表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻界星霜 ウィスタリア ー幾度も移り行く転生者ー  作者: 弓削タツミ
ー首都を目指してー
64/138

62.攫われた先で



「アリシアさん、もしかするとすれ違う可能性もありますよ?…それでも、行きますか?」


女性医師の質問に、アリシアは返しました。

「本来ならどの位で戻ってるんですか?」

「………十日ほど前に戻ると連絡がありました。…しかし、急患が出たのであれば遅れてしまう可能性も無くは無いです。ですので、私達の杞憂かも知れません。」

少し考え、アリシアは答えます。

「………そうですね、そう言った理由なら良いのですが、もしも違ったなら…。……ですので、わたしに行かせて下さい。」

アリシアは力強く言いました。

何を言っても引かないだろう、その姿勢に押し切られ、女性医師は半ば諦め気味に答えました。

「………分かりました。では、少なくとも三日以内には此方へお戻り下さい。私はエルキュールさんへの処置が有りますので共に行けませんが、替わりにアスクレピオス先生の顔写真をお貸しします。…それから、アスクレピオス先生にお会いしたらお伝えください。」


「ディアナよりトリアージ、カテゴリーl…と。」



ーーー

ーーーーー



アリシアは走ります。街の中を。そのまま街を飛び出し、街の外を。そして南東に向けて、森林を走りました。


「………って、カッコつけてみたけど、そう簡単には見つからないよね。」


アリシアが森林地帯で野宿を始めた頃、既に周囲はトップリと夜の星明かりが煌めいていました。

人の足で広い街の中を歩き回り、駆け回り、そして外に出て森林にズボッと入り込んでも大した距離は進めません。

恐らく先生は馬車等を利用してる筈です。アリシアは自分も馬を借りるべきだったと後悔しましたが、ある事に気づきました。

「いや、わたし馬乗れないじゃん!!」


一人ぼっちの旅は寂しいものです。つい昨日まで沢山の人に囲まれて旅をしていただけに、より一層寂しさが染み込みます。ーーー独り言が増えるのは仕方ない事なのです。

「………シャルちゃん連れて来るべきだったかな………いやいや!!」

寂しさの余りつい本音がポロポロですが、アリシアは首を横に振り考えを否定します。

シャルロットを置いて来たのには理由がありました。

まず一つ目は、前回の様な襲撃があった場合、少しでも守れる戦力を置く事。

二つ目は、もしかしたらシャルロットの回復魔法が効いてエルキュールが目を醒ます可能性を考えての事。

三つ目は、エルキュールが起きた時に知ってる顔が居れば寂しい想いをしないだろうと言う事。

そして最後に、…女性医師が本当に自分達に協力的な人物なのかを見極める為でした。


最も、アリシアが探しに行く事を止めようとしてくれた事や、エルキュールの診療の為に力を貸してくれた事。星蝕者の因子を持つエルキュールを見ても尚、見捨てなかった事。

それらを踏まえて、アリシアの中の疑念は殆ど無いのですが、それでも前回の様に騙されるのも裏切られるのも嫌なのです。


「全てはアスクレピオス先生と言う人次第………かな。」


アリシアの夜が段々と更けて行きました。



ーーーーー

ーーー




………アリシアは夢を見ていました。

自分が勇者の宣誓を行った時、…その最終日に、自分が出逢った獣の姿の竜の夢でした。


勇者となる日の前の十日間、飲まず食わずで聖泉に浸かり、一切の欲望すら許されず、祈りを捧げ続けると言う試練でした。

アリシアは十日間を耐え切り、ただひたすらに祈りを捧げました。自分に親友を………大切な人達を守り抜く力をお与えください………と。

…その祈りを聞き届けたのか、獣の竜はアリシアの前に姿を現しました。


「アリシアくん、君の望みは力…かい?」


その問い掛けにアリシアは竜を見上げて答えました。


「はい、わたしは守り抜く力を…。親友を救う力が欲しいです。」


その答えに満足した獣の竜は、ニコリと笑いかけると、アリシアに言いました。


「いいよ、君に力を与えよう。…勇者の力さ。」


そう言って、アリシアに吐息を吐き掛けると、アリシアの身体を光が包み込みました。


「ありがとうございます…守護竜様。」


アリシアのお礼を、獣の守護竜は遮りました。


「ううん、ここからだよ…アリシアくん。君はその力を持って、この部屋から出なくてはいけない。………その衰弱しきった身体で、支え切れない程の巨大な力を持ったままで。」


………ここからが本当の試練なのでした。

常人には支え切れない程巨大な力。少し動いただけでも震えて爆発しそうな程危うい状態で与えられたそれは、今にもアリシアの身体を弾け飛ばしそうで、恐らく少し気を抜いただけで制御し切れず暴走するのでしょう。

