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幻界星霜 ウィスタリア ー幾度も移り行く転生者ー  作者: 弓削タツミ
ー大樹の王国『スロートリング』ー
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76.竜の帝国の侵略

こんにちは、エルキュール=グラムバルクです。


私達一行は、シャリア商会の仕事上の都合で『水の庭』から旅立とうとして街の門の外までやって来ました。

周囲一帯は見渡す限りの草原で、所々に細い木が立ってる以外は草花に恵まれた背の低い草原と言った景色でした。門の側には街々を行き来する為の馬車や車が止まる駐車場が設営されています。


…そんな私達の眼前に飛び込んで来たのは、いつもの馬車二台では無く、大型トラックの牽引車両付きが一台でした。

しかも牽引車両部分は布製の屋根が取り付けられてます。いえ、レザーでしょうか?

なんと言いますか、これから向かう先は木々が青々と生い茂った森の中ですので道路が舗装されて居るのか不安です。


ーーーいやいや、トラックです。



…え?トラックですか?車体はやけに頑強な面持ちです。

誰が運転するのでしょうか?マックスさんですか?




ーーートラックです。




「え?トラック?………トラック?」

そんな私の声に反応したのか、何やら嬉し気な表情で彼女に声を掛けるのは誰でもない、そう。我等が商会の大ボスで在るシャリアその人でした。

「あらまぁ、やっぱ一目で分かるのねん?」

シャリアが何やら言いたそうな表情でニコニコとした隻眼をこちらに向けて来ました。

「エルキュールちゃん転生者ってやつよね?」

シャリアが片目になったにも関わらず、何やら威圧感が減らない………寧ろ増した視線で此方を見詰めて来ます。

…そう言えばいつだったか、ドワーフのゴルドーおじさんとそんな話をしてましたね。お酒を飲んだ後で。

「はぁ、そうですけど。」

我ながら短く簡潔な答えです。別にどうでもいいので。

「あー、うん。あたしからちょっとお話しね?……普通なら転生者ってのは特別な能力を持ってたり、それこそ神様に近しい力を与えられたり、または神器アーティファクトを与えられてたりとかするらしいけど、エルちゃんはどんな能力を持ってるのかしらん?」

はい、面倒くさいです。

何を期待されてるかは知りませんが、私が与えられた物を語って聞かせました。

「私が与えられた物は、前世の記憶と、とても優しく厳しい両親と裕福な家庭。それから母親譲りの少し可愛らしい顔立ちと病弱な体…ですかね。魔力も全く有りませんし、後は特別思い付きません。」

素直に自分の思い付く限りを語りますが、

「ふーん?それならエルちゃんがあの星蝕者の能力を宿してるって線は?シグ坊みたく。」

なるほど、聞きたいのはそれでしたか。シャリアは商会を守りたいのでしょう、なので危険分子は排除したい…と言った所でしょうか?では、敢えて…

「シグ坊?」

質問には答えず聞き慣れない名前の方を聞いてやりました。

シャリアが少しムッと機嫌を損ねた様に見えた所で私はこう続けます。

「あぁ、能力の事はごめんなさい、知らないです。…正直今も色々と一杯一杯で、記憶の整理中です。」

………と、お返事をしますと。

「あなた、前世では男性だったんでしょう?女の子の身体になった気分はどんな感じ?」

………はあ?

意味が分からない質問でした。何時もの相手を苛立たせる戦法でしょうか?大体私は…

「…いえ、私は前世で女性でしたよ?」

こう返すと、アリシアは物凄く驚いた表情で私を見て来ました。一体何なのでしょうか?




「私は前世では『小清水こしみず 清莉きより』と言う名前でした。…中学、高校時代に酷い虐めと………大学生の頃に複数人の強姦に遭って、世界を呪いながら自害をしましたけど、気付いたらこの世界で少しずつその時の事を思い出してました。」




………私の話を聞いた途端にアリシアは酷く怯えた表情で、泣きそうな表情で私から後退りました。

何なのでしょうか?私の前世での話は四人でファルネリアを目指していたあの夜にした筈なのですが…

しかし、シャリアはどうやら何かを考えてる様で…、自分の中で幾つか仮説を立ててる様です。


「あ、もう良いわよん?エルちゃんも大変よねぇ?」

短く言い放つシャリアの言葉は、憐れみでも同情でも有りませんでした。私の精神分析能力が高かったのなら、シャリアの気持ちが…もう少し何かが分かったのかも知れませんが、友達が少ない私に無理を言わないで下さい。

