表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻界星霜 ウィスタリア ー幾度も移り行く転生者ー  作者: 弓削タツミ
ー大樹の王国『スロートリング』ー
71/138

69.大樹の国の玄関にて

ーーーーー

ーーー



真っ青な水平線を滑る様にスイスイ進み、ゆらゆらと揺れる波に遊ばれ大型の貨物兼客船は凡そ三週間程、海の上を泳ぎ続けました。


途中、島々を巡り物資を輸送したり、逆に詰め込んだりと言った事も有りました。


また、道中をイルカやクジラ、クラゲの群れや魚人マーマン人魚マーメイドと言った可愛くも美しい護衛達が付き添ってくれたり、時には共に食事や宴会を楽しんだり。

そして時に襲い来る魔物達の襲撃に応戦したり等と、様々な事が起きましたが、概ね大きな被害も無く、船員や護衛達だけで解決出来ましたので、シャリア商会一行の出番は特に在りませんでした。

そもそも戦闘に加わったら、素性が明かされる恐れがありますので、主人によって、本当の緊急時以外は禁じられましたが。


その為、一行は思い思いにこの三週間を過ごしました。


シャリアは名前を変え、見た目を金髪美女に変え、船内の富裕層達と戯れました。


マックスは名前の他に、コーンロウの頭をドレッドヘアーに変え、筋骨隆々の執事姿でシャリアの側で肝を冷やす毎日でした。


セシルは…………御察し下さい。


シェリーは毎日皆の世話をしつつ、一人息子に宛てた手紙を日記に書き綴りました。


山賊のライネルは…無駄に煌びやかな様相で、カジノで遊んでましたが、小さく稼げてはいるのですが、悪銭身に付かずとはよく言った物で、少し稼いでは酒や何やらに消えて行きました。


シャルロットは壺の中に潜んでました。過ごし易いのでしょうか?ーーーと言うより赤い猫の子はどうしたのでしょうか?



ーーーーーアスクレピオス医師は戦っていました。



船酔いと…では無く、自分が責任を持って救うと約束した少女の治療方法についてです。

実際の所、自分が間借りさせて貰っていた診療所の医師、ディアナの処置は機材が無い中、最善を尽くしていた様に思えます。必要な薬品を必要な分量だけ投与し、少しずつ少しずつ与える事で濃度を急激に高め過ぎず、下げ過ぎず、薬物自体を自然排出に任せる事で命を繋げたと思われますが、そもそもアスクレピオスが診断した時点で殆ど薬物反応が見られませんでした。

これは彼女が星骸殻せいがいかくへと変貌してしまった故かと考えましたが、変貌した前例は有るものの、今回の様な事例が殆ど…いえ、初めてと言っても過言では無い程情報が有りません。

何が最適かを探り、研究し、命を救う手立てを得る事は自分達医師団の使命と言っても過言では無いのですが、情報が少な過ぎる故に、未知の科学に頼らざるを得ない事も少なく有りません。

アスクレピオスが所有する十字架は、とある遺跡より出土した、所謂レリクス。遺物です。

本来の用途が現在アスクレピオスが利用する方法で正しいのかは分かりませんが、この十字架に食わせた動植物は、機械的な治療が行われる事だけは把握していました。

いえ、アスクレピオス医師ならばそれ以上にこの遺物レリクスへの理解を深めて居るのかも知れませんが。


現在、この十字架の内部は謎めいた水溶液に満たされています。その中に裸のエルキュールが機械のコードに繋がれてプクプクと口に繋がれたチューブの隙間から空気を漏らしています。

要するに生きて呼吸をしている事は確かでした。

まるで某少年漫画の悪役の宇宙船に備え付けられていた回復ポッドの様ですね?



アスクレピオスは患者が救われる事は嬉しくも、こう言った未知の遺物に頼らなくてはならない事が悔しくて仕方有りません。

いずれは自身の医術を向上させ、この未知の十字架すらも凌駕する技術を身に付けたいと決意するのでした。



さて、アスクレピオスが十字架の側に視線を向けると、白いふわふわの毛玉が十字架の隣の寝台にもたれ掛かって、小さな寝息を漏らしているでは無いですか。


アリシアはこの三週間、ずっとずっと十字架の中に居る親友を眺め続けて居ました。


彼女が目覚めた時に、一番に目にするのは自分で在りたい気持ちと、彼女をこんな状態に貶めてしまった事への後ろめたさと、様々な感情が、この三週間の内に溢れかえってしまったのでした。


アリシアは目を覚ませば十字架の中を見つめ、窓口に手を添え語り掛け、アスクレピオスに促されて漸く食事を摂りに行き、帰って来るなり十字架の側に寄り添い眺め………。


そうしていつのまにか寝むってしまいやがて起きる…そんな三週間でした。


アスクレピオスはそんな痛々しいアリシアの姿を見ても止める事なく出来るだけ側に居させてあげました。

時折やって来るシャルロットや他の仲間達もアリシアの様子の異常さを感じてはいましたが、自分達に口出し出来る事では無いので、ただ見守る事しか出来ませんでした。



ーーー

ーーーーー



数々の島を巡って遂に、シャリア商会一行は、大樹の国『スロートリング』の玄関とも言える港町。

アクアガーデン』へと到着しました。


この街は全体的に明るさが漂いながらも自然と調和した、美しい玄関先と言った印象を受けました。

三日月にくり抜かれた様な印象の『ファルネリア』と打って変わって、三角形の天辺の様に突出した岬と崖、崖の上には灯台が見えます。

三角形の反対側同士で互いの街並みが見えない様です。

それから、街全体がとてもカラフルで、赤や青の屋根、緑や黄色の壁等がとても目に優しく在りません。

ですが、茶色い木の幹や蔦、緑や黄色い葉っぱ達が上手く溶け込んでる様に見えます。

向かって左側の方にはコンクリートで出来た船着き場が備えられており、近くの岩場には小さな円形の湖の様な、海水が溢れてそうな場所が有りますが、これが水の庭と言う名前の由来でしょうか?