しかしアリシアはただただ、心を停止させて、少しずつ少しずつ慣らす様に、ゆっくりじっくりと、身体の中でその力を混ぜ合わせ続けました。


「……勿論捨てるのも選択肢なんだけど……ふーん?…アリシアくんは意外とつまらないね?」


獣の竜の言葉を置き去りにして、体内で支えられる程度に力を混ぜ合わせた頃、残りの力を支えたまま、ゆっくりと部屋を出て行きました。


「うん、それも正解だよ、………それではアリシアくんに祝福を…。」


獣の守護竜は、ゆっくりと姿を飽和させて消えて行きました。



ーーー

ーーーーー



アリシアが瞳を開いた時、ロープで全身を縛られて洞窟の中に居ました。

「へへへ、まさか女が一人で野宿とはなぁ…。」

「あの先生さんに内蔵を取り出して貰う前に俺に遊ばせろよ。」

「おいおい、このガキを拾ってきたのは俺だぜ?俺に楽しむ権利があるだろ!」


そんな風に下衆な会話を繰り広げていますが、この世界のならず者には低俗な人間しか居ないのでしょうか?

所であっさりと捕まったアリシアでしたが、実は考えあっての事でした。

ーーー以前、アリシアが言った様に、寝てても悪意を持つ人間が近付けば、アリシアは気配で起きます。

実は起きて待ち構えてたのですが、ならず者達の会話に気になる単語が出て来ました。


「おいおい、女が一人で寝てるぜ?」

「マジか………ってガキかよ。どうせ一人で食料でも取りに来たんだろうよ?」

「なら連れ帰るか。オイ!コイツ縛っとけ!」

ーーーと、ここまで聞いた時点でブチのめす気満々でしたが、続く言葉で収めました。

「折角だ、先生さんにじっくり使って貰おうぜ。」

「見た所健康そうだ、使えそうな所は全部移植して貰おう。」

「マジかよ、勿体ねぇなぁ」

「どうせいつもみたく渋るだろうが、なんならこのガキでいい加減首を縦に振って貰うのも悪くねぇよなぁ?」


先生?移植?…一体何の話なのでしょうか?ーーーと言いますか、何処まで外道なのでしょうか?

アリシアの心は怒りに燃えてましたが、もしかしたらこのならず者…いえ、山賊共が目的の人物を囲ってるのかも知れません。

そう思い付いたアリシアは、極力寝たフリのスタンスを崩さず、簡単に誘拐された間抜けな子供を演じ切りました。


そして臭気の充満した洞窟の中、山賊共のアジトに放り込まれたアリシアは、とりあえず隠し持っていた小さなナイフでロープを切りました。

まずは目の前の山賊共を沈める事にしました。


「なっ!?このガキ!!縄ガブッ!?」

「おい!仲間にづベヘェッ!!」

「あがっ!!」「グヘッ!」


一気に四人を無刀で意識の底へと沈めたアリシアは、ササっとロープで縛り付けました。ついでに特殊な薬品もロープに振り掛けて置きます。猿轡さるぐつわを噛ませておく事も忘れません。勿論殺さずに憲兵に引き渡す為です。

「さーて、何処に居るのやらアスクレピオス先生とやらは。」



アリシアは、山賊達のアジト内をスルスルと移動し散策しました。

時には大胆に、時には聴覚を最大限に発揮し、視界が薄暗いのを他の五感で補いながら。そうして洞窟内を探し回って、アリシアが木の扉を開くと、ある物を見付けてしまいました。


「えっ、これ…花火??なんで???」


アリシアが見つけたそれは、花火の玉の形をしたダイナマイトの様です。八尺玉の様に無駄に巨大なそれは、何と無く先の展開を予想させます。

………これはつまり、最後は洞窟内を崩落させろと言う事ですね?ですよね?

または最後の最後で爆発からの崩落イベントでしょうか?


とりあえず、花火マイトはアリシアが錬金術の応用で、ポケットサイズに縮めて身体に纏わせ回収しました。面倒事は嫌いなので。



ーーーーーその後、アリシアが奥へ奥へと進むと、今までに見てきた木の扉と全く違う、少し豪奢な扉が目に映りました。


「うわー…。分かりやすい位に分かりやすいボス部屋だぁ…。」


どう見ても山賊の頭領が居そうなその扉に耳を当てると、アリシアはすぐ様後方へ跳び退きました。

すると、一瞬遅れて扉ごと貫通する様に、大剣の先が扉を破壊しながら生えて来ました。



「ほお?俺様の剣を避けるたぁ、相当の実力者かぁ?」


扉を破壊しながら出て来る山賊の頭領のそんな言葉を他所に、アリシアは無手で大剣の主に指差し言います。




「お前がお医者様を攫ったのは分かってる!!抵抗しないでサッサと引き渡しなさい!!」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