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幻界星霜 ウィスタリア ー幾度も移り行く転生者ー  作者: 弓削タツミ
ー勇者と一般人ー
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4.エルキュールの誕生日・中編

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「ーーーふぅ、さっぱりした。」


 赤い液体塗れになったエルキュールこと私は、お湯とタオルで全身を綺麗さっぱり拭き取りました。

 かくして元凶のアリシア=バーネットはと言うと…


「ごべんだだいぃ〜〜〜!!でぎごごろだっだんでずぅ〜〜〜!!」


 泣きながら赤い液体塗れの私のお部屋の清掃中でした。

 赤い汁はきちんと落とした様です。

 監督者は私のお母様こと、ミューリッツァ=N=グラムバルクでした。

 普段温厚で優しい私のお母様なのですが、流石に今回ばかりはおかんむりのご様子です。


 …と言うのも、私がアリシアからプレゼントを受け取った………までは良かったのですが、その後おでこにキスをしたのが問題の様でした。

 私を絞め落としたのもギリギリ堪えられたみたいでしたが、その後昏倒させたのが問題でした。

 まず、はっきり言って私のお母様は物凄い子煩悩なのです。実に愛されてます。喜ばしい事なのです。

 ………それもこれも両親の間に産まれた子供が私だけで、その私自身もまた虚弱体質で簡単な事ですぐに身体を壊すからなのでしょう。


「えうっえうっ…エルぅぅ…」


 何か助けを求めています。子猫の様な目も今はまるで子羊みたいです。


「いい?二人とも、大人はね?子供達が悪い事をしたらそれは悪い事よ。…と教える義務があるのよ。」


 お母様、あなたも悪戯に乗ってませんでしたっけ?


「……はい、ですがお母様。アリシアも十分反省してますし、何より私を想ってしてくれた事なので…」

「…そうね…それでは二人とも、アリシアさんの汚れを落としたらご飯を食べて来なさい?後はお母さんが片付けますから」


 アリシアが反応しました。ピコンと猫耳が見えます。あなた獣人さんでしたっけ?


「うぇへへぇ…ご馳走になりますっ!エル、行こう?」

「………きちんと汚れを落としてからよ?……あっそうでした、お母様」

「あの…お父様は…?」


 少しドキドキしながら聞きました。外はすでに真っ暗です。未だ帰らないお父様に私はどこか落ち着かない様子で尋ねました。

 お母様は腕を組み片手を頰に当てて、少し困った様に答えます。


「機関車が遅れてるみたいなの。お父様は遅れそうと連絡が有ったわ」


 どうやら電報があった様でした。電話と言うよりツー・ツー・ツーと、昔の映画で観た様なモールス信号です。多分、「キカンシャオクレル」とかそう言った内容だと思います。


「そうですか…。あの…今日はアリシアと一緒に寝てもいいですか?」


 私は寂しい気持ちを押し込めて精一杯の元気な笑顔でそう尋ねました。お母様は少し間を置いて答えてくれました。


「そうね…それならお客様用のお部屋を使いなさい?……アリシアさん、良ければ娘をよろしくお願いしますね…?」


 お客様用と言ってもお手伝いのおば様は夕方には帰りますので基本的にアリシアのお泊り用の専用部屋です。

 これにアリシアは快諾しました。


「はいっ!任せてください!エルに風邪なんか引かせませんから!」


 …………あなた私を蹴落としますよね?…アリシア専用のダブルベッドになりそうです。

 野暮なことはさて置いて、これで今日中にお父様に会えないかもしれない寂しさとはお別れです。



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 アリシアの汚れを落とした後、私達は二人で粛々と誕生日会を開催しました。


「エル、改めまして誕生日おめでとう!わたしの為に生まれてきてくれてありがとうだよ」


 嬉しいのですがそれは私の両親の言葉だと思うのですが…

 ですがですが!わたしの為にとか、可愛いアリシアに言われると嬉しくなります。自分が前世の性別のまま転生出来なかった事がこんなにも悔やまれるとは思いませんでした。


「ありがとう、アリシア。…私みたいな虚弱で病弱な子でも良かったらアリシアの為に生まれて来れて幸せだわ…?」

「ダメだよ!後ろ向きは!今日はわたしの可愛いエルがわたしの為に生まれてきてくれた大切な日なんだよ?わたしはそのままのエルがいいんだから」


 なんでしょうか?この擽ったい気持ちは。顔が熱くなりました。絶対に気付かれてます。胸もドキドキします。それなのに言った本人は飄々としてます。恐らく告白でもしたら「え?なんだって?」とか言いそうです。

 あれですね?この子には主人公補正とかがあるに違いありません。このモテモテ主人公め!


 ───私は顔の熱も冷めぬまま、彼女に言いました。


「私が男の子なら、きっとアリシアみたいな子に…恋をしてたんだと思うわ」


 胸の鼓動が収まらないまま、ゆっくりと顔を上げました。恐る恐るアリシアの顔を覗き込むと………




 まぁ居ませんでした。




「エルー!何飲むー?紅茶もあるよー?」


 お台所にいらっしゃいました。

 この難聴鈍感間の悪い系主人公が!!


