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幻界星霜 ウィスタリア ー幾度も移り行く転生者ー  作者: 弓削タツミ
ー大樹の王国『スロートリング』ー
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81.穿孔式殲滅機動神機・戦艦『シグルド』



「ふぁいあぼると!ふぁいあぼると!!」

「おや?如何されました?暖かなそよ風を吹き掛けて、私共を許さないのでは?」


漆黒の空の下、真冬にも関わらず生温い雨が降り始めた頃、シャルロットの必死の魔法も空しく、沙霧と名乗る少女が飛んで来た炎の玉を軽く扇子おうぎで薙いだだけでアッサリと打ち払われてしまいました。


「流石に退屈ですよ?お嬢さん?」

ーーと、滑る様な動きでシャルロットの真後ろへと周ると、沙霧は扇子で脳天を打ち抜きました。

「ぎゃっ!?」

ウサミミのフードに守られて居たお陰か、大して痛みは感じなかったものの、意図も容易く攻撃を許してしまった事がシャルロットの心に怒りの炎を燃やしました。

そして、最早周囲に気を遣う余裕が無くなってしまったシャルロットは…


「コールド………ブレス……」


声を震わせ魂を込めて魔力の篭った言葉を口にしました。



するとシャルロットの全身から氷神竜の加護に寄る冷気が溢れ返り、彼女の前方二十メートル程を凍り付かせる吐息を吐き出しました。

「ーーーッ!」

しかし、これに対して全身から炎神竜の加護を受けし炎熱が揺めき扇子を大きく真横に一薙ぎすると、自分へと迫る氷の波動を総てを焼き尽くす炎の波動で打ち消しました。

するとたちまち周囲に霧が立ち込めました。


視界が悪い中、シャルロットが魔力を頼りに周囲を探ると、急に背後に気配を感じて振り向くとそこにはあの巫女装束に身を包んだ少女がマジマジと品定めをする様に周囲をぴょこぴょこ周りながらシャルロットを見て居ました。


「なっ…なんなの?」


シャルロットが恐る恐る尋ねると、巫女の少女はふんふむと鼻を鳴らして答えます。


「なるほどなるほど、貴女が……どれどれ?」


そのまま沙霧はシャルロットの唇に自らの唇を重ねると、シャルロットにはもう意味が分かりません。

目の前の人は敵なのに何故キスをして来るのでしょうか?

目の前の人は大切な姉を、大切な親友を、大切な仲間達を傷付けた人達の仲間なのに、どうして自分を愛おし気な瞳で優しく微笑むのでしょうか?


意味が分からないシャルロットは思わず右手を空に掲げて叫びました。


「アイススパイク!!」


何も無い空中に巨大な氷の杭を出現させた白いウサギの様な少女は、顔を真っ赤に染めて困った表情で巫女服の少女へと創り出した氷杭を打ち込みますが、舞う様な動きでアッサリと避けられてしまいました。


「んっ……ふふふ、そうでしたか、貴女が私が求める……ふふふ」


尚も嬉しそうに笑う少女の姿にシャルロットは最早何が何だか理解出来ません。


「おねえちゃんを、アリシアちゃんを、みんなをきずつけといてなにがおかしいの!!」


シャルロットの渾身の叫び声に沙霧は答えました。


「貴女が………貴女みたいな可愛らしいお嬢さんで良かった………と思っただけです。」


そして炎熱の鎖を扇子から作り出すと、シャルロットに向けて放ちました…が。


「アイスピラー!!」


シャルロットが地面を思いっ切り踏み込み現れた氷の柱に阻まれ、氷に巻き付き溶かして行きました。


「アイシクル…ブレイク!!」


シャルロットが柱を利用して宙空へ跳ぶと、沙霧が居る場所へ向けて氷で出来た大きな拳を打ち込みますが、これを優美な足運びでいとも容易く避けた少女は赤い炎で出来た不死鳥が描かれた朱雀陣を空中に描き、シャルロットが着地するのと同時に起動しました。