船がズイズイ進む中、船内アナウンスで直に街に到着する旨を伝えましたが、既におおよその出立準備が整ってる様でした。

ーーーアリシアを除いて。



「アリシアちゃん、そろそろおりるよ?……じゅんびしよう?」


シャルロットの声にアリシアは首だけを向けて答えます。

「ねぇシャルちゃん………このままエルキュールが起きなかったらさ、わたしはこの旅をどうしたら良いのか分かんないんだ。」

アリシアの言葉にシャルロットは何も言えません。意味が全く理解出来ないからです。

しかし、アリシアは続けました。

「わたしは勝手だよね、最初はエルキュールを置いて、一人で旅立とうとしてた癖に…いまはエルキュールが起きなかったら、旅をする意味がないとか考えてるんだ。勝手だよ…勇者失格だよね。」


同室のアスクレピオスはそんなアリシアに対して答えました。

「心外だね、私は一度助けると約束したなら最後まで貫き通すつもりだ。………勇者くん、君の随分と弱気な発言が目に余るが、今の君は塞ぎ込んでしまってるだけさ。本来こう言った治療は何ヶ月、何年掛かるか判らない物なんだ。………だから、今は私を信じて託して欲しい。」


アスクレピオスの言葉にアリシアは酷く虚ろで今にも泣き出しそうな瞳を向けて立ち上がりました。

そしてシャルロットより差し出されたその手を握り、本来の自室へと戻って行きました。


二人の小さな少女が立ち去った後、アスクレピオスは誰にともなく呟きました。




「こう言った言葉は苦手だなぁ。」




ーーーーー

ーーー



ーーー暫くして、海の世界の住人達とお別れをし、船が港へと接岸し、多くの客人や船員達が忙しそうに港中を駆け回り始めた頃、シャリア商会一行もまた港町へと歩出ました。

街を行き交う人々は中世代を少し抜けた感じの装いが目立ちます。中には白と赤基調の軍服の住人も居る事から、軍施設が近くに有るのかも知れません。

そして大通りに出た頃、変装を解いてシャリアが元気な声を上げます。


「はいはーい!点呼取るわよー?シャルロットぉ?」


「はーい!」


「元気が有ってよろしい。マックスぅ?」


「うっす」


「セシルくん?」


「ぐふっ…」


「シェリー?」


「はいよ、ちゃんと居るよ。」


「OK、アスクレピオスせーんせ?」


「あぁ、エルキュール君も居るよ。」


「よしよし、アリシアちゃん?」


「…………はい」


「元気無いわねぇ。………ふんふんふんふむ。あたしよし…………うん、全員ね「ちょっ待てやコラァ!!!」


シャリアが点呼を終えると無駄に暑苦しい叫び声がけたたましく木霊するでは無いですか。

山賊の半裸男事、ライネルが華麗なるツッコミと共にその場に躍り出ました。


「オレオレ!俺様ちゃんわすれちゃってるよぅ!?ライネル様だよぅ!?ざっけんなゴラァ!!」


暑苦しい半裸男がまるでダンスの様な謎ポーズを決めて自己主張する中、シャリアは狐の様な笑顔を張り付けたまま言いました。


「誰よ?このいかにもな山賊を船に乗せたのは?衛兵さんにでも突き出してやろうかしらん?」

流石に辛辣過ぎる言葉に一同当然の苦笑い。ーーー当の本人はガッハッハと意味無く笑う始末。

さて、この場を納めたのは自分達に近付いた人物の一声でした。


「なぁ旅人さん方、アンタ等の中に時壊針じかいしん………あー…星骸殻せいがいかくだったか?………の嬢ちゃんは居ねぇか?」


タバコを咥えるその人物は、濃紺のスラックスに黒のワイシャツに赤いネクタイ、灰色のトレンチコートには謎の紋様が描かれた格好の中年の男は、白髪混じりの黒髪に隻眼の眼帯………そして、細身なのにガッシリとした筋肉質に見えました。


突如現れ、嗜好品を嗜むその姿はあからさまに街の雰囲気から掛け離れていて、異質な中年男性の存在感に一行は瞬時に警戒態勢を整えましたが、一人だけ反応が違いました。


「………師匠…!?何故ここに!?」


黒い剣士でした。

あからさまに狼狽うろたえる彼の様子に、一同は何事かと思い思いに視線を二人の間で泳がせますが、師匠と呼ばれた中年男性は意に介さず、セシルに向かって言い放ちます。



「よぉ、馬鹿弟子。様子を見に来てやったぜ?」

三週間ぶりの陸地で、三週間ぶりの投稿です。ごめんなさい許してくださいなんでもはしません

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