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幻界星霜 ウィスタリア ー幾度も移り行く転生者ー  作者: 弓削タツミ
ー首都を目指してー
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57.時壊片


「ーーーーーーーふぅぅぅううううおおおおおおおッッッ!!!」



俺の雄叫びと共に目の前のコード・ミノタウロスを大剣の腹で押し飛ばし続ける。…それと言うのも、今は我が盟友たるアリシア嬢やシャルロット、エルキュール等から離し、より闘い易い場所へと導く為だった。

………最も、ある理由から、コレが彼女等を攻撃するとは思えないが…。

故に、俺は背中からバーニア状の器官を生やしてジェット噴射の様に押し続けた。


今の俺の姿はコイツら時壊片じかいへん共と同じ物だ。

色其の物が拒絶された様に淡白な色素しか持たないのが特徴だが、赤黒い光源を持つのも特徴の一つと言えるだろう。………俺の場合は全身を漆黒の、光を拒絶する様な虚無の鎧が身体に食い込む様に纏い、手脚は棘と硬質の金属板で出来ている。胸元が開いて居るのは前方に身体を折り曲げる動きを阻害しない為だろう。

肩まで鋭角的で、背中にはバーニアの様な器官が付いており、今まさに行なってる様に超高速機動による戦闘が得意だ。

また、首から頰、そして耳迄を鎧で纏っている。髪は前方が真白く、後方の中間程からまた黒いのだが、これは今の俺が中途半端な存在だからだ。

そして普段、漆黒の瞳の俺の目は…………敵意を示す様に赤黒く輝いてる。


さて、話を戻すが、俺は彼の牛の時壊片を押し飛ばし続けた…が

彼女等の様子が伺える範囲で止まると、戦闘開始だ。


…俺は奴に相対するのだが、やはり俺に対しては容赦なく攻撃をして来る様だ。

奴がその眼から放つ光線を腕や脚で受け流しながら観察する。

見た所、奴の武器と見えるのは右腕の斧剣、顔のゴーグルから放つ光線、左腕が自由フリーな事には不信感を抱くが、判断の仕様が無い以上はアクションを待つしか無いか。

…背面が普通…普遍…と言うのも気になる点だが、これも今は置いておこう。

四脚の脚、これは意外と厄介だ。…森林地帯と言う環境で自由に動かせる四脚という物は、立体的な軌道で攻めて来るのだろう。

光線自体は大した威力では無いが、斧剣の威力は先程から見て取れる。

一撃で頭をカチ割られ、そのまま真っ二つにされて吸収された男達を思えば、切れ味もさることながら、恐るべくはその怪力だろう。

無防備に受けてしまえば俺とて無傷とは行かないだろう。それは実に楽しそうだ。



ーーーーまぁいい、とにかく早めに片付けて戻らねばな。



俺はいい加減牛の攻撃に飽きが来たので、大剣を片手に握り、左腕と一体化をさせた。

そして豪速の一振りを見舞う。

ーーーが、奴は当然俺の動きに反応して斧剣を振り、一撃目は互いに打ち合った。

重量のある武器は苦手とは言え、俺の一撃と打ち合うとは、中々面白い牛だ。たかが獣と思ったが、少しは楽しませてくれそうだ。

二撃目は同時に三本の斬撃を横薙ぎに見舞った。三連撃の黒い線が奴に迸る。

これには流石に対応し切れないのか、斧剣を横に構えて受け止めようとした。しかし我が攻撃の余波が奴の表皮を抉る。薄い傷だが、そう簡単に回復等は出来まい。

何故なら我々の攻撃は記録データを奪い合う。部分的に失った記録は、他で補うしかない。…だが、俺はその隙を与えるつもりは無い。

ーーーーつまりアレだ。



コイツ等、時壊片と俺の殺し合いとは、存在の喰い遭いなのだ。



さて、お前は数日前の牛の魔物如きと同じだと思わせるなよ?楽しませてくれ。



牛は尚も光線を交えた高速の斬撃を放って来るが、俺は光線の直撃を気にせず右手で刃を受け止め続けた。

右頰を纏う虚無の鎧が砕けていたが、気にする程では無い。所詮、俺の本気を引き出せない程度の産まれたてだ。避けてやる道理もない。

牛は何も言わずに背中から二対四本の機械の腕を伸ばして来た。その腕は俺の両肩両腰を硬く掴み掛かった。

三本指のアームバイスか、くだらない。

ーーーーしかし、アームバイスの中央から、キィィィィィィィン…と、耳障りな音が鳴り響いた。

なるほど、ドリルが仕込まれていたのか、少しは工夫をする様だ。

ドリルで俺を砕きながら右腕の斧剣で俺に斬り付ける。どちらかを防いだ所でどちらかに屠られる寸法の様だ。確かに一端の冒険者であればこれで間違いなく絶望しながら絶命するのだろう。