「………ん?もって事は、シャリアさんも?」

「そこのデッカいゴリラとかねん?」

ケラケラ笑って言い放つシャリアが、マックスの背中をベチベチ叩いてるのを見て、疑問符が浮かびましたが…マックスはとてもとても後悔してる様な、複雑そうな表情で両目を閉じてます。


「あたしとマックスはそっから始まったのよん?元々コイツが組してた組織の連中がね?商会を始めてからやたら目立ってたあたしを貶める様に命令した所から、突っ込まれた訳よ。まぁあたしは慣れてっからね、どうでも良かったんだけどぉ、何をトチ狂ったかコイツあたしにプロポーズして来てねん?それであたしがーーー」

…何やら凄い事を語り始めました。


「ーーーでぇ、コイツの組のトップがシャルロットを人質にあたしを脅し掛けて来たんだけど…組の連中から一人引っこ抜いてたコイツが指示を出してさぁ、シャルロットは無事救出。あたしは始末されずにマックスが逆に組を潰したって訳よ。………まぁ長くなったけど、マックスはあたしの事を愛してるらしいし、あたしはマックスって言う下僕も出来て WIN-WIN?」

あ、やっと話が終わったみたいです。

正直どうでも良いのですが、トラックに先に乗ってるシャル子に汚ったない話が聞こえなくて良かったと思いましたまる

「大体あたし、ガチレズよ?好きなタイプはエルちゃんみたいな世間知らずで、かわいい女の子だもの。」

ーーーと言いながら私の頰にキスするのはやめてほしい。

後、マックスがめっちゃ顰めっ面で此方を見詰めて来ます。ホントマジでやめてくんない?怖いから。




ーーー

ーーーーー



…そして真昼の空の下。シャリアとの対談が終わり、各々荷物を積み込み、ここに集まった面々が大体トラックへと乗り込み準備が出来た物の、主人による指示で街の門の前で少しだけ待機していた所でシャリアが呟きました。

ーーーー誰か一人程足りません。


「結局来なかったわねぇ。」


…その呟きの後で、シャリアが運転手を務めるマックスへと指示を出すと、トラックのエンジンが動き出す音が周囲に鳴り響きました。

そして、名残惜しくも街を後にしようとした所で…




ーーーー私達一行の眼前に、巨大な火の玉が降り注ぎ、爆裂しました。



巨大な火球は私達の警戒する外。上方から飛来したかと思うと焼け尽きる様な熱風をトラック、門、そして街全体へと放射した後に、その形を人へと変えて行きました。

私はその光景をただただ眺めて居ました。



そうして少しずつ少しずつ、周囲の草原を焼き払いながら人の形に戻ったかと思ったその炎の揺らめきから、複数人の人影が現れ出でました。


一人は巨大な薙刀を抱えた、和風な鎧武者姿の赤色の大きな龍人ドラゴンマン


一人は青い甲冑を肩と腰に着けた鬼人オーガ族の青年。


一人は飛竜ワイバーンに跨った赤い鎧とヤリで鋭い眼光を持つ金髪の人間ヒューマンの青年。


一人は小さな少女…ですが、巫女なのでしょうか?白く可愛らしい装束を纏った薄紫の長髪姫カットの女の子。種族は人間っぽく見えますが、服を多く着込んでる為、判別出来ません。


………そしてその中心には、錆びた刀を肩に担いだ、まるで戦帰りの荒武者の様な青年が一人。

…しかし見た目は途轍もなく異様でした。

その青年の見た目なのですが、頭の右こめかみから生えた片角が一本。右頰には中途半端に薄く狭く生えた鱗。他は人と変わらない皮膚。左背中から生えてるだろう片翼の赤竜の羽根。尻尾は生えて無い様です。真紅の短くツンツンと跳ねた髪はまるでその身体から放つ熱気の様に、先程の爆炎の様に赤赤あかあかく自己主張している様でした。

一言で表すなら、半人半竜ドラゴンハーフ…と言った見た目です。その両目には怒りや憎しみ等ではなく、ただただ純粋な闘いへの渇望でギラギラと殺気を纏わせています。



そんな突然の来訪者に、一行は、門の衛兵達は動けずに居たのですが、中心にして先頭に立つその半人半竜の青年が口を開きました。



「吾は竜の帝国の勇者だ。我等の侵略を迎合し、平伏するも良し。抗うも良し。」

ーーーと、勝手な事を言い続けます。


「強者で在らば立ち向かうが良い。強者に非らば受け入れよ。」




「勇者で在れば、吾と殺し合え。」

遅くなりましたが、父の忌中で一週間開けました。

御許し下さい。

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