「………私は紅茶で」


 ちゃんと聞こえたのでしょうか?先程の告白モドキも聞こえてなかったみたいですし、きっと聞こえてませんね。

 とりあえず顔の熱が引いてきて良かったです。


「紅茶で良かったかな?てきとーに淹れて来たけど、あっ!そう言えばタルトを焼いて来たんだ。後で一緒に食べよう?」


 適当に淹れないでください。

 ですがアリシアも錬金術を生業にしてるだけあって、妙に器用な所があるのできっと心配はいらないのでしょう。

 タルトもとても美味しそうなチーズタルトの様ですし。


「ありがとう、アリシア…早速いただきましょう?」


 今日はお礼ばかりです。私を産んでくれたお母様やお父様にも、私を受け入れてくれたこの世界にも、私を導いてくださった神様にも、…そして私の親友で居てくれる目の前のアリシアにも…

 私は心から精一杯の感謝を伝えたい。

 そして、これは我儘なのですが、出来る事なら私は私が産まれたこの世界を自由に見てまわりたい。

 様々な文化に触れて、自分なりに表現をしてみたい。………きっとこれが私のやりたい事なのでしょう。



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「あっそうだ!ねえねえエル!ちょっとだけ外に出てみない?」


 突然の申し出でした。

 私が理解出来ずに小首を傾げていると…


「今日は流れ星が見えるらしいよ?ちょっとだけだから!展望台に見に行こうよ!」


 流れ星ですか、とてもロマン溢れてます。正直アリシアとなら見に行きたいのですが、お母様が認めて下さるか分かりません。気持ちが落ち着かず、思わずソワソワしてしまいました。

 そう思っていると…


「行くなら二人ともちゃんと暖かくしてね…?それからあまり遅くならない様にしなさい…?」


 思ったより簡単に許可が降りました。

 これも誕生日補正なのでしょうか?


「はいっ!このアリシアお姉さんが可愛い妹のエルをきちんとエスコートしますから!」


 あなたエスコート好きですね。…頼って貰えるのが好きなのでしょうか?って言うか、妹なんですね………ははは。

 ともあれ許可が降りたのでしたら最早居ても立っても居られません。私もアリシアも急いで外出の準備を整えました。


「いい?絶対に崖に近づいちゃダメよ?それから、展望台に行くなら灯りを持って行くこと。」


 お母様はそう言って、ランタンを一つ手渡してくれました。アリシアがそれを受け取りました。


「ありがとうございます!行ってきます!」

「行って参ります、お母様…」


 私とアリシアはそれぞれお母様に抱きついて挨拶をしました。お母様はそれぞれに優しく抱きしめ返して頭を撫でてくださいました。


「気をつけてね?二人とも」


 アリシアに連れられて家を飛び出すと、後ろでお母様が笑顔で手を振ってました。




 外の空気は肌に突き刺さる様に冷たくて、吐く息は白く…ですが暗闇にすぐに溶けて消えてしまいます。

 この島は地球で言う所の赤道に近いらしく、島の位置的に雪が降らない土地柄なのですが、寒いものは寒いのです。

 夜は一気に冷え込みます。薄暗い木々の並木道をランタンの頼り無い灯りを頼りに歩き進んで行きます。

 こう言う時は手袋越しにですが手を繋いでくれるアリシアの存在がとても頼りになります。

 道中、冷たい空気と暗闇に負けじと、二人はおしゃべりを楽しみました。話した会話の内容は忘れちゃいましたけど。


 十分程歩いた頃でしょうか…私にとってはやはり三十分位の感覚でしたが、並木道を抜け小さな広場が目の前に広がりました。

 広場には人が四、五人程が入れる円筒型の小さな建物があり、その裏側は急な崖になっています。

 空を見上げると、月が一つ二つ三つと疎らに並んでいます。私がここは地球とは全く異なる世界だと認識するには十分過ぎる程の情報でした。


 いつか星同士がぶつかり合ってこのウィスタリアという星に落ちて来るのでは無いかとドキドキしてしまいます。

 空気が綺麗に澄んでるからなのでしょうか?射干玉の空には燦々と輝く星々がまるで宝石箱をひっくり返した様に散らばって見えます。

 ちなみにランタンはもう必要がないくらいに月明かりで周囲は照らされています。

 道中の道すがらにも多少は見えてはいたのですが、拓けた場所に来るとどうでしょう。こんなにも私達の視線を奪ってしまうものなのでしょうか。


 私は思わずその場で見惚れていました。


 アリシアは展望台の二階、いえ屋上ですね。外からぐるりと囲むように繋がる石の階段を上って向かいました。


「おーいエルー!早くおいでよー!」


 此方に向かって叫ぶ彼女ですが、特に近所迷惑という事もありません。

 何故ならここは人が住む付近から少し離れているからです。


 早く来いと急かされた所で私は体力が皆無です。レベルが上がってもその上昇率は微々たるものなのです。

 それに流れ星はまだ見えてません。ゆっくり向かってもバチは当たらないと思います。


「お…お願い、アリシア……私のペースで…上らせて……」


 我ながら情け無い事に息も絶え絶えでした。


「えー?しょうがないなー。早く来ないとエルの分もタルト食べちゃうよー?」


 聞き捨てなりません。

 私は重い足に鞭打って石段を上り切りました。



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コ○ンくん「普通は反映される筈の『』が反映されない…」

コ○ンくん「妙だな…?」(AA省略)

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