分と大袈裟な物だと思ったのですが、ふふふ…」

クスクスと笑う私を怪訝に思った若君は、私の頭を珍しく撫でてくれました。


「私が闘った相手なのですが、恐らく私と同じく神竜様の加護を受けた巫女で御座います。」

「ーーーお前にとって大事なのはその後に聞いたと言う預言で在ろう?」

「ええ、私だけの秘密ですが。」


ーーー藤色の空の下、茜引く海原で、眩き白光の君。雪原の音色を奏でる人よ、永遠を誓い優しく包み込んでくれるでしょうーーー


どう聞いても恋唄ですよね?「運命が貴女を待っています。手を引くかは貴女自身が決める事。」ーーーとの、預言者様のお墨付きなのですが、これでお年を召した中年男性の方でしたら嫌だなぁ…と思ってたのですよ?

ーーーどちらかといえば私は男性よりも女性を好みますので。


そこに居たのは全身が真っ白な可愛らしい少女でした。

ーーーまぁ流石に出来過ぎかと思ったのですが、彼女が振るった力を見て納得しました。

恐らく彼女は先程話題に上がった氷神竜様の加護を受けた巫女です。全身が雪の様に真っ白なのもその説を推してます。

私が炎神竜様の加護を受けて居る様に。

何故なら私の一族の髪は………真夜中に差し掛かる空の様な濃紺な色だったのですから。

ーーー恐らく、私にとっての運命の相手とは、あの真白い彼女を指すのでしょう。



ーーー結局、今後の方針としては、あの一団に間者を付ける。戦線は今の所、押し下げても問題無いでしょう。理想は制圧でしたが。

獣神の勇者に関しては、今は保留。氷神竜の巫女と共に監視対象に加える。

若君は一度祖国へ戻り、今回の件について問う事。そして氷神竜が住まう機械の国へと赴き、真実を問う事。

その後は合流に向けて尽力する手筈を整えましたが、この一団を暫く機械の国へ近付けない様にする必要が出て来ました。

「氷機の勇者で在れば吾を神竜に近付けさせないのは容易い事か。………で在ればやはりあの一団に溶け込める者を…」

私は思わず両眼をキラキラと輝かせて若君を見詰めてしまいました。

「………分かった、年若いお前ならばあの一団も油断するだろう。………しかし、お前が殺されれば吾は奴等を地の底まで追い詰めて殺さねばならん。……一日三度の定時連絡を忘れるな」


私はパァァッと表情を明るくさせて答えました。ーーーまぁ表情筋は余り育ってませんが。


「和泉守・天沙霧、謹んで承知しました。」



「あぁ、それから…」


若君はこの後に及んでまだ何か有るのでしょうか?折角決めたのに今度は何を………と思うと、表情を険しくこう言い切りました。



「青い民族衣装の女には気をつけよ。………アレは得体が知れん。」



ーーーーー

ーーー



ーーーその後、私達が戻ってみるとそこには、折角捕らえた捕虜があっさりと放たれ地面に突っ伏していた我等が親衛隊の三人組 (+一匹)の姿でした。



ーーー

ーーーーー



ーーーそれからややあって、若君の指令により遥か後方で控えて居た一個軍団の引き揚げを済ませて祖国に帰る若君を見送ったは良い物の、私は今更ですがあの一団に溶け込めるのか不安になって来ました。

因みに一部を除いて若君の指示によれば軍団の大多数は今から神聖王国への奇襲作戦ですか、お疲れ様です。

ーーー本当に勇者特権とやらは自由で勝手気儘ですね?


そんなこんなで現在に至る訳ですが、当然私みたいな異物が簡単に受け入れられる筈も無く…。



「それで沙霧ちゃん?お茶だっけ?どうぞ?雑巾の出し汁よん?」


あからさまに古臭いイジメを受けて居ました。

ほんのり涙目で湯呑みを受け取る私なのですが…


「ヤッベェェェェ!!何この子!冗談を真に受けちゃってカッワイイーーーっ!!」



………ちょっと社長さんとは仲良くなれる気がしません。………あ、いえ、監視目的と言う建て前なので別に構いませんが。


「もぉ、シャリアさんやめなよ!!この子の心象悪くしたらまたアレが来るよ!?」


どうやら立ち直ったらしい獣神の勇者が守ってくれました。

ーーーあ、いえ、ちょっと震えてますね?これ。


「何よアリシアちゃん、おねー様より密偵の肩を持つの?敵なの?それともまーだビビってんの?」

「そりゃ怖いよ!………怖いけど、戦わなきゃ皆を守れないし、戦わなくてもいいなら避けられる戦いは避けるべき!だよ!」


そうですそうです、勇者様もっと言ってやってくだしあ


「それ、あたしの妹に勝手にキスしてんのよ。姉としては妹に無理矢理されんのは許せない訳。アリシアちゃんはエルちゃんがどっかの誰かに無理矢理ヤられたら笑って許せる?おわかり?アンダースタン?」

「アッハイ」



ーーーーあ、私にとってのラスボスこの人だ。




私はその日、誠心誠意のDOGEZAと言う物を体験しました。する側で。

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