「炎形・爆鎖陣。」


自分を締め付ける炎の檻と鎖にシャルロットは踠き抜け出そうとしますが思う様には行きません。

「うぎぃぃ……はーなーせぇー…」

「いいえ、貴女は連れて行きます。……そして」

何度も何度も力任せに抜け出そうと試みるシャルロットでしたが、やがて諦めたのかぺたりと檻に座り込みました。

「………おや?諦めましたか。最初からそう…」


沙霧が言い掛けた時、シャルロットの魔力が一気に弾け飛び、彼女を中心に巨大な氷柱が爆裂した様に周囲を侵食しました。



ーーー

ーーーーー





ーーーー再度焔の翼を広げた竜の勇者紅蓮に寄る空中からの業火は確実にセシルを追い詰めました。

………何故なら彼がいくらバーニアやスラスターを用いても、高く跳躍する事は出来ますが、継続して宙空を舞う事が出来ないからです。


「卑怯とは言ってくれるなよ?………貴様相手に出し惜しみはして居られぬからな。」


言う側から焔の弾丸を雨霰と降り注ぎ続ける紅蓮の猛攻に、セシルの身体は段々と焼け落ちて行きます。

しかし、セシルはこの状況にも関わらず両眼を閉じて居ました。

ーーー想いに耽って居ました。



ーーーーー


『シグ君!後方10㎞より敵影!!10秒後に接敵します!!』



『右手換装、バリアアームです!!………大丈夫、シグ君の痛みは私達が背負いますから。』



『ーーーどうして!?なんで!?…リンムレ達を置いて行っちゃうんですか!?…どうして!?』



ーーー



ーーーセシルは思い出していました。



ーーーーー



『あーらぁ、アンタが新しくウチに入った子?ウチは厳しいわよん?』



『シャルの…力…みないで…』



『俺は姉御と妹さんを護る為にここに居るっす。………もし危害を加えようとしたら………分かってるっすよね?』



『おばちゃんはね?あんた位の馬鹿息子が居るのよ。だからあんたをみてるとつい…ね?………おばちゃんで良かったら力になるから、元気出しな!』



ーーー



ーーーー



『ククク…闇より目覚めし我が剣、貴公等に預けるに相応しいか見定めさせて貰おう。』

『そいつ大体そんな感じだから無視でいいからね』

『えっと………よろしくお願いします……。』




『安心しろ、俺も魔王シャリアからの指令だ。貴公の剣となる事が我が使命。故に俺に委ねろ。』

『分かった、セシルの実力は知ってるから、背中は預けた!』

『承知した。』



ーーー


ーーーーそして裏切ってしまった。



ーーー




『あのね、姉さんの事ばかりじゃ無くて、もっと周りの人の力になってあげて?……あなたにはその力が有るじゃない。………姉さんとの約束よ?』





ーーーーあぁ、そうだ。……俺には…約束が…。




「名残惜しいが、さらばだ。氷機の勇者よ!!」


「俺には………俺はーーーおなご達を、美界エトワールを守る使命こそ俺の宿命だッッッ!!!」


セシルの咆哮が木霊しました。



「俺の総てを受け止めろ!!ーーー穿孔式殲滅機動神機・戦艦『シグルド』!!ーーー『コード・ネクロノワァァァァァァァル』ッッッ!!!」



ーーーセシルの身体が真っ白な光の奔流に包まれたかと思うと真っ黒な闇の噴流に飲み込まれ、そして虚無の重力波が渦巻きました。

紅蓮は一瞬仕留めたかと脳内を過ぎりましたが、その考えはすぐに頭から突き離しました。

何故なら、眼前に広がる異質な光景からとても歪で巨大な影が現れたからでした。



それは爆発の中から突如として生えて来たかと思うと悍ましい程の威圧感を放ち、戦艦と言うよりは巨大な戦闘機地味た見た目で、更に言うと先端から両手両足の付いた人の形をした物が生えて居ました。

両手は歪に真っ黒で、総てを飲み込む漆黒でした。

右腕には巨大なレーザーキャノンが備え付けられており、戦艦部分より伸びた補助器具に寄って支えられて居る為、狙いに不自由は無さそうです。

左手には黒い刀身と持ち手部分に赤いラインが入った巨大な刀を携えています。

そして両足は巨大な狼の様な形をしており、顔の部分には赤い宝石の様な瞳が五つ程付いていました。

この歪で禍々しい戦闘機は、高速で紅蓮より遥か上空まで上昇すると敵を見下ろしたまま緩慢な動きで右腕の大砲を向けます。


「右腕換装………パルスキャノン。クロムブレード・セット。………各砲門、対物レーザー、照射ァ!!!」



戦艦部分より複数の砲門が眼の様に開くと数多のレーザーが紅蓮に降り掛かり黒き光の雨を降らせました。

「なっ!?……クッ…貴様ぁ!!貴様は一体……ッ!!」

紅蓮へと降り注がれた光の奔流を何とか避け続けますが、雨で視界が悪い中黒い光等交わし切れると筈も無く、幾つか被弾してしまいました。


「ーーー3.2.1…ファイア!!」

「グッ!?ぅおおおおおお!!!」


そして右手から放たれた巨大な黒い光弾は紅蓮のスレスレを通り抜け、遠く離れた山を削って消えました。


「出鱈目か!貴様ぁ!!!」


何とか反撃とばかりに紅蓮も光線を横スライドで飛びながら避け、焔の弾丸を放ち続けますが、戦艦部分の装甲に弾かれマトモな手応えを感じません。


「終わりだ……二波、シュート!!」


セシルがパルスキャノンを紅蓮へと向けた時、竜の勇者はニヤリと笑った気がしました。


「終わるのは貴様だ。………消え失せよ!!」


セシルの死角、遥か上空に紅蓮が集めた魔力の塊が巨大な焔の濁流となって戦艦部分に降り注ぎました。

紅蓮は勝利と行かないまでも、相討ちを確信して地面へと逃れたつもりでした。




ーーーが、戦艦部分から切り離され飛来したセシルが紅蓮の両足を狼の口で噛み付いて居ました。


「残念だったな………竜の勇者。」


セシルが上段に構えたクロムブレードを竜の勇者に振り下ろそうとした瞬間、セシルの頭部が何者かに蹴り抜かれました。




ーーーーそして、そのまま地表まで到達し、地面に墜落してしまいました。

エターなった文章を修正しつつ再製しました。

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