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幻界星霜 ウィスタリア ー幾度も移り行く転生者ー  作者: 弓削タツミ
ー首都を目指してー
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58.傷だらけの上京


ーーーー



ーーーとある広大な部屋が有りました。

その部屋は、まるでモニタールームさながら、部屋中に光で出来たモニターの様な物が設営されてます。

その一つ一つがまるで環境調査でもしているかの様に惑星の地形や街中、山や空、海や地核付近等、所構わず映像を映していました。

また、宙を舞う椅子の様な物に、大小、種族、性別様々な人達が座り、何やらコンソールパネルの様な物を開いて作業に没頭していました。

室内一つで数千ないしは数万人と、作業が出来そうな広さで、縦にも横にも広く、まさに超未来的な様相を漂わせていました。

そんな中、一人の女性オペレーターの声が耳から口元に伸びたインカムに向かって、報告の様な事をし始めます。


「首都『ファルネリア』近隣の森にて、時壊針じかいしんの反応有り。………これは………」

「『コード・ネクロノワール』………彼の信号です。」

女性オペレーターの報告を受けた上司と思われる男性が重たく口を開いて言います。

「………アイツか。………ったく、無闇にあの力を使うなと言っただろうが。」

何とも忌々し気な口調で言う男性は椅子から立ち上がると、靴まで届くロングコートを翻し、重たい足取りで何処かへと向かいました。そして、女性オペレーターに告げます。


「行って来る」


その一言だけを聞いたオペレーターは「困ります。規定に抵触します」「お戻りください!貴方には権限が有りません!」…等と、喚きますが、素知らぬ顔で歩を進めました。





「さぁて、出来の悪い馬鹿弟子が見付けた何とやら………実際に確かめてやろうじゃねぇか。」





ーーーーー

ーーー





「朝よーん?起きなさい、……………ちゃん?」




微睡む意識の中、重たい頭に凛と響くのは女性の声でした。しかし私はもうずっとモヤモヤとしたまま思考が纏まらない気がします。

ええっと、何があったんでしたっけ?

…確か、私は誰か三人と旅をしていた気がします。

一人は黒くて寡黙ですが、口を開くと訳の分からない事を口走って、もう一人は白くて小さくて、人見知りなのに頑張り屋さんだった気がします。

そしてもう一人は………赤かったと思うのですが、思考が定まりません。

とにかく私は返事をしようとしますが、頭がぼーっとして、視界もボヤけてます。


「困ったわねぇ、折角の目的地なのに、依頼者本人がこの調子じゃあ」


女性の声が言うに、何か困った事があった様なのですが、私には何か手助けをする事は出来ないのでしょうか?

それよりも頭がズッシリと重く、考えるのも億劫です。

きっとそれでも考えなければいけないのだと思います。


「………さん、わたしが…わたしがあんな物を飲ませちゃったから…!!」

「ちがうよ………………ちゃんはわるくないよ………………のせいだから」


何か泣き声が聞こえる気がします。

何がそんなに悲しいのでしょうか?

私には分かりません。もういっそのこと考える事を辞めてしまうと言うのはどうでしょうか?

とりあえず寝て次に目が覚めた時、このまま全部無かった事にして、しがらみを全部捨ててしまえば、きっと全部が良い方向に向かう気がします。

………?

何故そう思うのでしょう?

それを考えるのも億劫なので、今は思考から放棄します。


「姉御…、やはり……………さんは」

「………みたいね。全く、成長する所か、問題を起こしてくれちゃって。………くん、覚悟は良いわねん?」


野太い男性の声が、先程の女性に話し掛けていました。

それで、私を除け者にして会話を進めるこの人達は一体なんなのでしょうか?

放っといてくれるなら何でも良いのですが。


「………よ、俺にあがなえる事であれば何でもしよう。」


青年がなにか言ってますが、私に理解出来るのは、この人が男性だと言う事だけでした。


「……………ごめんね…ごめんね…」


段々と意識が薄れて来ました。ごめんなさい…皆様には申し訳有りませんが、少し眠らせて貰います。

………私は意識を手放しました。




ーーーーー

ーーー




ーーー愛する幼馴染が眠りについた事を確認したわたし、アリシア=バーネットは心が押し潰されそうでした。


ーーー首都『ファルネリア』も間近といった森林地帯での悍ましい闘いの後、気絶していたわたしが目を覚ました時、全てが片付いてました。

生き残っていたのはわたしとシャルちゃん、シャルちゃんの膝の上で眠るエルキュールの右脚は、傷一つ有りませんでしたが、靴下もブーツも履いてませんでした。

そして、漆黒の剣士………いえ、漆黒の星蝕者、セシルは何を考えているのか昨晩の見張りの続きと言わんばかりにわたし達を守っていた様です。


「セシル…星蝕者…、何が目的なのさ?」


わたしは不安感と不信感を込めて、漆黒の星蝕者に問い掛けました。………そして、セシルは言います。


「力無くば闇の傀儡共に貪られるのみ。闇に秘めし禁断の秘宝…貴公等に授けようぞ。」


闇とか言ってますよ?やっぱりコイツ敵ですよね?