だが所詮、小細工は小細工だ。俺は心底呆れた表情で斧剣を握り砕くと、四本のアームバイスに向けて全身の棘を…長大なメタルスパイクへと変えて貫き破壊した。

あぁ、こいつもまた、実力のみで俺を圧倒してくれない様だ。…実にくだらない。

牛は左手を機関銃に変えて、虚無の黒き雷を俺に向けて放ち続けた。

だが、最早この牛に興味が失せた俺は、その腕を真正面から握り潰し、そして左手の大剣で左腕を斬り上げ落とした。

そして、その場で縦に高速回転した俺は、鮫の歯の様に凶悪な刃と化した右脚でこの牛の頭部を喰らい貪った。

牛の頭を、首筋を、鎖骨付近から胸元迄を削り喰らった所で、牛はビクンっと身体を痙攣させた。




ーーーーー途端に俺を巻き込む様に、真っ黒で球体型に、質量を飲み込む様な虚無の奔流が周囲十数メートルに迸った。





ーーー

ーーーーー



………私、エルキュール=グラムバルクの意識は、遠い過去を映していました。

過去と言っても、エルキュール=グラムバルクとしてではありません、前世の記憶でした。


過去の私は、何時も人に怯えて過ごしてて、友達にも恵まれませんでした。

小学生の時も、中学生の時も、高校に至っても、虐められて、いつもいつも何処かへ逃げてばかりでした。

数人のグループにトイレに連れ込まれて、殴られたり蹴られたり、掃除用のモップで顔を洗われたり…虫扱いされたり…

とにかくそんな毎日でした。


今思えば、学校に行かず、家族に相談をすれば良かったのでしょうけど、あの頃の自分は学校に行かなければならない…と、半ば強迫観念めいた何かに囚われていたのでしょう。

酷い時は虫を食べさせられたり…階段から突き落とされたりと、本当に嫌な事しか有りませんでした。


そんな日々も、大学に入った頃には終わりを迎えました。

私は県外の大学に通った事で、私を知る人物は居なく、一人静かに過ごすことが出来ました。


………そんな私にも、趣味は有りました。

元々アニメや漫画のコスプレ衣装を作るのが好きだったので、色々な服を作っては少しだけ着てみて、ブログやあれッターに上げたり、ソレすたで色々な人達に評価して貰えるのがとても嬉しかったのです。


ですが、私は調子に乗り過ぎてしまいました。幅広く、沢山の画像を上げてしまったせいで、顔を隠してたにも関わらず、私を虐めてたグループのメンバーが、偶々私を発見してしまいました。

それからは地獄でした。


そのグループのメンバーが私を特定して、大学を割り出し、遂には汚い手段に踏み切って来ました。

私の元へ色々な男性を送り込みました。アイツ等の仕返しと言う頭の軽い男も居れば、中には一回幾らとか言うおじさんも居ました。私の静かな大学生活は終わりを告げたのでした。

…所詮、大学生になろうと変わらないのです。

他人を見下し、蹴落とし、嬲り、人としての尊厳を踏み躙って、自分さえ気持ち良ければ良いのです。

他人を身勝手に悪党に仕立て上げて、自分可愛さの正義に酔って、他人の人権をゴミの様に扱うのがああ言った連中の自己肯定なのですから。

中身がない、下らない人間です。


それでも、私もきっと同じ何だと思います。

自分だけで楽しめたらそれで満足でしたから。

他人に興味が持てないから、味方が一人も居なかったのですから。

私もまた、中身がない、下らない人間なのだと思います。




ーーーーそして私は、ビルの屋上から飛び降りました。

願わくば、この星に、禍あれ。




ーーーーー

ーーー


………ッッッ!!!


目が覚めた時、私は汗でびっしょりでした。

………今の夢を、ハッキリと覚えてます。………私は知らない女性でした。…いえ、本当は知っているのですが、佐藤剛士としては、全く関わった事の無い女性でした。


それなのに、実体験の様な酷い記憶でした。

………とても気持ち悪いです。

そもそも私は本当に佐藤剛士なのでしょうか?

先程の女性こそが本当の自分なのではないでしょうか?


問い掛けても答えの無い疑問ですので、心にしまうしか無いのですが…。



………それにしても、酷く頭がぐわんぐわんします。

起きてるのに、頭がモヤモヤしてて眠ってる様で、起き上がろうとすると吐き気がします。

………しかし、後頭部が柔らかくて気持ち良いです。

この感触だけで、少しだけ気分が落ち着く気がします。

………私が目を開くと、目の前にはシャルロットちゃんの可愛らしい寝顔がありました。


…んん?何故シャルロットちゃんが私の目の前に…?………そもそもこれはもしかして、シャルロットちゃんの膝枕ですか?

可愛いシャルロットちゃんが私に膝枕、ママ力の高さに脱帽です。


まぁふざけるのはそこそこに、私は状況を確認します。

えぇっと、確かセシルさんが黒くて、オカマが怖くて、痛かった様な………


あ、ダメです、頭がモヤモヤし過ぎてて思考が定まりません。

首を動かす事も出来ない私は、仕方ないのでシャルロットちゃんの膝枕を堪能する事にしました。

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