………意味が分かりませんが、恐らく料理を振舞ってくれてるのだと思います。その証拠に、グツグツと何かが煮えてます。今のわたしにはそれすら悍ましい何かに見えて仕方ないのですが。

…お腹は空きましたが、今はそんな事はどうでもいいです。

「意味分かんない、普通に喋ろ!!説明して!どうしてセシルが星蝕者になるのさ!!」

わたしの捲し立てに、しょんぼりする黒いのでしたが、関係有りません。

とにかく説明を求めました。………そして、セシルが説明してくれたのは。



「まず、俺は貴公が言う通り、星蝕者だ。…正しくは元々は人間………なのだが、奴等に因子を埋め込まれ、奴等其の物の能力を奪い、得た者だ。」

「何処で受けたのかは言えないのだが…前例が在る通り、俺もまた一度死んで蘇ったタイプの星蝕者………いや、『星骸殻せいがいかく』………と、都会の学会では呼ばれていたな。」

「一つ、言って置きたいのだが、俺はこの能力を既に俺の物としている。………俺が後、どの程度永らえるかは不明だがな。」

「俺の目的だが………それは言えない。」

「ーーーーー少なくとも、貴公等、愛しき少女達の味方である事だけは俺自身の総てに掛けて誓おう。違うので在らばこの首を斬り落としてくれて構わない。」

美界エトワールの美しき少女達を護る事だけが我が人生の意義だからな。」




問い詰め無くてもペラペラと色々と答えてくれましたが、全然頭に入って来ませんでした。新しいワードが増えすぎです。造語を増やせば増やす程、自分の首を絞めるだけですよ?…誰にとは言いませんが。

しかし、死んで蘇った『星骸殻せいがいかく』…文字通り、星を喰う者に殺されてむくろとなった人の殻で動く者。………まるでゾンビのモンスターみたいです。

………きっとエルキュールもまた、それなのかも知れません。

そうだとしたら、あの時の黒い力にも納得が行きます。


しかしまぁ、星蝕者の力を扱える人間…と言うので有れば、不服ですが力を借りる………いえ、利用してやります。

………そうでなければ、わたしはエルキュールさえも拒絶しなければならないのですから。


………暗い考えを捨てましょう!今はとにかくエルキュールとシャルちゃんを首都へと運ぶ事が第一目標です!

わたしは荷物をセシルに、シャルちゃんには頑張って歩いて貰いました。

そしてエルキュールは………わたしが運びました。紅の勇者モードです。

ゾンビになっても、エルキュールはエルキュールです。わたしの大好きな愛する幼馴染です。


本の少しだけ心がグラついてしまう自分が悔しいです。怖いです。不安です。



ーーー道中、何事もなく無事に首都の門に辿り着くと、セシルが受け付けに話を通していました。

どうやらシャリアさんと連絡を取って、迎えを呼んでくれた様です。

そしてわたしは…シャルロットちゃんは、ヘナヘナと力を失い、腰から崩れ落ちました。

流石に、精神も、体力も、魔力も何もかも擦り切れて限界でした。

そのまま意識を失うと………、次に目覚めた時は何処かの室内でした。


「………ここ、何処だろう…」


知らない天井を見上げながら、意識を取り戻したわたしが呟きました。

どうやらわたしは何処かの建物の中の一室に寝かされて居たのですが、目が覚めるとシャリアさんが狐の様なニコニコ顔でわたしを見詰めていました。


「ねぇアリシアちゃん?」


シャリアさんの問い掛けに首を傾げましたが、すぐに強烈な殺気を浴びて一瞬竦みました。

「エルキュールちゃんの事なんだけど、………どう言う事なのか、説明してくれる?」



わたしはよろよろと、転がり出る様に駆け出しました。

後ろからシャリアさんが何かを叫んでますが気にしてられません。

エルキュールが居るらしき部屋の中からシャルちゃんの声が聞こえて来ました。………ので、わたしは迷わず室内に駆け込みました。




………ベッドの上で座りながら、虚ろな瞳で一点を見詰め続けるエルキュールの姿は、見ていてとても痛々しく感じました。

知らない天井だ…

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